、目をいとかたく神にとむるセラフィーノも、汝の願ひを滿すをえじ 九一―九三
これ汝の尋ぬる事は永遠《とこしへ》の定《さだめ》の淵深きところにありて、凡ての造られし目を離るゝによる 九四―九六
汝歸らばこれを人の世に傳へ、かゝる目的《めあて》にむかひて敢《あへ》てまた足を運ぶことなからしむべし 九七―九九
こゝにては光る心も地にては烟《けぶ》る、是故に思へ、天に容《い》れられてさへその爲すをえざる事をいかで下界に爲しえんや。 一〇〇―一〇二
これらの言葉我を控《ひか》へしめたれば、我はこの問を棄て、自ら抑《ひか》へつゝたゞ謙《へりくだ》りてその誰なりしやを問へり 一〇三―一〇五
イタリアの二の岸の間、汝の郷土《ふるさと》よりいと遠くはあらざる處に雷《いかづち》の音遙に下に聞ゆるばかり高く聳ゆる岩ありて 一〇六―一〇八
一の峰を成す、この峰カートリアと呼ばれ、これが下にはたゞ禮拜《らいはい》の爲に用ゐる習なりし一の庵《いほり》聖《きよ》めらる。 一〇九―一一一
かの者|三度《みたび》我に語りてまづかくいひ、後また續いていひけるは。かしこにて我ひたすら神に事《つか》へ 一一二―一一四
默想に心を足《たら》はしつゝ、橄欖《かんらん》の液《しる》の食物《くひもの》のみにて、輕く暑さ寒さを過せり 一一五―一一七
昔はかの僧院、これらの天のため、實《み》をさはに結びしに、今はいと空しくなりぬ、かゝればその状《さま》必ず直に顯《あら》はれん 一一八―一二〇
我はかしこにてピエートロ・ダミアーノといひ、アドリアティコの岸なるわれらの淑女の家にてはピエートロ・ペッカトルといへり 一二一―一二三
餘命|幾何《いくばく》もなかりしころ、強《し》ひて請《こ》はれて我かの帽を受く、こは傳へらるゝごとに優《すぐ》れる惡に移る物 一二四―一二六
チエファスの來るや、聖靈の大いなる器《うつは》の來るや、身|痩《や》せ足に沓《くつ》なく、いかなる宿《やど》の糧《かて》をもくらへり 一二七―一二九
しかるに近代《ちかきよ》の牧者等は、己を左右より支ふる者と導く者と(身いと重ければなり)裳裾《もすそ》をかゝぐる者とを求む 一三〇―一三二
かれらまたその表衣《うはぎ》にて乘馬《じようめ》を蔽《おほ》ふ、これ一枚の皮の下にて二匹の獸の出るなり、あゝ何の忍耐ぞ、怺《こら》へてこゝにいたるとは。 一三三―一三五
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