「草衣集」はしがき
野上豐一郎
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『草衣集』は私の最初の隨筆集である。此の中に收められてあるやうな種類のものは、以前からかなりたくさん書いたものであるが、舊いものは後になつて見ると、自分の未成熟の昔の姿を見るやうで、たまに人に勸められてもまとめて本にするやうな氣にもなれず、自分の過ぎ去つた月日と共に、忘却の中へ過ぎ去らしてよいものだと思つてゐた。ところが物ずきな人があつて、とうとう斯んなものを私に作らした。
此の中に集められてあるものは、「九月一日」と「湖水めぐり」以外は、比較的新らしく書いたもので、主として旅行の印象記である。私は旅行することは決してきらひではないが、出かけるまでが何となく氣おもで、隨つてあまり多く旅行してゐない。旅行するにしても、たいがい用事を持つた旅行で、漫然と自然の景觀を樂しむための旅行といふものは
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