屋があり、アカデミアとビブリオテカと名が付いているけれども、もちろん今はがらんどうである。
以上は公式の宮殿であるが、皇帝の私室はどこにあるのかと聞くと、中庭の下にあると案内人は答えた。しかし、それもまだ公開されてなかった。
此の宮殿のある地面は東隣りの広大な空地と共に初めはアウグストゥス帝の大宮殿を載せていたので、その区域(パラティウム)は今でもドムス・アウグスティアナと呼ばれている。その空地の一部分に壊れたまま立ってる近代式の建物の純英国式なのがおかしいと思ったら、百五十年ほど以前にサー・チャールズ・ミルズという英国人が建てたのだということだ。その南側にカザ・ロムリ(ロムルスの家)という小さな円い編み屋根の石造の小屋があるのは、太古からその名で呼ばれて来た建物が山の西の端にあったのをジァコモ・ボニ(発掘家)が復原したのだそうな。
私たちはドムス・アウグスティアナから東南の方へ広場を案内人につれられて行ったが、突然深い谷底を見下す崖の端に出て驚いた。長さ二百米以上はたしかにあると思われる長方形のグラウンドが遥かの谷底に横たわっているのだから。現にスタディウムと呼ばれてるように、
前へ
次へ
全20ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
野上 豊一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング