一九―二一
月日《つきひ》の暈《かさ》が、これを支《さゝ》ふる水氣のいと濃《こ》き時にあたり、これを彩《いろど》る光を卷きつゝその邊《ほとり》に見ゆるばかりの 二二―二四
間《あはひ》を隔《へだ》てゝ、一の火輪《ひのわ》かの點のまはりをめぐり、その早きこと、いと速に世界を卷く運行にさへまさると思はるゝ程なりき 二五―二七
また是は第二の輪に、第二は第三、第三は第四、第四は第五、第五は第六の輪に卷かる 二八―三〇
第七の輪これに續いて上方《うへ》にあり、今やいたくひろがりたれば、ユーノの使者《つかひ》完全《まつた》しともこれを容《い》るゝに足らざるなるべし 三一―三三
第八第九の輪また然り、しかしていづれもその數《かず》が一《いち》を距《へだゝ》ること遠きに從ひ、※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》ることいよ/\遲く 三四―三六
また清き火花にいと近きものは、これが眞《まこと》に與《あづ》かること他にまさる爲ならむ、その焔いと燦《あざや》かなりき 三七―三九
わがいたく思ひ惑《まど》ふを見て淑女曰ふ。天もすべての自然も、かの一點にこそ懸《かゝ》るなれ 四〇―四二
見よこれにいと近き輪を、しかして知るべし、その※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》ることかく早きは、燃ゆる愛の刺戟を受くるによるなるを。 四三―四五
我彼に。宇宙もしわがこれらの輪に見るごとき次第を保《たも》たば、わが前に置かるゝもの我を飽かしめしならむ 四六―四八
されど官能界にありては、諸※[#二の字点、1−2−22]の回轉その中心を遠ざかるに從つていよ/\聖なるを見るをう 四九―五一
是故にこの妙《たへ》なる、天使の神殿《みや》、即ちたゞ愛と光とをその境界《さかひ》とする處にて、わが顏ひ全く成るをうべくば 五二―五四
請《こ》ふさらに何故に模寫《うつし》と樣式《かた》とが一樣ならざるやを我に告げよ、我自らこれを想ふはいたづらなればなり。 五五―五七
汝の指かゝる纈《むすび》を解くをえずとも異《あや》しむに足らず、こはその試みられざるによりていと固くなりたればなり。 五八―六〇
わが淑女かく、而して又曰ふ。もし飽くことを願はゞ、わが汝に告ぐる事を聽き、才を鋭うしてこれにむかへ 六一―六三
それ諸※[#二の字点、1−2−22]の球體は、遍《あまね》くその各部に亘りてひろがる力の多少に從ひ、或は廣く或は狹し 六四―六六
徳大なればその生ずる福祉《さいはひ》もまた必ず大に、體大なれば(而してその各部等しく完全なれば)その容《い》るゝ福祉《ふくし》もまた從つて大なり 六七―六九
是においてか己と共に殘の宇宙を悉く轉《めぐ》らす球は、愛と智とのともにいと多き輪に適《かな》ふ 七〇―七二
是故に汝の量《はかり》を、圓《まる》く汝に現はるゝものゝ外見《みえ》に据《す》ゑずして力に据ゑなば 七三―七五
汝はいづれの天も、その天使と――即ち大いなるは優れると、小さきは劣れると――奇《くす》しく相應ずるを見む。 七六―七八
ボーレアがそのいと温和《おだやか》なる方《かた》の頬より吹くとき、半球の空あざやかに澄みわたり 七九―八一
さきにこれを曇らせし霧拂はれ消えて、天その隨處の美を示しつゝほゝゑむにいたる 八二―八四
わが淑女がその明らかなる答を我に與へしとき、我またかくの如くになり、眞《まこと》を見ること天の星を見るに似たりき 八五―八七
しかしてその言《ことば》終るや、諸※[#二の字点、1−2−22]の輪火花を放ち、そのさま熱鐡の火花を散らすに異なるなかりき 八八―九〇
火花は各※[#二の字点、1−2−22]その火にともなへり、またその數《かず》はいと多くして、將棊《しようぎ》を倍するに優ること幾千といふ程なりき 九一―九三
我は彼等がかれらをその常にありし處に保ちかつ永遠《とこしへ》に保つべきかの動かざる點に向ひ、組々《くみ/″\》にオザンナを歌ふを聞けり 九四―九六
淑女わが心の中の疑ひを見て曰ふ。最初《はじめ》の二つの輪はセラフィニとケルビとを汝に示せり 九七―九九
かれらのかく速に己が絆に《きづな》從ふは、及ぶ限りかの點に己を似せんとすればなり、而してその視る位置の高きに準じてかく爲すをう 一〇〇―一〇二
かれらの周圍《まはり》を轉《めぐ》る諸※[#二の字点、1−2−22]の愛は、神の聖前《みまへ》の寶座《フローニ》と呼ばる、第一の三《みつ》の組かれらに終りたればなり 一〇三―一〇五
汝知るべし、一切の智の休らふ處なる眞《まこと》をばかれらが見るの深きに應じてその悦び大いなるを 一〇六―一〇八
かゝれば福祉《さいはひ》が見る事に原《もと》づき愛すること(即ち後に來る事)にもとづかざる次第もこれによりて明らかならむ 一〇九―一一一
また、見る事の量
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