》よりその端《はし》に亘る弧線《アルコ》を悉くめぐり終へゐたり 七九―八一
さればガーデのかなたにはウリッセの狂《くるほ》しき船路《ふなぢ》見え、近くこなたには、エウローパがゆかしき荷となりし處なる岸見えぬ 八二―八四
日輪もし一天宮餘を隔《へだ》てゝわが足の下に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》りをらずば、この小さき麥場《うちば》なほ廣く我に現はれたりしなるべし 八五―八七
たえずわが淑女と契る戀心《こひごゝろ》、常よりもはげしく燃えつゝ、わが目を再び彼にむかしむ 八八―九〇
げに自然や技《わざ》が、心を獲んためまづ目を捉《とら》へんとて、人の肉體やその繪姿《ゑすがた》に造れる餌《ゑば》 九一―九三
すべて合はさるとも、わが彼のほゝゑむ顏に向へるとき我を照らしゝ聖なる樂しみに此ぶれば物の數ならじと見ゆべし 九四―九六
しかしてかく見しことよりわが受けたる力は、我をレーダの美しき巣より引離して、いと疾《はや》き天に押し入れき 九七―九九
これが各部皆いと強く輝きて高くかつみな同じ状《さま》なれば、我はベアトリーチェがその孰《いづ》れを選びてわが居る處となしゝやを知らじ 一〇〇―一〇二
されど淑女は、わが願ひを見、その顏に神の悦び現はると思ふばかりいとうれしくほゝゑみていふ 一〇三―一〇五
中心を鎭《しづ》め、その周圍《まはり》なる一切の物を動かす宇宙の性《さが》は、己が源より出づるごとく、こゝよりいづ 一〇六―一〇八
またこの天には神意《みこころ》の外《ほか》處《ところ》なし、しかしてこれを轉らす愛とこれが降《ふら》す力とはこの神意の中に燃ゆ 一〇九―一一一
一の圈の光と愛これを容るゝことあたかもこれが他の諸※[#二の字点、1−2−22]の圈を容《い》るゝに似たり、しかしてこの圈を司《つかさど》る者はたゞこれを包む者のみ 一一二―一一四
またこれが運行は他の運行によりて測《はか》られじ、されど他の運行は皆これによりて量《はか》らる、猶十のその半《なかば》と五|分《ぶ》一とによりて測らるゝ如し 一一五―一一七
されば時なるものが、その根をかゝる鉢に保ち、葉を他の諸※[#二の字点、1−2−22]の鉢にたもつ次第は、今汝に明らかならむ 一一八―一二〇
あゝ慾よ、汝は人間を深く汝の下に沈め、ひとりだに汝の波より目を擡《もた》ぐるをえざるにいたらしむ 一二一―一二三
意志は人々のうちに良花《よきはな》と咲けども、雨の止まざるにより、眞《まこと》の李《すもゝ》惡しき實に變る 一二四―一二六
信と純とはたゞ童兒《わらべ》の中にあるのみ、頬に鬚《ひげ》の生《お》ひざるさきにいづれも逃ぐ 一二七―一二九
片言《かたこと》をいふ間|斷食《だんじき》を守る者も、舌ゆるむ時至れば、いかなる月の頃にてもすべての食物《くひもの》を貪りくらひ 一三〇―一三二
片言をいふ間母を愛しこれに從ふ者も、言語《ことば》調《とゝの》ふ時いたれば、これが葬らるゝを見んとねがふ 一三三―一三五
かくの如く、朝《あした》を齎し夕《ゆふべ》を殘しゆくものゝ美しき女《むすめ》の肌は、はじめ白くして後黒し 一三六―一三八
汝これを異《あや》しとするなからんため、思ひみよ、地には治むる者なきことを、人の族《やから》道を誤るもこの故ぞかし 一三九―一四一
されど第一月が、世にかの百|分《ぶ》一の等閑《なほざり》にせらるゝため、全く冬を離るゝにいたらざるまに、諸※[#二の字点、1−2−22]の天は鳴轟き 一四二―一四四
待ちに待ちし嵐起りて、艫《とも》を舳《へさき》の方《かた》にめぐらし、千船《ちふね》を直く走らしむべし 一四五―一四七
かくてぞ花の後に眞《まこと》の實あらむ。 一四八―一五〇
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   第二十八曲

我をして心を天堂に置かしむる淑女、幸《さち》なき人間の現世《げんぜ》を難じつゝその眞状《まことのさま》をあらはしゝ時 一―三
我はあたかも、見ず思はざるさきに己が後方《うしろ》にともされし燈火《ともしび》の焔を鏡に見 四―六
玻※[#「王+黎」、第3水準1−88−35]の果して眞《まこと》を告ぐるや否やを見んとて身を轉らし、此と彼と相合ふこと歌のその譜《ふ》におけるに似たるを見る 七―
人の如く(記憶によりて思ひ出づれば)、かの美しき目即ち愛がこれをもて紐《ひも》を造りて我を捉《とら》へし目を見たり ―一二
かくてふりかへり、人がつら/\かの天のめぐるを視るとき常にかしこに現はるゝものわが目に觸るゝに及び 一三―一五
我は鋭き光を放つ一點を見たり、げにかゝる光に照らされんには、いかなる目も、そのいと鋭きが爲に閉ぢざるをえじ 一六―一八
また世より最小《いとちひ》さく見ゆる星さへ、星の星と並ぶごとくかの點とならびなば、さながら月と見ゆるならむ 
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