にすやすやと睡っていた。
 それは『マタイ伝』に出ているが、『童蒙福音書』(第八章九ー一三)にはこう記されてある。
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「かくてシカモアの木の下《もと》に行きぬ。今マタリアと呼ばる。マタリアにて主イエス一つの井戸を湧き出ださしめ、それにて聖マリア彼の衣を洗えり、その国に一つの香液《パルサム》生じたり。主イエスより其処に流れ落ちたる汗の滴より生じたるなり。それよりメムフィスに行き、パロ(エジプト王)に逢い、エジプトに三年住まいたり。」
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 しかし、此の記事は信用ができない。聖家族がマタリアからメムフィスへ行ったというのは有り得べきことだと思うが、メムフィスとてもその頃はヘリオポリス(マタリア)同様すでに荒廃して王都ではなかった。その頃の首府はアレクサンドリアで、しかもパロはとっくに存在しなくなって居り、エジプトはローマ帝国の領土になっていたのだから、パロに逢ったということもおかしければ、エジプトに三年住まっていたということもどうかと思われる。少くとも『マタイ伝』の記事とは矛盾する。
『マタイ伝』に拠ると、初めて天使がベトレヘムでヨセフに現れて、
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