\三〇
【チェーザレ】皇帝。桂はまた凱旋のしるしとして、皇帝武將等の冠となれり
【人の思ひの】人、俗情に役せられ、かゝる榮冠をうるにいたること甚だ罕《まれ》なり
三一―三三
【ペネオの女の葉】桂の葉。ペネオはペネウス。
【デルフォの神】アポロン。デルポイ(デルフォ)はパルナッソスの麓の町にてアポロンの聖地なり。スカルタッツィニ曰く、「詩は形さま/″\なれどおしなべて人間の慰藉となるものなれば、悦び多し[#「悦び多し」に白丸傍点]といへるなり」と(?)桂冠を望み求むるものあれば、アポロンの喜び愈※[#二の字点、1−2−22]深し
三四―三六
【小さき火花に】ダンテの詩に勵まされてダンテよりもさらに大いなる詩人いで、アポロンの助けにより、さらによく天堂の歌をうたふことあるべきをいへり
【チルラ】アポロン。但しパルナッソスの二の峯の名一定せざれば、ダンテがキルラ(チルラ)をその一と見做してかく曰へるか、或ひはパルナッソスより程遠からぬキルラの町(同じくアポロンの聖地)を指して曰へるか明らかならず
三七―三九
【世界の燈】太陽。四時の變遷に從つて地平線上多くの異なる點よりあらはる
【四の圈】春分に至れば太陽は四の圈即ち地平線、黄道、赤道、及び二分徑圈相交叉して三の十字を造る一點よりいづ(ムーア『ダンテ研究』第三卷六〇頁以下參照)
註釋者或ひは曰。四の圈は四大徳(淨、一・二二―四註參照)の象徴にて三の十字は教理の三徳の象徴なりと
四〇―四二
【道まさり】春日は四季を通じて最も樂しく麗はしければ
【星】白羊宮の星。そのまさる[#「まさる」に白丸傍点]は地上に及ぼす影響の善きをいふ、天地の創造せられし時、太陽は白羊宮にありてその運行を始めしなり(地、一・三七―四五註參照)
【世の蝋】太陽が光熱によりてその力を世に及ぼしこれに活力を與へこれを幸ならしむることの愈※[#二の字点、1−2−22]著しきを、印象《かた》を蝋の上に現はすことのあざやかなるにたとへしなり
四三―四五
【かしこ】野火
【こゝ】わが世界
【殆ど】太陽白羊宮にあれども、はや春分(三月二十一日)を過ぎて北に向へるがゆゑにかくいへり(今は四月十三日)
【かの半球】南半球。今は淨火の正午
【その他】北半球。イエルサレムの夜半
ダンテが樂園にエウノエの水を飮みしは正午の事なり(淨、三三・一〇三―五)、しかして水を飮みて後直ちに月天に向へるなり(スカルタッツィニ註參照)、さればこの一聯の前半は單に日出時の太陽の位置をいへるものにて天に昇らんとするの時をいへるものにはあらず
ダンテは日暮れて後(絶望を表はす)地獄に入り、夜の明くる頃(希望を表はす)淨火に達し、正午(完全を表はす)に天に向ひて登れり(ムーアの『ダンテ研究』第二卷二六五頁參照)
四六―四八
【左に】東(淨、二九・一〇―一二、同三二・一六―八參照)より轉じて北に。南半球正午の太陽は東にむかふ者の左にあり
【鷲】その眼よく太陽を直視すと信ぜられたればなり
四九―五一
第一の光線は投射線にて第二の光線は反射線なり。光線光澤ある物體に當り反射して元に還ることあたかも目的地に達しゝ旅客の再び郷に歸るに似たり
五二―五四
ベアトリーチェが太陽を見しことダンテの同感に訴へ、ダンテまたこれに做ふにいたりたれば、前者の動作より後者のそれの生れしこと、なほ反射線の投射線より生るゝ如し
五五―五七
地上の樂園は神が永遠の幸福の契約として人類に與へ給ひし處なれば(淨、二八・九一―三參照)、かの地特殊の神恩により、北半球の世界にては人の爲し能はざる事にて樂園に爲すをうること多し。ダンテが太陽を直視しえしもその一例なり、こはいふまでもなく人の罪淨まりてよく神恩の光を仰ぐをうるの意を寓す
六一―六三
光の俄に増したるは既に樂園を離れて急速に昇りゐたればなり
【者】神
六四―六六
【永遠の輪】諸天
六七―六九
ダンテ未だ長く太陽を見るをえざれど、ベアトリーチェの姿を通じて神恩彼の上に注ぎ、彼を超人の境に入らしむ
【グラウコ】グラウコス。エウボイアの漁夫、嘗て海濱に置きたる魚が、あたりの草に觸るゝとともに俄に勢を得躍りて海に入るを見て自らまたその草を噛みしに、是時性情忽焉として變じ、續いて海に入りて海神となれり(『メタモルフォセス』一三・八九八以下參照)
七〇―七二
【是故に】神恩によりて他日かゝる超人の經驗を自ら有するにいたる人々今はたゞこのグラウコスの例をもて足れりとすべし
七三―七五
【愛】神
【我は】我はたゞわが靈魂のみにて天に昇れるか、將《は》た肉體と共にありてしかせるか(コリント後、一二・三參照)
【最後に造りし】形體既に成りて後、神の嘘入《ふきい》れ給ふ新しき靈(淨、二五・六七以下參照)。但し Novellamente を新たに、即ち自然の作用
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