れていた。
 それからユンクフラウヨッホまで25[#「25」は縦中横]%の勾配を登って終点に着いたのは十一時五十五分だった。標高三四一〇米。日本アルプスの奥穂高の頂上より二四〇米高く、鎗ガ岳の頂上より二三〇・五米高いわけである。それに緯度も日本アルプスに較べて十度以上も高く、寒い筈である。
 覚悟をしてはいたものの、驚いたことには、まず私たちを歓迎したものは急に烈しくなって来た大吹雪だった。停車場のすぐ前のベルクハウス(山の家)に駈け込む。此処で十四時三十分まで下山電車の出発を待つことになる。

    四

 ベルクハウスは大きな石造の建物で、レストランの外にホテルも経営している。広いサロンに入って行くと、研き立てた板敷の床にテイブルが白布を掛けられて幾つも列んで居り、どのテイブルにも銀色の猫柳が二三本ずつ花瓶に※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]されてあった。ブラジルのジャーナリストが私たちの食卓に坐った。此の sallow の花を見ると日本の山地を思い出す。日本ではネコ・ヤナギというのだ。cat−willow という意味だ。pussy−will
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