[チェの目
一二一―一二三
神としてのキリスト、人としてのキリストがこも/″\神學の目に映ずるを敍す
【忽ち彼忽ち此】或ひは鷲(神性)或ひは獅子(人性)の恣態(顯現)
一二七―一二九
【食物】ベアトリーチェの目を見ること
一三〇―一三二
【さらにすぐれ】さきのよたりの淑女にまさりて
一三三―一三八
【第二の美】口。第一の美は目にして第二の美は口にあらはるゝうるはしき微笑なり(『コンヴィヴィオ』三、八・六四以下參照)
一三九―一四五
みたりの淑女の請ひを容れて面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]をぬぎ去れるベアトリーチェの姿の美しさ尊さはいかなる詩人の筆といへども敍するにふさはしからざるをいへり
【パルナーゾ】淨、二二・六四―六參照
【あをざめ】詩の研究につかれて
【飮みたる者】詩想のゆたかなる者
【調をあはせ】運行の諸天相和してその自然の調《しらべ》亂れざること。但しこの一行の解釋につきては異説多し
第三十二曲
ダンテ目を轉じてかの聖なる行列の東に歸るを見、マテルダ及びスタティウスと共にこれに從ひ一奇樹のほとりにいたりて眠り、眠りさめし後象徴によりて寺院の多くの變遷を見る
一―三
【十年の渇】ベアトリーチェを見んとおもへる十年の間(一二九〇年即ちベアトリーチェの死せる年より一三〇〇年まで)の切なる願ひ
四―六
【等閑の壁】ベアトリーチェを見るに專らにして他の事物をすべて等閑に附するをいふ
【微笑】ベアトリーチェの第二の美(淨、三一・一三三―八並びに註參照)
【昔の網】昔の愛の力
七―九
【女神等】車の右ダンテの左に立てる教理の三徳
一三―一五
【小さき】行列の光の如き小さき
【大いなる】ベアトリーチェの顏の光の
一六―一八
【榮光の戰士等】行列
【日】四月十三日の午前の日光。これと七の燭臺より出づる光を顏にうけつゝ東にむかひてかへりゆくなり
一九―二一
長き列を成せる一隊の兵その方向を變ずる時は後列未だ動かざるまに前列既に旗を先立てて轉換す
二二―二四
【王國の軍人】二十四人の長老
二五―二七
【淑女等】ダンテを導かんとて車の左を去れるよたりの淑女も、またダンテのためにベアトリーチェに請はんとてやゝ先に進めるみたりの淑女も
【荷】凱旋車
二八―三〇
【輪】車の右の輪。車右に方向を轉ずるがゆゑに車轍の弓の形左の輪に此すれば小さし
三一―三三
【女】蛇に欺かれて禁斷の果を食べるエヴァ(淨、二九・二三以下參照)
三七―三九
【アダモ】エヴァに勸められて神命に背けるアダムの罪(創世記、三・六以下)を責め且つそのためになげくなり
【一本の木】善惡を知るの木(創世記、二・九)。神この木を樂園に生ぜしめ且つその果實を採るを禁じて人の服從を求めたまひしものなればこゝには服從の象徴として人類の罪及びキリストの救ひをあらはせるなるべし、但し異説多し、今多く古註によれり
【花も葉もなき】神の律法がその積極的效果を失へるをいふ
ブーチ曰。人かく神の命に背きてその恩寵を失へるがゆゑに能く善を行ひて以て聖旨を和ぐるをえず、キリスト來臨したまふに及びその從順の徳によりて神人はじめて融和すと
四〇―四二
【髮】枝。從順の徳は神に近づくに從つて増すなり
【インド人】インドの森には亭々たる巨木ありて矢もその頂に達せずといふことウェルギリウスの『ゼオルジカ』二・一二二以下にいづ
四三―四五
アダムの罪を責むると同時にキリストの從順を讚めしなり
四六―四八
【すべての義の】ブーチ曰。慢心は衆惡の母、謙讓は諸徳の本なり、しかして謙讓はたゞ從順によりて保たると
四九―五一
グリフォネがかの大樹の枝をもて凱旋車の轍をその幹に結べるは、キリストが從順の例を示して寺院にこの徳を教へしことをあらはす
【その小枝をもて】或ひは quel di lei を「それ(かの木)にて作れるもの(即ち轍、轍を十字架の表章と見做し、キリストの十字架は知識の木にて作られたりとの傳説によれり)を」と解する人あり
五二―五四
春來れば地上の植物(その芽を出し)
【大いなる光】太陽の光
【天上の魚】雙魚宮の星。その後に輝くは白羊宮の星なり(地、一一・一一二―四註參照)、こゝには春太陽の光が白羊宮の星の光とまじりて地上に降るときをいふ
原語 lasca は淡水に住む魚の一種
五五―五七
【日が】太陽白羊宮の後《うしろ》なる金牛宮に移りてその日毎の※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉を續けざるまに。太陽の金牛宮に入るは四月の下旬なり
五八―六〇
キリストの模範によりて寺院從順の徳を傳へ、神の律法その失へる效果を克復するにいたりしこと
【薔薇より】薔薇と菫の中間の色、但しその何色なるや(ムーアは、薔薇の如く赤からざれども菫よりは赤勝てる意なるべしといへり)將又これに特殊の寓意ありやあきらかならず
六一―六三
【終りまで】歌をききつゝ眠りたれば
六四―六九
【目】アルゴスの百眼(淨、二九・九四―六並びに註參照)。アルゴスの守りきびしきを見てゼウス神その戀人イノに近づくあたはざるを怨みヘルメスを遣はしてアルゴスを殺さしむ
【高き價を拂へる】生命を失ふにいたれる
【シリンガ】パン神に慕はれしニムフ、シュリンクス。ヘルメス神この物語(『メタモルフォセス』一・六八九以下)をもてアルゴスを眠らしめその頸を撃ちてこれを殺せり
七〇―七二
【煌】天に登る行列の光
【聲】マテルダの
七三―七五
【林檎】キリスト。雅歌二・三に曰。男子等の中にわが愛する者のあるは林の樹の中に林檎のあるがごとし
【花】變容(マタイ、一七・一―八)によりてあらはれしキリストの榮光
【果】天上に於けるキリストの榮光。花の果に於ける如く、キリストの變容はたゞその榮光の一部の顯現即ち全榮光の一約束に過ぎず
【婚筵】(默示録、一九・七―九)、キリストがその榮光によりてかぎりなく聖徒を福ならしむること
七六―七八
【導かれて】キリストに導かれて高山に登り(マタイ、一七・一)
【氣を失ひ】光と聲とにおどろきて(マタイ、一七・六)
【さらに大いなる睡】死の睡。キリストの言によりて死者の蘇れることあるを指す(ルカ、七・一一以下、ヨハネ、一一・一以下等)
【言葉】起きよ恐るゝ勿れといひたまへるキリストの言葉(マタイ、一七・七)
七九―八一
【變りたる】常の如くになれる
八八―九〇
【組】七淑女。キリスト(グリフォネ)天に昇りて後、神學(ベアトリーチェ)は諸徳(七淑女)にかこまれて寺院(車)を護る
九四―九六
【眞の地】terra vera 眞實にして神に從順なる地の謂か、或ひは曰ふ、席を設けざる裸の地の意と
九七―九九
【光】七の燭臺
一〇〇―一〇二
汝が地上の人としてこの樂園にとゞまるはたゞしばしの間のみ、その時過ぐれば天に登りてかぎりなくかしこに住まむ
【ローマ】天の都。キリストもその民のひとりなり
一〇九―一一一
高き密雲の中より電光の射下する早しといへども。註釋者曰、雨雲高處にあるときは當時の所謂火炎界に近きがゆゑにその影響をうけて電雷常よりも劇しき意と
一一二―一一四
【ジョーヴェの鳥】鷲
鷲はローマ帝國の徽章なれば、鷲が知識の木を荒せるはローマ皇帝等(ネロ、ディオクレティアヌス等)が神の律法をなみせるをいひ、その聖車を打てるは彼等が寺院を迫害せるをいふ
一一八―一二〇
【狐】迫害に次ぎて起れる異端。良き食物は健全なる教義
一二一―一二三
正しき教へ(ベアトリーチェ)に逐はれて異端寺院を去れるなり
一二四―一二六
鷲は皇帝、羽は世の利慾なり。即ち皇帝コンスタンティヌスが法王シルヴェステル一世に領地を供物として捧げしこと(地、一九・一一五―七並びに註參照)
一二七―一二九
【小舟】寺院を指す
一三〇―一三五
龍は即ち宗爭にしてその車底の一部を奪へるは寺院の相分散せる(ギリシア寺院のラテン寺院よりわかれしごとく)をいへるか、ダンテの眞意分明ならず、異説或ひはマホメットとし或ひは魔王とす
一三六―一四一
殘れる物即ち底の一部を失へる車の羽をもておほはれしはその後の皇帝等の供物によりて寺院の所得忽ち膨脹せることを表はす
【おそらくは】彼等或ひは眞に寺院の益をおもひてかく供物を捧げしならむもその結果としてはたゞ寺院の腐敗を招くに過ぎざりしなり
一四二―一四七
寺院富を得ていよ/\利慾に迷ひ腐敗を極むるにいたれるをいふ
註釋者曰。七の頭は七の罪なり、七の罪の中、誇りと嫉みと怒りとは神と人とに對しての罪なればこれに各※[#二の字点、1−2−22]二本の角あり、他の四の罪はたゞ人に對して行はるべき罪なればこれに各※[#二の字点、1−2−22]一本の角あるなりと
この項は地、一九・一〇六以下に見ゆる水上の女と同じく默示録よりいでて意は異なれり、讀者よく思ふべし
一四八―一五〇
【遊女】法王。法王ボニファキウス八世及びクレメンス五世の頃の寺院の腐敗を敍せるなり
一五一―一五三
【巨人】フランス王特にフィリップ四世。遊女と接吻せるはボニファキウスとフィリップと初め相和せるをいふ
一五四―一五六
法王ボニファキウス八世がフランス王家の抑壓を免かれんとして却つてフィリップの虐待を受けしをいふ(淨、二〇・八五―七並びに註參照)
【我に】古註に曰、ダンテはこゝにキリスト教徒を代表し、寺院がキリスト教徒に助けを求めしをあらはせるなりと
一五七―一六〇
クレメンス法王たりし時法王の廳ローマよりフランスのアヴィニオンに移されしをいふ
【盾】林盾の如く目を遮りて
【獸】即ち異形の車
第三十三曲
ベアトリーチェ、マテルダ、スタティウスとともにダンテかの奇樹のもとを離れ、ゆく/\ベアトリーチェより、近く故國に起るべき事及びその他の教へをきき、遂にエウノエのほとりに達し、こゝにてマテルダにたすけられてその水を飮み、天に登るをうるにいたる
一―三
【神よ】Deus, venerunt gentes「あゝ神よ、異邦人は汝の境に入來り、汝の聖なる殿《みや》を汚し、イエルサレムを荒地となせり」といふ詩篇第七九篇第一節の初めの詞。みたりの淑女(教理の三徳)よたりの淑女(四大徳)とつぎ/\にこの歌をうたひて寺院の頽敗を歎きたるなり
四―六
【マリア】聖母マリアが十字架上のキリストを見て哀れにたへざりしごとくベアトリーチェは寺院の悲運をいたみおもひてその顏色を變へしなり
七―九
淑女等うたひをはれるときベアトリーチェはその熱烈の情を面《おもて》にあらはし
一〇―一二
【少時せば】キリストの言(ヨハネ、一六・一六)。寺院の腐敗によりて靈界の知識一時ひそみかくるゝとも久しからずしてまた顯はるべしといひ、寺院の改善を豫言せるなり
一三―一五
七淑女を前に立たしめ、ダンテとマテルダとスタティウスとを身振りに示して後に立たしめ
二五―二七
【聲を齊ふる】原文、聲を完全に齒までひきいだす
二八―三〇
【汝は】わが問ひを待たずして汝は我に必要なるものとこの必要に應じて我に教ふべきこととを知る
三四―三六
かの龍のために底を奪はれし凱旋車は今や遠く移されてこゝにあらず、されどこれを移せる巨人は神の刑罰必ずその上に臨むを知るべし
【サッピ】sappi 酒またはその他の液體に浸せる麪包
註釋者曰。昔フィレンツェの習俗として、人を殺せる者若し兇行の當日より九日の間に於て被害者の墓にゆき、酒に浸せるパンをこゝに食ふときは、死者の遺族復讎をなすことあたはず、故に遺族等九日の間墓を護りて殺害者のこゝに入來るを防ぐを例とせりと。こゝにてはいかなる方法を用ゐるとも神の刑罰の避けうべきにあらざるをいへるなり
三七―三九
【羽を】淨、三二・一二四―六參照
【獲物】巨人の(淨、三二・一五一以下參照)
【鷲】即ち皇帝。世繼なきは帝位の空しきをいふ。フリートリヒ二世の死よりハインリヒ七世の即位まで(一二五〇年―一三〇八年)帝位空しきにあらざりしも名實相そはざるがゆゑに(淨、六・九七以下參照)ダンテはフリートリヒを指して最後のローマ皇帝といへり(『コンヴィヴィオ』四、三・三八以下)
四〇―四二
【
前へ
次へ
全40ページ中39ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ダンテ アリギエリ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング