p・ペルデュという大部屋にまぐれ込み、受付に聞いたら、時計台の角を廻って河岸へ出ると入口があると教えられ、階段を下って時計河岸を尋ねまわり、セザル塔の下にやっと入口を発見した。尤も、此の入口は近年できたもので、革命当時は、五月庭に面する私たちのまぐれ込んだ所から囚人は運び込まれたり運び出されたりしたものだそうだ。
入口をはいると、小さい四角の空地があって、右手にまたドアがある。その中は薄暗い守衛室で、ベンチが列べてあり、其処で順番の来るまで待つようになっている。隅の方には絵ハガキや小冊子を売る店がある。十人とか十五人とか見物人がまとまると案内人が奥の方へつれて行く。私たちの待っているうちに、見物をすました一組が暗い入ロから戻って来たが、めいめい案内人の手の平に銀貨を載せてやると、案内人はメルシ・メルシと会釈していた。此の部屋は古い寺院建築のクリプトを思い出させるような円柱と円天井で構成され、さむざむとした、だだっ広い石造の広間で、十三世紀の建造がそのままに保存されてあるので、建築史研究者には興味の多いものらしい。
やがていいかげん見物人の頭数が揃うと、案内人は奧の方へ引率して行った
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