ったり、脇見をしたり、振り返ったり、てんでんまちまちの形で群がって、何をしているのだかわからない。
この画も実は組合員肖像画として注文を受けたもので、アムステルダムの市会議事堂に懸けられるために、市民射撃隊がコック大尉とファン・ラウテンブルク中尉に引卒されて射撃隊組合本部から繰り出す光景を描いたものである。それが長い間夜警団の勢揃えを描いたものと誤解されていたというのも、画の目的がわからなかったからに相違ない。よくよく見ていると説明の付きかねるものがいろいろ発見されるが、例えば画面の左寄りに赤い服を着た射撃手の後に少女が一人と子供が一人いる。彼等はこの騒ぎの中で、しかも射撃隊組合本部の建物の中で何をしてるのだろうか? そんなことは問題にしないとしても、全体がばらばらになっていて、どうも私にはまとまりがつかない。まとまりのつかない所をねらったのだといえばそれまでだが、それでは画家の沽券《こけん》に関するだろう。
しかし、私が心配する前に、この画は描き上げられるとすぐアムステルダム市民の不満を買った。第一に、組合員の大部分が不満だった。大尉と中尉だけはよく描いてあるが、あとの組合員は全
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