潰されてオデュセウスを取り逃がし、漕ぎ去る舟を目がけて盲滅法に丘の上から岩を投げかけた。その岩が七つ水面に出ているのだという。果して七つあったかどうか、実は通り過ぎてから気がついたので、数えるひまがなかった。
それから少し行った所に、アチスという小さい川があった。これもポリプ※[#小書き片仮名ヘ、1−6−86]ーモスに関係のある伝説の川で、ポリプ※[#小書き片仮名ヘ、1−6−86]ーモスは美しい妖精《ニンプヘ》のガラテアに懸想したが、ガラテアはアチス(アキス)という愛人があったので拒絶すると、巨人はアチスを殺そうとした。それでガラテアは彼を川に変形させてその愛をつづけた。
他愛もない童話のような伝説ではあるが、ホメーロスの美しい詩を読んだ者には、その伝説の場所を通ったことがわけもなくうれしくなる。何千年か以前にオデュセウスが十年間の漂泊をしていたのも、こういった明るい美しい海岸から海岸を伝って行ったのかと思うと、ホメーロスの幻想が急に生き返り、おぼろになった詩の世界へ久しぶりで引き戻されるように感じられた。
そういえば、もう通り過ぎてしまったが、カターニアを出ると間もなく、七つの
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