゚たれど、未だそのいづれのところにも目を据《す》ゑざりき 五二―五四
かくて新しき願ひに燃され、我はわが心に疑ひをいだかしめし物につきてわが淑女に問はんため身をめぐらせるに 五五―五七
わが志《こゝろざ》しゝ事我に臨《のぞ》みし事と違へり、わが見んと思ひしはベアトリーチェにてわが見しは一人《ひとり》の翁《おきな》なりき、その衣は榮光の民の如く 五八―六〇
目にも頬にも仁愛の悦びあふれ、その姿は、やさしき父たるにふさはしきまで慈悲深かりき 六一―六三
彼|何處《いづこ》にありや。我は直にかく曰《い》へり、是においてか彼。汝の願ひを滿さんためベアトリーチェ我をしてわが座を離れしむ 六四―六六
汝仰ぎてかの最高《いとたか》き段《きだ》より第三に當る圓を見よ、さらば彼をその功徳によりてえたる寶座《くらゐ》の上にて再び見む。 六七―六九
我答へず、目を擧げて淑女を見しに、永遠《とこしへ》の光彼より反映《てりかへ》しつゝその冠となりゐたり 七〇―七二
人の目いかなる海の深處《ふかみ》に沈むとも、雷《いかづち》の鳴るいと高きところよりその遠く隔《へだ》たること 七三―七五
わが目の彼處《かしこ》にて
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