処女の木とアブ・サルガ
野上豊一郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)処女《おとめ》の木

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)なかばうつろ[#「うつろ」に傍点]に

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔AE&gupt〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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    一

 カイロに着いた翌日、町の北東五マイルほどの郊外にある昔のヘリオポリス(日の町)の遺跡にウセルトセン一世の建てたエジプト現存第一の大オベリスクを見に行った。そのついでに車を廻して、そこからあまり遠くない所にある「処女《おとめ》の木」を見物した。
 その辺はマタリアと呼ばれる部落で、五千年前のヘリオポリスの殷賑などはいくら想像を働かしても実感することのできないほどに今は荒れさびれている。泥ででっち上げた低い家の飛び飛びに並んだほこりっぽい道路の片側に、牧場で見るような簡単な板を打ちつけた片折戸が締まっていて、案内者のサイドが車から下りてベル
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