bトの部屋の間の小部屋には、革命の闘士ロベスピエールが処刑前に二十四時間入れられていたので有名である。……
しかし、マリ・アントワネットのことをもっと考えて見よう。
礼拝堂の壁に懸かってる画の中にマリ・アントワネットに関するものが二つある。一つは彼女がタンプル塔からコンシエルジュリに移される時子供たちと別れる場面、今一つはコンシエルジュリの地下牢で聖餐式を受けてる場面。いずれも感傷的な情景で、それをヴェルサイユ宮殿のガレリ・バスに陳列されてる花やかな画(マリ・アントワネットの肖像、彼女が王子・王女たちと並んだ肖像)と較べて見ると、何という哀れな対照だろう! ヴェルサイユの宮殿は二階正面のガラスの大広間から西へ廻って二つ目に王妃の部屋があって、グリザイユの天井とゴブランの壁掛《タペストリ》で装飾され、其処にも誇らしげに胸を張った彼女の肖像画を見た。それに続く王妃の小部屋《カビネ》が二つ三つ、思いきって小さい部屋ながら心にくい装飾を凝らし、書斎もあれば、浴室も付いていて、小さいサロンには其処にも美しい彼女の胸像があった。
彼女は美貌でもあったが、非常なおしゃれで、取りわけ衣裳道楽とカ
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