けて食ひ、すき腹にビアを流し込み、あとは明日のことにしようとあきらめた。
けれども、宿を搜さねばならなかつた。
それも精根を疲らす仕事だつた。初めに停車場附近の宿屋は全部あたつて見たが、どこも皆|滿員《コンプレ》だつた。ボルドーの中心はガンベッタ廣場の附近だと聞いてゐたので、その邊を搜して見ようと決心し、もうとつくに十二時を過ぎて、タクシをつかまへるだけにも多大の勞力と時間を費したが、善良な二三のボルドー市民の好意と助力でやつとそれに成功し、最初には一流の大きいホテルを次次に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]らせたが、どこも皆|滿員《コンプレ》だつた。(その頃ボルドーには約一萬人の外國避難者が流れ込んでゐた。)その次には思ひきつて、それではどんなケチなパンシヨンでもよいといふと、ショファはいやな顏もしないで、また元氣よくハンドルを※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]して、狹い石疊の路次へはひつて行き、とあるいかがはしい小さいドアの前に車を停めて、ベルを押した。
ややしばらくしてドアが開くと、一筋の幅狹い仄かな光の中に、小柄な寢間着姿のかみさん[#「かみさん」に傍点]
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