[チェがその愛兒《いとしご》とともにめぐりつゝ日毎《ひごと》に蔽《おほ》ふ方《かた》より來り 三一―三三
ローマとそのいかめしき業《わざ》――ラテラーノが人間の爲すところのものに優れる頃の――とを見ていたく驚きたらんには 三四―三六
人の世より神の世に、時より永劫に、フィオレンツァより、正しき健《すこや》かなる民の許《もと》に來れる我 三七―三九
豈《あに》いかばかりの驚きにてか滿されざらんや、げに驚きと悦びの間にありて、我は聞かず言はざるを願へり 四〇―四二
しかして巡禮が、その誓願をかけし神殿《みや》の中にて邊《あたり》を見つゝ心を慰め、はやその状《さま》を人に傳へんと望む如く[#四二]
我は目をかの生くる光に馳せつゝ、諸※[#二の字点、1−2−22]の段《きだ》に沿《そ》ひ、或ひは上或ひは下或ひは周圍《まはり》にこれを移し 四六―四八
神の光や己が微笑《ほゝゑみ》に裝《よそ》はれ、愛の勸《すゝ》むる諸※[#二の字点、1−2−22]の顏と、すべての愼《つゝしみ》にて飾らるゝ諸※[#二の字点、1−2−22]の擧動《ふるまひ》とを見たり 四九―五一
おしなべての天堂の形をわれ既に悉く認めたれど、未だそのいづれのところにも目を据《す》ゑざりき 五二―五四
かくて新しき願ひに燃され、我はわが心に疑ひをいだかしめし物につきてわが淑女に問はんため身をめぐらせるに 五五―五七
わが志《こゝろざ》しゝ事我に臨《のぞ》みし事と違へり、わが見んと思ひしはベアトリーチェにてわが見しは一人《ひとり》の翁《おきな》なりき、その衣は榮光の民の如く 五八―六〇
目にも頬にも仁愛の悦びあふれ、その姿は、やさしき父たるにふさはしきまで慈悲深かりき 六一―六三
彼|何處《いづこ》にありや。我は直にかく曰《い》へり、是においてか彼。汝の願ひを滿さんためベアトリーチェ我をしてわが座を離れしむ 六四―六六
汝仰ぎてかの最高《いとたか》き段《きだ》より第三に當る圓を見よ、さらば彼をその功徳によりてえたる寶座《くらゐ》の上にて再び見む。 六七―六九
我答へず、目を擧げて淑女を見しに、永遠《とこしへ》の光彼より反映《てりかへ》しつゝその冠となりゐたり 七〇―七二
人の目いかなる海の深處《ふかみ》に沈むとも、雷《いかづち》の鳴るいと高きところよりその遠く隔《へだ》たること 七三―七五
わが目の彼處《かしこ》にてベアトリーチェを離れしに及ばじ、されど是我に係《かゝはり》なかりき、そはその姿|間《あひだ》に混《まじ》る物なくしてわが許《もと》に下りたればなり 七六―七八
あゝわが望みを強うする者、わが救ひのために忍びて己が足跡《あしあと》を地獄に殘すにいたれる淑女よ 七九―八一
わが見しすべての物につき、我は恩惠《めぐみ》と強さとを汝の力汝の徳よりいづと認む 八二―八四
汝は適《ふさ》はしき道と方法《てだて》とを盡し、我を奴僕《ぬぼく》の役《つとめ》より引きてしかして自由に就かしめぬ 八五―八七
汝の癒《いや》しゝわが魂が汝の意《こゝろ》にかなふさまにて肉體より解かるゝことをえんため、願はくは汝の賜をわが衷《うち》に護《まも》れ。 八八―九〇
我かく請《こ》へり、また淑女は、かのごとく遠しと見ゆる處にてほゝゑみて我を視《み》、その後|永遠《とこしへ》の泉にむかへり 九一―九三
聖なる翁曰ふ。汝の覊旅《たびぢ》を全うせんため(願ひと聖なる愛とはこのために我を遣《つか》はしゝなりき) 九四―九六
目を遍《あまね》くこの園の上に馳《は》せよ、これを見ば汝の視力は、神の光を分けていよ/\遠く上《のぼ》るをうるべければなり 九七―九九
またわが全く燃えつゝ愛する天の女王、われらに一切の恩惠《めぐみ》を與へむ、我は即ち彼に忠なるベルナルドなるによりてなり。 一〇〇―一〇二
わがヴェロニカを見んとて例《たと》へばクロアツィアより人の來ることあらんに、久しく傳へ聞きゐたるため、その人|飽《あ》くことを知らず 一〇三―一〇五
これが示さるゝ間、心の中にていはむ、わが主ゼス・クリスト眞神《まことのかみ》よ、さてはかゝる御姿《おんすがた》にてましましゝかと 一〇六―一〇八
現世《このよ》にて默想のうちにかの平安を味へる者の生くる愛を見しとき、我またかゝる人に似たりき 一〇九―一一一
彼曰ふ。恩惠《めぐみ》の子よ、目を低うして底にのみ注ぎなば、汝この法悦の状《さま》を知るをえじ 一一二―一一四
されば諸※[#二の字点、1−2−22]の圈を望みてそのいと遠きものに及べ、この王國の從ひ事へまつる女王の、坐せるを見るにいたるまで。 一一五―一一七
われ目を擧げぬ、しかしてたとへば朝《あした》には天涯の東の方《かた》が、日の傾く方にまさるごとく 一一八―一二〇
我は目にて(溪より山は行くかとばかり)縁《ふち
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