bポクラテスは自然がその最愛の生物即ち人間の生命を救はんために造り出せる名醫(地、四・一三九―四四並びに註參照)なればかくいへり
一三九―一四一
【またひとり】パウロ。靈の劒(エペソ、六・一七參照)をとりて信仰のために戰へるをあらはす
【反する思ひ】醫師は癒さんことを思ひ武人は撃たんことを思ふ
一四二―一四四
【よたりの者】ヤコブ書、ペテロ書、ヨハネ書、ユダ書。これ等の諸書は他に比して小なれば外見劣る[#「外見劣る」に白丸傍点]といへり
【翁】默示録。新約全書の卷末にありて他に類なき書《ふみ》なればたゞひとり[#「たゞひとり」に白丸傍点]といへり、眠れるはその著者の異象を見しさまをあらはし、氣色鋭きは未來を洞察する意氣の鋭きをあらはす
一四五―一四七
【第一の組】前列なる二十四人の長老
【花圈】brolo ※[#「くさかんむり/翳」、319−16]薈《しげみ》
一四八―一五〇
【薔薇と】紅の色は新約の諸書に滿つる愛の甚だ強きをあらはす
一五四
【旌】燭臺とそのうしろの光
以上寺院の行列について敍せしところは、寺院が悔改めし者を求め喜びてこれに就くを示せり(ルカ、五・四以下參照)
第三十曲
行列とゞまれるとき天使の散らせる花の中にベアトリーチェあらはれいで(ウェルギリウス去る)車の左の縁に立ちてダンテの罪過を叱責す
一―三
【第一天の七星】七の燭臺。これを第一天(即ちエムピレオの天)の七星といへるはわが世界より見ゆる北斗七星に對してなり、七の燭臺は神の七の星なり(淨、二九・五二―四註參照)
【出沒を知らず】神の靈の常に輝きて善人の目に映ずるをいふ
【罪よりほかの】たゞ罪あるもの神の靈を見るをえず
四―六
七の燭臺のかの行列を導けること恰もわが七星の舟手を導いて舟の方向をあやまらしめざるに似たり
【低き】エムピレオの天は星宿の天(第八天)より高ければ
七―九
【眞の民】二十四人の長老即ち舊約二十四書
【己が平和に】舊約の望みはキリストによりて寺院を建設するにあり、故に寺院をうるに及びて望み達し心安んず
一〇―一二
【新婦よ】雅歌四・八にあり、ラテン譯の聖者には「來れリバーノより、わが新婦よ、來れリバーノより、來れいざ」といひ、來れ[#「來れ」に白丸傍点](veni)の語を三たびくりかへせり。長老の一、神の使命を果さんとする者の如くかく歌ひてベアトリーチェを呼べるなり
一三―一五
最後の審判の日、すべて救はるゝ者|喇叭《らつぱ》の聲をききて再び肉の衣をまとひアレルヤ(默示録、一九・一參照)をうたひつゝその墓より起出るごとく
【再び】再び得たる肉體の聲にてアレルヤをうたひつゝ
異本、再び着たる肉の衣かろらかに
一六―一八
【車】basterna 美しく飾れる車
【永遠の生命の僕と使者】神の僕と使者即ち天使
一九―二一
【來たる】キリスト聖都に入りたまへるとき群集のよろこびてさけべる詞(マタイ、二一・九等)。天使等ベアトリーチェの來らんとするをよろこびてかくいへり
【百合を】Manibus o date lilia plenis!『アエネイス』六・八八三にいづるアンキセスの詞にたゞOの一語を加へしのみ
二五―二七
太陽朝霧に蔽はれていでその光劇しからざるがゆゑに人ながくこれに目をとむるをうるなり
三一―三三
橄欖は智慧と平和のしるし、白は信、縁は望、赤は愛
三四―三六
【かく久しく】一二九〇年ベアトリーチェの死せしよりこの方十年の間ダンテはかの女を見ざりしなり
【彼の前にて】ダンテが驚異の目をもてベアトリーチェを見、深き印象をうけて身を震はせしこと『新生』の處々にいづ
三七―三九
【目の】面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]にかくれてベアトリーチェの顏あきらかにみえざりしなり(六七―九行)
四〇―四五
【童の時過ぎざるさきに】九歳の時(地、二・七〇―二註參照)
四六―四八
【焔】愛。『アエネイス』四・二三に「昔の焔のあとを、我今知る」といへるディトの詞をとれるなり
五二―五四
樂園における一切の歎樂もわが涙(ウェルギリウスの去れるを悲しむ)をとゞむるをえざりき
【昔の母】エヴァ(淨、二九・二以下參照)
【露に淨められ】ウェルギリウスがカトーの命に從ひ草の露をもてダンテの顏を淨めしこと(淨、一・一二一以下參照)
五五―五七
ベアトリーチェの詞
【ほかの劒に】ダンテを責むるベアトリーチェの言に
五八―六六
【己が名】神曲中ダンテの名の見ゆるはたゞこの處のみ
六七―六九
【ミネルヴァの木葉】橄欖。アテナ(ミネルヴァ)がはじめて地より橄欖を生ぜしめしこと神話に見ゆ
七三―七五
【汝は人が】汝は福を享くるに足る人のみこの山に來るをうるを知らざりしか
八二―八四
【主よわが望みは】詩篇第三一篇を一―八まで歌へるなり、ヴルガータにては第八節 pedes meos(わが足を)に終る、天使等これをうたひダンテに代りてベアトリーチェに答へ、彼はダンテの主を待ち望めるを告げしなり
八五―八七
【スキアヴォーニアの風】スラヴォニア、東北の風。スラヴォニアはユーゴスラヴィアの一地方
【イタリアの背】アペンニノ山脈
【生くる梁木】森の樹木
八八―九〇
【陰を失ふ國】アフリカ。日光直下して陰なき時あり
【己の内に】上層の雪南風に溶けて下層に沈み入るをいふ
九一―九三
【とこしへの球の調】諸天の調(天、一・七六以下參照)
九七―九九
【氷】憂ひ
【息と水】歎息と涙
一〇〇―一〇二
【慈悲深き】pie 天使の敬虔にして慈悲あるをあらはせる語
一〇三―一〇五
汝等神の永遠の光の中に常に目さめて萬の事を視、夜と眼に妨げらるゝ間なければ人の世に行はるゝほどの事一として汝等の目より洩るゝはなし
一〇六―一〇八
汝等悉く世人の行爲を知るがゆゑにわが答へは汝等の知らざることを汝等に告げんがためになさるゝにあらず、ダンテをしてよくわが詞をさとらせその罪の大なるに應じてその悔いを大ならしめんがためなり
一〇九―一一一
【諸天】原文、大いなる輪。諸天が自然にその力を人に及ぼしよき星の下に生れし者を善にむかはせあしき星の下に生れし者を惡にむかはしむるをいふ
一一二―一一四
【その雨の】神の惠みの雨人に降れどその降る次第にいたりては人智何ぞこれをきはむるをえむ
一一五―一一七
【生命の新たなるころ】若き時
【すべての良き】天賦の才能をみちびいて若き時の期待に背かざる效果をあぐるをうべかりしに
一二一―一二三
【しばらく】ダンテがベアトリーチェを初めて知りし時よりこの方この戀人の死にいたるまで
一二四―一二六
【第二の齡】人生に四期あり、第一期は Adolescenza(發育時代)といひて二十五歳に終り第二期は Gioventute(壯年時代)といひて四十五歳に終る(『コンヴィヴィオ』四、二四・一以下參照)、ベアトリーチェの死せるはその二十五歳のはじめなれば即ち人生第二期の閾にいたりて一時の生を永遠の生に變へしなり
【他人】他の婦人。地上の事に專らにして天上の事に遠ざかれる意を寓す
一三三―一三五
【默示】神の。ベアトリーチェがダンテの異象の中にあらはれしこと『新生』四〇にその例あり
一三六―一三八
ダンテを正路に呼戻し罪の中より救ふの道はたゞ恐ろしき惡の報いをまのあたり彼に示してその改悔をうながすにあるのみ
一三九―一四一
【死者の門】罰をうくる者の門即ち地獄の門。ベアトリーチェがリムボにくだりてウェルギリウスにダンテの救ひを托せしこと地、二の五二以下にいづ
一四二―一四五
人若し悔改めずしてその罪を忘るゝをうべくば神の律法は廢らむ
【その水を】原文、かゝる食物。レーテの水には罪を忘れしむる力あり(淨、二八・一二七以下參照)
第三十一曲
己が罪過を懺悔して後ダンテ、マテルダにたすけられてレーテの流れを渡りその水を飮みて彼岸にいたれば諸徳彼を導いてベアトリーチェの前に立たしめかつこれに請ひてその面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]を脱せしむ
一―六
【刃さへ利しとみえし】間接に(即ちベアトリーチェがダンテの罪過について天使にいへる言を)ききてさへ劇しとおもはれし
七―九
【官】喉と口
一〇―一二
【悲しき記憶】汝未だレーテの水を飮まざるがゆゑに汝の罪過を忘るゝ筈なし
一三―一五
【目を】聲甚だ弱きがために唇の動くさまをみて判ぜざればさとりがたき
【シ】si(然り)責められしことの眞なるをいへる語
一九―二一
【重荷】惑ひと怖れの
二二―二四
【幸】至上の幸即ち神
【わが願ひ】わが汝の心の中に起さしめし善き願ひ
二五―二七
【堀】原文、横の堀(路を遮る堀)カーシーニ曰、堀と鍵とは消極積極二種の障礙なり、一は心の弱みより生じ一は世の誘ひよりいづ、ベアトリーチェに對するダンテの愛の冷却のごときは前者に屬し、濁れる愛、肉の快樂のごときは後者に屬すと
二八―三〇
【他の】世上の
三七―三九
【士師】神
四〇―四二
【我等の】天の
【輪】圓形の砥石をいふ、逆轉して刀にむかへば刃鈍りてその切味《きれあぢ》劣るごとく神の正義の劒慈悲のために鈍るなり
四三―四五
【今】異本、尚深く
【シレーネ】シレーナ(淨、一九・一九―二一註參照)の複數。その歌を聞くは世の快樂の誘ひにあふなり
四六―四八
【涙の種】心のみだれ
【葬られたるわが肉の】わが死の
【異なる】正しき
五五―五七
げに汝はわが死によりて世の無常を觀じ、永遠の生を享くるわが靈を慕ひて向上すべく
【第一の矢】ベアトリーチェの死はダンテが世上の物よりうけし最初の矢即ちほろぶる肉の美のたのむにたらざることを知れる、心の最初の疵なりしなり
五八―六〇
なほも地上の幸を求め虚浮の快樂に欺かれて再び心に疵をうくべきにあらざりき
六一―六三
【羽あるものの】箴言一・一七に曰、すべて鳥の眼の前にて網を張るはいたづらなり
六七―六九
【鬚】童なるざる汝の顏(七三―五行參照)
【見て】わが天上の美を見て、汝がこれを地上の幸に代へしを悔い
七〇―七二
【ヤルバの國】ヤルバス王の治めし國即ちリビア。この吹く風はアフリカ地方より吹く南の風をいひ、本土の風即ち北の方ヨーロッパより吹く北の風に對せしむ
七三―七五
【頤を】木の容易に倒れざるを、ダンテが恥ぢて容易に顏を上げえざるにたとへしなり
七六―七八
【はじめて造られし者】天使。ふりかくる[#「ふりかくる」に白丸傍点]は花をベアトリーチェにふりかくること
七九―八一
【獸】グリフォネ。鷲と獅子とによりて神人の兩性をあらはせるもの(淨、二九・一〇六―八註參照)
八五―八七
【すべてのもの】すべての僞りの快樂
八八―九〇
【者】ベアトリーチェ
九一―九三
【わが心】人我を失ふ時はその心の作用《はたらき》皆内に潜みてあらはれず、このはたらき外にあらはれ諸官を活かしむるに及びてはじめて我にかへるなり
【淑女】マテルダ(淨、二八・三七以下參照)
九七―九九
【汝我に】ウルガータに「汝我にヒソポを注ぎたまふべし」といへる詩篇五一・七の詞。僧が改悔者に淨水をそゝぎてその罪をきよむるときこの歌をうたへりといふ
一〇三―一〇五
【よたり】四大徳の象徴なる(淨、二九・一三〇―三二並びに註參照)。腕にて蔽ふは各※[#二の字点、1−2−22]その徳によりてダンテを護るなり
一〇六―一〇八
【ニンフエ】淨、二九・四―六並びに註參照
【星】淨、一・二二―四並びに註參照)
【まだ世に】世に生れざりしさき。『新生』二六・四三―四に曰、彼は一の奇蹟を示さんとて天より地に降れるものの如く見ゆ
【侍女】寺院の建設、未だ成らざる時にあたりてこの四徳は神意に基づき既に神學のために世に道を備ふるものとなれるなり
一〇九―一一一
【悦びの光】ベアトリーチェの目の中なる悦びの光を充分に見ることをえんため
【三者】教理の三徳を代表するみたりの淑女(淨、二九・一二一以下)。人かの四徳に導かれて神學に到るを得、されどその堂に入ることは神を知ることさらに深きこの三徳の力を借るにあらざれば能はず
一一五―一一七
【縁の珠】ベアトリ
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