ノよらずして神の新たに造り給へる義に解する人あり
【聖火】ベアトリーチェの姿に映じゝ神恩の光
七六―七八
【慕はる】諸天の永遠に運行するは神を慕ひ、神と相結ばん爲なり(『コンヴィヴィオ』二・四・一九以下參照)
【調】運行によりて諸天の間に生ずる美妙の音調。ダンテは主としてキケロの説に據れり。頒つ[#「頒つ」に白丸傍点]は諸天の間に頒つなり、整ふ[#「整ふ」に白丸傍点]は各天各種の音をよく和合せしむるなり
七九―八一
註釋者曰。ダンテ既に火焔界に達したるが故に光の天に漲れるを見たりと。されどこの一聯によるも次に見ゆるベアトリーチェの説明によるも、ダンテが果して火焔界を意味せるや或ひはたゞ昇ること早く從つて太陽に近づくこと早きがゆゑにかくいへるや明らかならず、パッセリーニ(G.L.Passerini)註參照
八五―八七
【我の未だ】原文、「我の問はんとて(わが口を啓かざる)さきに」
九一―九三
【己が處】火焔界
【これに】汝の處に、即ち天に。人の魂天よりいでゝ天に歸るをいふ
九七―九九
【輕き物體】空氣と火
一〇三―一〇五
宇宙萬物は皆その間に秩序を有す、この秩序ありてこそ萬物調和し、はじめて茲に完全なる神の姿を現はすなれ
一〇六―一〇八
天使や人類の如き被造物は、この秩序において、神の大能及び大智の印跡を認む
【目的と】この秩序の終極の目的は神にあり、即ち萬物を神の如くならしむるにあり
一〇九―一一一
かゝる秩序の中に、凡ての被造物は皆その目的《めあて》なる神を望めど、天與の位置に高低ありその務《つとめ》また皆異なれば、火や地球の如く神にいと遠きあり、また諸天使の如く神にいと近きあり
一一二―一一四
萬物皆同じ程度において神に近づく能はず、その本能に導かれて各※[#二の字点、1−2−22]適歸するところ(湊)を異にす
【存在の大海】空間
一一五―一一七
この本能あるによりて火は地球と月との間なる火焔界に向ひて昇り、これあるによりて理智なき動物(滅ぶる心)もその生を營み、これあるによりて地球はその各部相結合して離るゝことなし(『コンヴィヴィオ』三・三・五―一三參照)
【相寄せて】重力によりて中心に向ふをいふ
一一八―一二〇
この本能(弓)は理智なきものにのみその作用を及ぼすに非ず、理智あるものにもこれを及ぼす
一二一―一二三
【一の天】エムピレオの天、至高充全の天にして動かず。いと疾くめぐる天[#「いと疾くめぐる天」に白丸傍点]はプリーモ・モービレ即ち第九天なり
一二四―一二六
【的】目的《めあて》。物その處を得て初めて安んず、故に樂し[#「樂し」に白丸傍点]といふ
【弦の力】本能の力
【定れる場所】安住所と定まれるところ
一二七―一二九
たとへば彫刻などにて、美術家の意匠すぐるともその用ゐる材がかゝる意匠を現はすに適せざるため、出來ばえ思はしからぬごとく
一三〇―一三五
神を求むる自然の傾向はなほ美術家のすぐれたる意匠の如し、僞りの快樂に誘はれて人その行方《ゆくへ》を誤るは猶材の惡しくして結果の工夫に配《そ》はざるごとし
【かく促さる】本能に促されて人自然に天を望めど
【最初の刺戟】即ち本能の刺戟。自由の意志の濫用によりて人を地に向はしむ
【火】電光。火本來の性質に背き、上昇せずして降下するなり
一三九―一四一
【障礙】罪の(淨、三三・一四二―五參照)
【火】火焔界以外にありては火の靜なる事なし。以上ベアトリーチェの言、多くトマス・アクイナスの『神學大全』の所説と一致す、今一々引照せず


    第二曲

第一天(月)に達し、ベアトリーチェまづダンテの爲に月面の斑點に關する原理を説く
一―三
天堂篇の充分なる理解は他の二篇に此し科學並びに宗教上さらに大いなる豫備知識を要求するがゆゑにダンテはこの曲最初の六聯において讀者に警戒を與へたり
四―六
汝等の知識の範圍内に汝等の研究の歩をとゞめ、それより先に進むなかれ、恐らくは力足らざるため汝等この天堂の歌をさとるをえじ
七―九
【わがわたりゆく水】我よりさきに天堂の歌をうたへる人なし
【ミネルヴァ】知慧の女神にて學藝の守護者たり。氣息を嘘く[#「氣息を嘘く」に白丸傍点]はその徳を風として船を進むるなり
一〇―一二
【天使の糧】この語ヴルガータに見ゆ(詩篇七七・二五)。靈の糧即ち眞の智の義なり(『コンヴィヴィオ』一・一・五一以下參照)。靈界の知識は世人の眞《まこと》の糧なれども、これに飽くをうるはたゞ天上においてのみ
【項を擧げ】心を向け
一六―一八
【イアソン】(地、一八・八五―七並びに註參照)、イアソン、コルキスにいたり、金の羊毛を與へんことを王アレイエテスに請ふ、王まづ彼をして焔の息《いき》を吐く二匹の牡牛に軛をつけしめかつカドモス(地、二五・九七―九)の殺せる龍の齒をはその耕し
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