xにヘラ(ジユノネ)神がかの岩窟に赴きてアイオロスに風を乞へることみゆ(一・五〇以下)
【シロッコ】東南の風
【キアッシ】アドリアティコの海濱ラヴェンナに近き舊城市の名、大いなる松の林このあたりにあり
二五―二六
【流れ】レーテ
二八―三三
【蔭】林の木蔭
四〇―四二
【淑女】名をムテルダといふ(淨、三三・一一九)。かの階上の夢の中なるレアの實現にして活動の生を代表す、されどその名の由來については定かなること知りがたし
四三―八
【愛】神の愛
四九―五一
【プロセルピーナ】ペルセポネ、魔王ハデス(プルート)に奪はれてその妻となれるもの(オウィディウスの『メタモルフォセス』五・三八五以下參照)
【その母】デメテル(ケレス)
【春を失へる】摘み採りし花を失へるをいふ。
ペルセポネがハデスにとらはれし時その摘める花を失ひて悲しみしこと『メタモルフォセス』(五・三九八以下)に見ゆ
【いづこに】花咲く林に
【いかなるさま】若き美しき姿
五二―五四
舞姫の舞ひ進むときその兩足殆んど地を離れずまた相前後せざるごとくなるをいへり
六四―六六
戀の女神アプロディテ(ウェヌス)が自ら戀に陷りし時といふともその目の光かくあざやかならざりしなるべし
【子】エロス(クーピド)。戀の神、戀の矢を放ちて神々また人間の心を貫くもの
【あやまちて】原文、子の習ひに背きて。即ち誤りて矢を射ることなきエロスがかつてその母アプロディテに接吻せんとてあやまりてその胸に矢疵を負はせ、アプロディテこの疵のためにアドニスを慕ふにいたれるをいふ(『メタモルフォセス』一〇・五二五以下參照)
六七―六九
【右の岸】原文、右の對岸
七〇―七二
【セルセ】クセルクセス、ペルシア王ダリウスの子、紀元前四八〇年大軍を率ゐ船橋を造りてヘレスポントス(エルレスポント即ちダルダネルズ海峽)を渡り以てギリシアを征服せんとせしかどサラミスの戰ひに大敗し汚名を殘して故國に歸れり
七三―七五
【レアンドロ】レアンドロス、アビュドス(アジア側なるヘレスポントス沿岸の町、クセルクセスの船橋を裝へるもこの處なり)の一青年、對岸の町セストスに住めるヘロを慕ひ夜毎に海を泳ぎ渡りてこれを訪ふ、されど一夜波荒く、かの地に達するあたはずして死す
【開かざりし】紅海の水の如く(出エヂプト、一四・二一以下)左右に分れて路を與へざりしをいふ
七六―七八
【巣】住むところ(九一―三行參照)

七九―八一
【汝我を】詩篇九二の四に曰、主よ汝みわざをもて我を樂ませ給へり、我|聖手《みて》のわざを歡ばん。マテルダは樂園の中にあらはるゝ神の奇《くす》しきみわざをよろこびてほゝゑめるなり
八二―八四
【先に】ダンテ今は二詩人の先に立てり(一四五―七行參照)
八五―八七
ダンテはさきにスタティウスより淨火門内には風雨霜雪の異變なきよしを聞きて(淨、二一・四三以下)その眞なるを疑はざりしに今現に地上の樂園に風あり河あるをみてあやしめるなり
九一―九三
【至上の善】神。完全なる者神のみなれば、よく聖旨に適《かな》ふ者神の外にあることなし
【限りなき平和の】やがて天上の限りなき福を享けしむべき
九四―九六
始祖罪を犯して樂園より逐はれしをいふ(創世記、三・一以下)
九七―九九
水陸より發する一種の氣あり、太陽の熱度に應じ之に向ひて上昇す、門外の淨火及び人の世に風雨霜雪の變を起すもの即ちこの氣なり
一〇〇―一〇二
【鎖さるゝところ】淨火の門。風雨の異變門内に及ばず、これ地氣のこれより高く昇るあたはざるによる
以上スタティウスの言の眞なるを證す
一〇三―一〇五
以下地上の樂園に風あるの理を示す
【第一の囘轉】第九天、プリーモ・モービレ(第一動)と稱す。當時の天文によれば他の天球皆これに從ひ東より西に向ひて※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉す空氣亦然り、しかして地球は宇宙の中心にありて動かざるがゆゑに氣壓の變化なき處にてはたえず微風の東より西に吹くあり
一〇六―一〇八
【純なる】原文、生くる
【絆なき】氣壓の作用をうけざる
一〇九―一一一
草木風にあたれば各※[#二の字点、1−2−22]その自然に有する繁殖の力を風に滿たしこの風これを下方におくる
一一二―一一四
【かなたの地】人の住む地。地質と氣候に應じて風の散らせし力を受く
一一八―一二〇
【一切の種】各種の草木
一二一―一二六
以下樂園に水あるの理を説く。世の水脈は濕氣の冷却して水となれるものに補はるゝがゆゑにこれより流れいづる河或ひは溢れ或ひは涸るゝことあれども樂園の河は神の直接に造りたまふ水より成り、たえず聖旨によつて補はるゝがゆゑにかゝることなし
一二七―一二九
樂園の水一の泉よりいで、二の川となりて左右に流る、その一はレーテといひて罪業を忘却せしむる力を有し他はエウノエ(淨、三三・一二七以下)といひて善行を想起せしむる力を有す
一三〇―一三二
【まづ味はれ】人まづこの二の河水を味はざればその功徳をうけて天に登ることあたはず、即ち人罪を忘れ徳を憶ふにあらざれば不朽の福を享くるあたはず
一三九―一四一
【人々】黄金時代をうたへる詩人等、特にオウィディウスを指す(『メタモルフォセス』一・八九以下參照)
【パルナーゾ】パルナッソス、詩神の山(淨、二二・六四―六參照)。パルナッソスの夢は詩人の想像を指す
一四二―一四四
【人】原文、人の根。即ち始祖アダム、エヴァ未だ罪を犯さずして樂園に住めるをいふ
オウィディウス曰。この頃(黄金時代)人|律法《おきて》によらず、自ら求めて信と正義を行へり
【春】オウィディウス曰。こゝにとこしへの春ありき……地は耕さずして諸※[#二の字点、1−2−22]の實《み》を生じたり
【ネッタレ】神々の飮料
オウィディウス曰。この時乳の川、ネッタレの川流る


    第二十九曲

ダンテ對岸のムテルダとともに流れに溯りてすゝみ、寺院の勝利を象《かた》どれる一の奇《く》しき行列を見る
一―三
【罪を】咎をゆるされ罪をおほはるゝ者は福なり(詩篇、三二・一)
四―六
【ニンファ】ニムフ、山川林野等に住む一種の女神。林の木蔭を歩むをもてその習ひとなせし傳説中のニムフの如く行歩しとやかに優なるをいへり
七―九
【さかのぼりて】右即ち南方に
一〇―一二
【岸】レーテの兩岸ともに左にまがれるなり
一九―二一
【現はるゝごとく】忽ち現はれ忽ち消ゆ
二二―二四
【エーヴァ】エヴァ、蛇に誘はれて禁斷の木の實をくらひしため夫アダムと共に樂園を逐はる(淨、八・九七―九參照)
二五―二七
【被物】服從。或ひは曰、無智と(創世記、三・五―六參照)
二八―三〇
エヴァ禁斷の果を食はざりせば樂園ながく人類の住む處となりて我もわが生れし日より死ぬる日にいたるまでかゝる福をうくるをえしものを
三一―三三
【樂しみの初穗】天上無窮の福を果實にたとふれば地上の樂園の美觀はその初物《はつもの》にあたる
【いよ/\大いなる喜び】ベアトリーチェにあふこと(淨、六・四六―八及び二七・一三六―八參照)
三七―四二
詩神ムーサ(ムーゼ)を呼びてその助けを乞へり
【處女等】ムーサ
【汝等のために】詩を愛するあまりに
【エリコナ】ボイオティア(希)の山にてムーサのとゞまるところ。アガニッペ及びヒッポクレネの泉ありて詩神等にさゝげらる
【ウラーニア】ムーサの一にて天の事を司る
四六―四八
類似の物遠距離にあるときはその差別を沒するがゆゑに視覺を欺きて燭臺をも黄金の木と思はしむれど近距離にあるときは個々の差別性を現はすがゆゑにしかすることなし
四九―五一
【力】認識の力
【オザンナ】(救ひたまへの義)神を讚美する詞(マタイ、二一・九等)
五二―五四
燭臺のこと默示録による、七の燈は神の七の靈なり(默示録、四・五)、聖靈の七の賜これよりいづ(七三行以下參照)
五五―五七
靈界の奧義は理性(ウェルギリウス)の解し能はざるところなるをいへり(淨、二七・一二七―九參照)
六四―六六
【民】二十四人の長老(八二―四行)
七三―七五
【流るゝ小旗】tratti pennelli 七の燭臺の光その餘光を空に殘して七色の線を現出せるさまあたかも細長き七の旗のごとし
或ひはこれを「運ぶ繪筆」と解する人あり
七六―七八
【日の弓】虹
【デリア】アルテミス、又はディアナ(月)の異名、その帶は月暈
七色の線は聖靈の七の賜即ち智慧、聰明、謀略、剛氣、知識、敬虔、及び敬畏をあらはす(『コンヴィヴィオ』四、二一・一〇五以下參照)
八二―八四
【二十四人の長老】默示録(四・四)に曰、寶座の上には二十四人の長老白き衣を着、頭に黄金の冠を戴きて坐せりと。二十四人の長老は舊約全書二十四卷を代表す、但しその分類につきては註釋者の説一ならず
【百合の花】その教義の醇なるをあらはす
八五―八七
【アダモの女子】女。天使ガブリエル及びエリザベツが聖母マリアを祝して、汝は女の中の福なる者なりといへることルカ傳に見ゆ(一・二八及び四二)、かの長老等また聖母を祝してかくうたひ且つその美をほめたゝへしなり
九一―九三
【光光に】一の星他の星に從つて動くがごとく
【四の生物】新約全書中の四福音書を代表す、縁葉の冠は希望をあらはす
九四―九六
【翼】六の翼は福音の世に傳播することはやきを表はし多くの目は福音の眞理のよく一切の事物を洞察するをあらはす。但し異説多し
【アルゴ】アルゴス。神話、ヘラの命によりてイノ(ゼウス神の慕へるニムフ)を守れる者、頭に百の眼あり、この者ヘルメスに殺されし後ヘラその眼をとりて孔雀の尾の飾となせり(『メタモルフォセス』一・五六八以下)
【生命あらば】孔雀の尾の球斑は死せるアルゴスの目なれども、この生物の翼の目は生くるアルゴスの目の如し
一〇〇―一〇二
【エゼキエレ】エゼキエル書(一・四以下)
一〇三―一〇五
【ジヨヴァンニ】默示録の作者として。エゼキエル、一・六には四の生物各※[#二の字点、1−2−22]四の翼ありといひ、默示録四・八には各※[#二の字点、1−2−22]六の翼ありといふ
一〇六―一〇八
【凱旋車】寺院の象徴。但しその兩輪の寓意明かならず、多くの註釋者これを新舊兩約の輪と解す
【グリフォネ】想像の動物、頭及び翼は鷲にしてその他は獅子なり、キリストを代表す、即ち鷲の天に翔り獅子の地に走るごとくキリストの神人兩性を兼備ふるをあらはせるなり
一〇九―一一一
七線即ち七の燭臺の後に流るゝ七の光の中、中央なるはグリフォネの兩翼の間を過ぎ三線はその左を三線はその右を過ぐ
一一二―一二四
【黄金】神性のしるし
【紅まじれる白】人性のしるし。雅歌五・一〇―一一に曰、わが愛する者は白く且つ紅にして萬人の長《をさ》なりその頭は精金のごとし
一一五―一一七
スキピオ・アフリカヌス(有名なるローマの大將)もカエサル・アウグストゥス(ローマ皇帝)もかく美しき車を用ゐてローマに凱旋を祝せしことなし
【日の車】太陽の火車
一一八―一二〇
フェトンテがかの火車をめぐらせしときのこと(地、一七・一〇六以下並びに註參照)
【テルラ】テルラ(即ち地)が火焔になやみその滅亡を免かれんためゼウス神に祈願をさゝげしをいふ、この祈り、オウィディウスの『メタモルフォセス』二・二七八以下にいづ
【奇しき罰】人の僭上を戒めんとてくだせる罰
一二一―一二三
【みたりの淑女】教理の三徳即ち愛(赤)、望(縁)、信(白)
一二七―一二九
或時は愛と望みともに信に導かれ、或時は信と望みともに愛にみちびかる、されど望みは愛または信仰より生るゝものなれば他の二徳を導くあたはず
【その】白或ひは赤の
一三〇―一三二
【よたりの淑女】四大徳即ち思慮、公義、剛氣、節制の象徴。紫の衣はその高貴なるをあらはす
【三の目ある者】思慮。その三の目にて過去現在及び未來を見る、思慮は他の三徳の本なればこの一團をみちびくなり
一三三―一三五
【ふたりの翁】使徒行傳とパウロの諸書とをその作者によりてあらはせるなり
一三六―一三八
【ひとり】使徒行傳の作者なる醫師ルカ(コロサイ、四・一四參照)
【自然が】ヒ
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