それ二の物相合してこの犧牲《いけにへ》の要素を成す、一はその作らるゝ基《もと》となるもの一は即ち契約なり 四三―四五
後者は守るにあらざれば消えず、但しこれについては我既にいとさだかに述べたり 四六―四八
是故に希伯來人《エブレオびと》は、捧ぐる物の如何によりこれを易《か》ふるをえたれども(汝必ず是を知らん)、なほ献物《さゝげもの》をなさゞるをえざりき 四九―五一
前者即ち汝に材とし知らるゝものは、これを他の材に易《か》ふとも必ず咎《とが》となるにはあらず 五二―五四
されど黄白二の鑰《かぎ》のめぐるなくば何人もその背に負《お》へる荷を、心のまゝにとりかふべからず 五五―五七
かつ取らるゝ物が置かるゝ物を容《い》るゝことあたかも六の四における如くならずば、いかに易ふとも徒《いたづら》なるを信ずべし 五八―六〇
是故に己が價値《ねうち》によりていと重くいかなる天秤《はかり》をも引下《ひきさ》ぐる物にありては、他の費《つひえ》をもて償《つぐな》ふことをえざるなり 六一―六三
人よ誓ひを戲事《たはぶれごと》となす勿れ、これに忠なれ、されどイエプテのその最初の供物《くもつ》におけるごとく輕々しくこれを立るなかれ 六四―六六
守りてしかしてまされる惡を爲さんより、彼は宜《よろ》しく我あしかりきといふべきなりき、汝はまたギリシア人《びと》の大將のかく愚《おろか》なりしをみむ 六七―六九
さればイフィジェニアはその妍《みめよ》きがために泣き、かゝる神事《じんじ》を傳へ聞きたる賢者愚者をしてまた彼の爲に泣かしむ 七〇―七二
基督教徒《クリスティアーニ》よ、おも/\しく身を動かし、いかなる風にも動く羽のごとくなるなかれ、いかなる水も汝等を洗ふと思ふなかれ 七三―七五
汝等に舊約新約あり、寺院の牧者の導くあり、汝等これにて己が救ひを得るに足る 七六―七八
もし邪慾汝等に他の途《みち》を勸《すゝ》めなば、汝等人たれ、愚《おろか》なる羊となりて汝等の中の猶太人《ジュデーアびと》に笑はるゝなかれ 七九―八一
己が母の乳を棄て、思慮《こゝろ》なく、浮《うか》れつゝ、好みて自ら己と戰ふ羔《こひつじ》のごとく爲すなかれ。 八二―八四
わがこゝに記《しる》すごとく、ベアトリーチェかく我に、かくていとなつかしき氣色《けしき》にて、宇宙の最も生氣に富める處にむかへり 八五―八七
その沈默と變貌《かはれるすがた》とは、わが飽《あ》くなきの智、はや新しき問を起しゐたりしわが智に默《もだ》せと命じき 八八―九〇
しかしてあたかも弦《つる》のしづかならざる先に的《まと》に中《あた》る矢のごとく、われらは馳《は》せて第二の王國にいたれり 九一―九三
われ見しに、かの天の光の中に入りしとき、わが淑女いたくよろこび、かの星自らそがためいよ/\輝きぬ 九四―九六
星さへ變りてほゝゑみたりせば、己が性《さが》のみによりていかなるさまにも變るをうる我げにいかになりしぞや 九七―九九
しづかなる清き池の中にて、魚もしその餌とみゆる物の外《そと》より入來るをみれば、これが邊《ほとり》にはせよるごとく 一〇〇―一〇二
千餘の輝われらの方にはせよりき、おの/\いふ。見よわれらの愛をますべきものを。 一〇三―一〇五
しかして各※[#二の字点、1−2−22]われらの許《もと》に來るに及び、我は魂が、その放つ光のあざやかなるによりて、あふるゝ悦びをあらはすを見たり 一〇六―一〇八
讀者よ、この物語續かずばその先を知るあたはざる汝の苦しみいかばかりなるやを思へ 一〇九―一一一
さらば汝自ら知らむ、これらのものわが目に明らかに見えし時、彼等よりその状態《ありさま》を聞かんと思ふわが願ひのいかに深かりしやを 一一二―一一四
あゝ良日《よきひ》の下《もと》に生れ、戰ひ未だ終らざるに恩惠《めぐみ》に許されて永遠《とこしへ》の凱旋の諸※[#二の字点、1−2−22]の寶座《くらゐ》を見るを得る者よ 一一五―一一七
遍《あまね》く天に滿《み》つる光にわれらは燃《もや》さる、是故にわれらの光をうくるをねがはゞ、汝心のまゝに飽《あ》け。 一一八―一二〇
信心深きかの靈の一我にかくいへるとき、ベアトリーチェ曰ふ。いへ、いへ、臆《おく》する勿《なか》れ、かれらを神々の如く信ぜよ。 一二一―一二三
我よく汝が己の光の中に巣《す》くひて目よりこれを出すをみる、汝笑へば目|煌《きら》めくによりてなり 一二四―一二六
されど尊き魂よ、我は汝の誰なるやを知らず、また他の光に蔽はれて人間に見えざる天の幸《さち》をば何故にうくるやを知らず。 一二七―一二九
さきに我に物言へる光にむかひて我かくいへり、是においてかそのかゞやくこと前よりはるかに強かりき 一三〇―一三二
あたかも日輪が(濃《こ》き水氣の幕その熱に噛盡《かみつく》さるれば)
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