フランスの戰爭に日本人の方が興奮してるぢやないか。私たちはさういつたほど、なさけなく感じた。
 もう戒嚴令が出たのだといふことで、町の角角には警官が武裝して立つてゐた。大通は目に見えて通行の車が多くなつてゐる。車の屋根にトランクを載せてあるのは、避難するものと見える。O君はオペラの近所までガス・マスクを買ひに行くといつて別れた。フランス人には七十フランで賣るものを、外國人からは三百五十フランも取るといつて、こぼしながら。
 歸るとM君から電話で、明日午前十一時の汽車で正金銀行の行員の家族の一行二十七人がボルドーへ立つので、座席劵を取つたが、一人分餘分があるから、それを讓り受けて奧さんだけでも立つたらどうだらう、と知らせてくれた。私たちはM君の好意を謝して、さういふことにしようと相談し、支店長I氏に電話をかけてその餘分の一席を讓つてもらふことをたのみ、定刻一時間前にケー・ドルセーの停車場で待ち合はせようと約束した。二十七人は女子供のみで、男は二人だけ同行するのだといふことだつた。
 私はこれで半分がた安心できるやうになつたが、私自身はまだどうなるかわからなかつた。フランス政府は明日動員令
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