の水を飮める刹那《せつな》に、その長き形は、變りて圓《まる》く成ると見えたり 八八―九〇
かくてあたかも假面《めん》を被《かう》むれる人々が、己を隱しゝ假《かり》の姿を棄つるとき、前と異なりて見ゆる如く 九一―九三
花も火もさらに大いなる悦びに變り、我はあきらかに二組の天の宮人《みやびと》達を見たり 九四―九六
あゝ眞《まこと》の王國の尊き凱旋を我に示せる神の輝よ、願はくは我に力を與へて、わがこれを見し次第を言はしめよ 九七―九九
かしこに光あり、こは造主《つくりぬし》をばかの被造物《つくられしもの》即ち彼を見るによりてのみその平安を得る物に見えしむる光にて 一〇〇―一〇二
その周邊《まはり》を日輪の帶となすとも緩《ゆる》きに過ぐと思はるゝほど廣く圓形《まるがた》に延びをり 一〇三―一〇五
そが見ゆるかぎりはみな、プリーモ・モービレの頂より反映《てりかへ》す一線《ひとすぢ》の光(かの天この光より生命《いのち》と力とを受く)より成る 一〇六―一〇八
しかして邱《をか》が、?草《あをくさ》や花に富める頃、わが飾れるさまを見ん爲かとばかり、己が姿をその麓《ふもと》の水に映《うつ》すごとく 一〇九―一一一
すべてわれらの中《うち》天に歸りたりし者、かの光の上にありてこれを圍《かこ》み繞《めぐ》りつゝ、千餘の列より己を映《うつ》せり 一一二―一一四
そのいと低き階《きだ》さへかく大いなる光を己が中に集むるに、花片《はなびら》果るところにてはこの薔薇の廣さいかばかりぞや 一一五―一一七
わが視力《みるちから》は廣さ高さのために亂れず、かの悦びの量と質とをすべてとらへき 一一八―一二〇
近きも遠きもかしこにては加へじ減《ひ》かじ、神の親しくしろしめし給ふ處にては自然の法《のり》さらに行はれざればなり 一二一―一二三
段《きだ》また段と延びをり、とこしへに春ならしむる日輪にむかひて讚美の香《か》を放つ無窮の薔薇の黄なるところに 一二四―一二六
ベアトリーチェは、あたかも物言はんと思ひつゝ言はざる人の如くなりし我を惹行《ひきゆ》き、さて曰《いひ》けるは。見よ白衣《びやくえ》の群《むれ》のいかばかり大いなるやを 一二七―一二九
見よわれらの都のその周圍《まはり》いかばかり廣きやを、見よわれらの席の塞《ふさが》りて、この後こゝに待たるゝ民いかばかり數少きやを 一三〇―一三二
かの大いなる座、即ちその上にはや置かるゝ冠の爲汝が目をとむる座には、汝の未だこの婚筵《こんえん》に連《つらな》りて食せざるさきに 一三三―一三五
尊きアルリーゴの魂(下界に帝となるべき)坐すべし、彼はイタリアを直くせんとてその備へのかしこに成らざる先に行かむ 一三六―一三八
汝等は無明の慾に迷ひ、あたかも死ぬるばかりに饑《う》ゑつゝ乳母《めのと》を逐ひやる嬰鬼《をさなご》の如くなりたり 一三九―一四一
しかして顯《あらは》にもひそかにも彼と異なる道を行く者、その時神の廳《つかさ》の長《をさ》たらむ 一四二―一四四
されど神がこの者に聖なる職《つとめ》を許し給ふはその後たゞ少時《しばし》のみ、彼はシモン・マーゴの己が報いをうくる處に投げ入れられ 一四五―一四七
かのアラーエア人《びと》をして愈※[#二の字点、1−2−22]深く沈ましむべければなり。 一四八―一五〇
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第三十一曲
クリストの己が血をもて新婦《はなよめ》となしたまへる聖軍は、かく純白の薔薇の形となりて我に現はれき 一―三
されど殘の一軍《ひとて》(これが愛を燃すものゝ榮光と、これをかく秀でしめし威徳とを、飛びつゝ見かつ歌ふところの)は 四―六
蜂の一|群《むれ》が、或時は花の中に入り、或時はその勞苦の味《あぢ》の生ずるところに歸るごとく 七―九
かのいと多くの花片《はなびら》にて飾らるゝ大いなる花の中にくだり、さて再びかしこより、その愛の常に止まる處にのぼれり 一〇―一二
かれらの顏はみな生くる焔、翼は黄金《こがね》にて、その他《ほか》はいかなる雪も及ばざるまで白かりき 一三―一五
席より席と花の中にくだる時、かれらは脇を扇《あふ》ぎて得たりし平和と熱とを傳へたり 一六―一八
またかく大いなる群《むれ》飛交《とびかは》しつゝ上なる物と花の間を隔《へだ》つれども、目も輝もこれに妨げられざりき 一九―二一
そは神の光宇宙をばその功徳に準じて貫《つらぬ》き、何物もこれが障礙《しょうがい》となることあたはざればなり 二二―二四
この安らけき樂しき國、舊《ふる》き民新しき民の群居《むれゐ》る國は、目をも愛をも全く一の目標《めあて》にむけたり 二五―二七
あゝ唯一《たゞひとつ》の星によりてかれらの目に閃きつゝかくこれを飽かしむる三重《みへ》の光よ、願はくはわが世の嵐を望み見よ 二八―三〇
未開の人々、エリ
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