今に、ヨーロッパのどこかの部分で戦争が始まったら、ヴェルダンの兵器や戦法は完全に out of date になってることが発見されるだろう。……
アルゴンヌの森の彼方に落ちて行く赤い夕日を見ながら、私はそんな取り留めもないことを考えていた。その考え方に変態的なものがあったら、「ヴェルダンの子供たち」に憑かれた結果だと思ってもらいたい。
五
帰りには予定の如くランスには寄ったけれども、ソアッソンに廻る余裕はなくなった。ランスとても、時間が過ぎて寺の扉が締まっていたので、前の茶店に入って遠くから外観を眺めたり、近寄って彫像を数えながら一周りしたりしたきりだった。此の寺は大戦の時にドイツの大砲で上の方がひどく破損したのが、やっと修繕が出来上ったと聞いていたが、来て見ると、塔にはまだガラスの嵌まってない部分があった。
ランスについては、いつかゆっくり印象を書いて見たいと思っている。
[#地から1字上げ](昭和十三年―十四年)
底本:「世界紀行文学全集 第二巻 フランス編2[#「2」はローマ数字2、1−13−22
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