といわれる。キリストが彼に洗礼を受けた時、二人は三十歳前後だったが、ヨハネはキリストを自分よりも遙かに偉大な者と知っていた。やがてヨハネはヘロデに殺された。それはなぜかというと、ヨハネがヘロデの不倫の結婚を非難したからだった。ヘロデは初めアラビアの王女を妻としていたが、弟のフィリポの妻ヘロデアに懸想し、フィリポのローマヘ行っている留守中にヘロデアと同棲した。(同時に前の王妃はアラビアに逃げ去った)。それをヨハネはあからさまに厳しく批判したので、ヘロデアはヨハネを殺したく思った。けれども彼女にはどうすることもできなかった。ヘロデにとっては、予言者として人民に尊敬されてるヨハネであったから、捕えて土牢に入れたけれども殺すつもりはなかった。ところが、ヘロデの誕生日の祝宴にヘロデアの娘サロメが踊って、賓客たちをいたく喜ばしたので、ヘロデは満足のあまり何でも所望のものをその場で与えようと約束した。サロメは母に相談した。母はヨハネの首を所望せよといった。サロメはそれを所望した。ヘロデは躊躇したけれども、遂に獄卒に命じた。獄卒は洗礼者の首を銀の盆に載せて持って来た。そのことはマタイもマコも記している
前へ 次へ
全22ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
野上 豊一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング