の遺物がある。帝政時代に幼年子弟の訓育所に当てられたが、或る時期には牢屋にも使っていた。今では壁に彫り散らした楽書によって有名になっている。いろんな種類の楽書があるが、おもなものは壁を切り取ってテルメ博物館に陳列してある。私の記憶してる最も代表的なものは、豚が十字架の上に磔にされてる戯画で、下に立ってる男が十字架の上の豚に何か言っている。それが果してクリストを揶揄したものだかどうだかわからない(何となればその頃は磔にされる者は非常に多かったから)が、そう取った方が此の戯画の価値が大きくなるだろう。画は釘の先か尖った石かで彫りつけたもので、幼稚な線だが、なかなかおもしろくできている。
 一体にパラティーノは形勝の丘陵であり、ローマ発祥の地であったから、殊にパラティウム区域は帝政以前から貴顕大官の住居地となって、クラスス、キケロなども此処に大きな邸宅を構えていた。アウグストゥスの宮殿の如きも以前はホルテンシウスの邸宅だったのを、彼が皇帝になる直前に買い入れて宮殿を築造したのだといわれている。その後、ティベリウス、カリグラ、ドミティアヌス、セプティムス・セヴェルス等の皇帝が宮殿を造営したり改
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