の最後の部分は戰爭の區域外へ逃げ出すことの苦勞で過ごしてしまつた。
 今度の旅行で痛切に感じた一つの重要なことは、西洋諸國では、われわれが日本で想像してゐる以上に、日本のことを殆んどなんにも知つてないといふことである。殊に、日本の文化方面に關しては驚くべく無知だといふことである。尤も、私が相手にした少數の團體は、東洋とか藝術とかいつたやうな問題に關心を持つてる人たちが大部分だから、これは例外とすべきであるが、一般知識階級の人たちは、支那のことについては多少知つてゐても、日本のことについてはまるで知つてゐない。日本が戰爭に強いことはよく知つてるけれども、日本に昔からすぐれた文化があつたといふことについてはなさけなくなるほど知つてゐない。これは日本のために損である。日本の文化その物のためばかりでなく、政治外交軍事のためにも損である。しかし、日本は長い間さういつた努力を世界に對してしなかつたのだから仕方がないともいへる。
 けれどもまた考へて見ると、西洋がわれわれの文化の本質を知らないやうに、われわれもまた西洋の文化の本質を、知つてるつもりでゐても、實は本統にはあまりよく知つてゐないのである
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