歳以上五十歳以下の男子は何日何時まで毛布と寢衣を持つてどこそこに集合して當局の指示を待つべしといふ意味の命令だつた。一定の場所に集めて何かの勞役に服せしめるのだらう。もちろん一種の捕虜である。
息子を奪はれた家族の人たち――父親と母親と娘――は見る目も氣の毒なくらゐにしよげ込んで、いかにも肩身狹く感じてゐるらしく、下の食堂には大ぜいのフランス人がいつも外からも來るので、食事の時間もずり下げて片隅に小さくなつてかたまつてゐた。或る日、食堂の入口で出逢ふと、人なつかしげに寄つて來て、あなた方は日本の船でアメリカへ行くのではないだらうか、と尋ねた。アメリカへ寄ることになるかどうか、まだ船が來ないからわからないけれども、とにかく日本の船でフランスを去るのだ、といふと、われわれをも乘せてもらへまいかと熱心にいひだすのだつた。できたら乘れるやうに助力して上げたいけれども、恐らく日本人以外の人は乘る餘地がないだらう。と、さう答へる外はなかつた。鹿島丸の收客人員は百三十名であるのに、申込者はすでにそれを超過してるといふやうなことを私は聞いてゐた。しかし、くわしいことはN・Y・Kラインの代理店に行つて
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