し出すのに少しまごついた。それほど市街は暗くなつてゐた。ベルを押すと、顏見知りの門番の親爺が出て來て、M君から電話で知らしてあつたので、私たちを荷物の置いてある部屋につれて行つた。
其處でトランクをあけて必要な物を取り出してゐると、やがてM君が代理大使と一緒に歸つて來た。丁度よいところだといつて食堂に案内された。食堂ボーイはもう召集令が下つてゐて、明日の朝入營することになつてゐた。しかし、それまでは義務があるといつて今夜も働いてるのだつた。それだけではなく、飛入の客人にすぎない私のために夜が更けてからケー・ドルセーの停車場まで使に行つてくれたりもした。
かれこれ十一時に近かつた。私たちは引き留められるまま、つい、いい氣になつて話し込んでゐた。彌生子は明日は確實にボルドーへ行けることになつてゐるが、私の方はどうなるか全然わからなかつた。代理大使は、列車は別でもなるべく明日立てたら立つた方がよいと思ふといひ、さつきボーイに電話でケー・ドルセーの停車場に座席劵一つだけ無理でも都合してもらへないか交渉して見るやうにと命じた。いつまでたつても返事がないので、呼んで見ると、ほかのボーイが現れて
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