イスラエルの国を去れと警告した時、またわれ汝に示さん時までエジプトに留まれと約束した。やがてベトレヘムの幼児虐殺の後で王ヘロデが死ぬと、再び天使はヨセフに現れ、起ちて幼児とその母を携え、イスラエルの地に行けと命じ、幼児の生命を求むる者はすでに死にたり、といった。それで、ヨセフはヤーヴェの命に従い、マリアとキリストをつれて、イスラエルへ帰ると、恐るべき王ヘロデは死んだけれども第二の恐るべきアケラオ(アケラオス)が支配していたので、エルサレムに入ることを避け、ガリラヤへ遁れてナザレに住むことになった。
 ヘロデの死んだのは紀元前四年か三年で、幼児虐殺の後あまり多く日数がたっていなかった。その間にヘロデは先妻の産んだ長男と二男を殺し、彼の弟をも殺したが、その死刑命令は王自身の死の床から発せられ、やがて後妻の産んだ息子のアンティパスがヘロデ二世としてユダヤの王となった。『マタイ伝』にアケラオの名を出してあるのは、アンティパスがまだ幼少だったので、その頃はアケラオが政治をしていたことを意味するのであろう。それはともかく、正直な天使はヘロデの死後すぐ約束通りヨセフに現れなかった筈はないから、そうし
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