フ辱しめをうけて森より逐はる(オウィディウスの『メタモルフォセス』二・四〇一以下參照)
【ヴェーネレ】アプロディテ、戀の女神。こゝにては色慾
一三六―一三九
【かゝる】かく聖歌をうたひかつ淑徳の例を唱ふるによりてつひにその罪清まるにいたる
【その傷つひに】la piaga dassezzo 或ひは、最後の傷(即ち最後の圈に淨めらるゝ罪)と解する人あり


    第二十六曲

ダンテ兩詩人と倶になほ第七圈にありてグイード・グイニツェルリ及びアルナルド・ダニエルロと語る
一―三
【誡】淨、二五・一一八―二〇參照
四―六
【日】四月十二日の夕陽
七―九
【表徴】ダンテの影の落つるところ焔いよ/\赤く見ゆ、身に影あるは生者のしるしなり
一三―一五
色慾の罪を淨むる魂焔の外に出づるをえず
一六―一八
【渇】ダンテの生者なりや否やを知らんとするの願ひ
一九―二一
【エチオピア】エヂプトの南にある國。インドと同じく熱帶に屬す
二八―三〇
邪淫の罪人二群に分たる、一は淫慾を恣にせる者にて詩人等と方向を同じうし一は自然に背ける者(男色)にてこれと反對の方向に進む、二群相會ふとき彼と此と互ひに接吻してしかして直ちにわかるゝなり
三四―三六
【路と幸】路のよしあし食物の有無を互ひに尋ねんためなるべし
四〇―四二
【ソッドマ、ゴモルラ】ソドムとゴモラ、罪惡(殊に男色の罪)大なるによりて天火に燒かれし(創世記、一八・二〇及び一九・二四―五)パレスティナの町の名、邪淫の罰の第一例
【パシフェ】パシファエ、第二例(地、一二・一〇―一五並びに註參照)
四三―四五
ありうべからざることを限定していへり
【リフエ】古ヨーロッパの北部にありといはれし連山
【砂地】リビアの砂漠
四六―四八
【歌】淨、二五・一二一―三參照
【叫】貞節の例(淨、二五・一二七以下參照)
四九―五一
【請へる】一三行以下
五五―五七
熟める身を世に殘すは老いて後死せるにいひ、熟まざる身を世に殘すは若くして死せるにいふ
五八―六〇
【淑女】聖母マリア。マリア、人類のために上帝に請ふ(地、二・九四―六參照)
六一―六三
【天】エムピレオの天
七三―七五
【生を善くせんとて】神の恩寵の中に生きんとて。異本、死を善くせんとて
七六―七八
【チェーザル】ガッリアより凱旋せるカエサルにむかひてローマの兵士等、カエサル、ガッリアを從へニコメデス、カエサルを從へり云々と歌ひカエサルとビテュニア(小アジアの)王ニコメデスと不自然の關係あるを嘲りたりとの傳説によれるなり
七九―八一
【恥をもて】かく己が罪をいひあらはし自ら責めて焔と共に罪を淨む
八二―八四
【異性】原文、二形《ふたなり》。男色に對して異性間の淫行をいふ
八五―八七
【板】即ち模擬《まがひ》の牝牛(地、一二・一〇―一五)
【女】パシファエ
九一―九三
【グイード・グイニツェルリ】有名なるイタリア詩人にてダンテ以前第一と解せらる、ボローニアの人(十三世紀、但し生死の年並びに事蹟不詳、岩波文庫版『新生』一五七・一五八頁參照)
九四―九九
【リクルゴの憂ひ】ネメア王リュクルゴスの婢ヒュプシピュレ(イシフィレ)テバイ攻圍の諸王にランジアの泉のある處を教へんとて(淨、二二・一一二參照)行きたる間に草の上に殘されしリュクルゴスの幼兒蛇に噛まれて死せしかば王憂へ且つ怒りて將さにその婢を殺さんとす、ヒュプシピュレの二子トアス、エウネオスその己が母なるを知り走りゆきてこれを救ふ、ダンテは再び母にあへる子の喜びを再びかの詩人にあへる己が喜びにたとへしなり
ヒュプシピュレの物語はスタティウスの『テバイス』第五卷にいづといふ
【されど】ヒュプシピュレの子等は走り進みてその母を抱けるも我は敢てグイードを抱かず
一〇六―一〇八
【聞ける事】神恩によりて生きながら冥界を過行くこと(五五―六〇行)
【レーテ】忘却の川(淨、二八・二五以下參照)
一一二―一一四
【近世の習ひ】俗語を用ゐて詩を作ること(『新生』二五・二二以下參照)
一一五―一一七
【一の靈】アルナルド・ダニエルロ。プロヴァンスのトルヴァドル派の詩人、十二世紀の後半の人、その名聲詩の實質よりもダンテの讚辭に負ふところ多しといふ
一一八―一二〇
【レモゼスの人】グイロー・ドゥ・ボルネイユ。リモージ(フランス)の詩人(一二二〇年頃死)
一二四―一二六
【グイットネ】グイットネ・デル・ヴィーヴァ(淨、二四・五五―七註參照)
【多くの人】世評に盲從してグイットネを激稱することの誤りなるを見し人々
一二七―一二九
【僧院】天堂。キリストこゝに諸聖徒の長たり
一三〇―一三二
【パーテルノストロ】Paternostro(我等の父)キリストの教へたまへるキリスト教徒の祈り(マタイ、六・九以下及びルカ、一一・二以下)
【但し】主の祈りの中、我等を誘惑に遇はせず惡より拯ひ出し給へといふ最後の祈りは淨火門内の魂に必要なきなり(淨、一一・二二―四參照)
一三六―一三八
【指示されし】一一五―七行
【わが願ひ】わが心よろこびて彼の名を迎ふと告ぐれば、わが彼の名を聞くの願ひの切なるを告ぐれば
一三九―一四七
原文にてはアルナルドの答へみなその國語なるプロヴァンスの語にてしるさる
【この階の頂】即ち淨火の山巓
【權能】神の
【憶へ】憶ひ出でてわがために祈れ


    第二十七曲

詩人等猛火の中を過ぎて階を登るに闇既に地上をつゝみて登り終ること能はず、みな階上に臥して天明を待つ、ダンテは夢にレアを見、夜のあくるに及びて二詩人と倶に地上の樂園に到りこゝにウェルギリウスの最後の言を聞く
一―六
日沒近き時(四月十二日)を敍せり、淨火の日沒はイエルサレムの日出、インドの正午イスパニアの夜半にあたる
【ところ】聖都イエルサレム。太陽その他萬物の造主なる(ヨハネ、一・三參照)キリストが十字架にかゝり給ひしところ
【イベロ】イスパニアの川の名
【天秤】日白羊宮にあるがゆゑに夜(即ち夜半)は天秤宮にあり
【ガンジェ】ガンヂス、インドの川の名(淨、二・四―六註參照)
七―九
【心の清き者】マタイ、五・八
一〇―一五
【かなた】火のかなたにうたふ他の天使の歌(五五―六〇行參照)
【穴に埋らるゝ人】生埋にせらるゝ罪人(地、一九・四九―五一參照)
一六―一八
【人の體】火刑に行はるゝ罪人の體なるべし
二二―二四
【ジェーリオン】ジェーリオンの背に跨りて第七獄より第八獄にくだれる時(地、一七・七九以下參照)
三一―三三
【良心】師の言に從へと命ずる
三四―三六
【壁】二人の間を隔つるもの即ち火
三七―三九
ピュラモス(ピラーモ)とティスベはバビロニアの若き男女なり、互ひに深く愛せしかどその親結婚を許さざりしかば、ひそかに相謀り、家をいでて一大桑樹の下に會はんと約し、夜に入りて後ティスベまづかしこに到る、會※[#二の字点、1−2−22]獲物を喰へる一匹の獅子の水を飮まんとて來れるあり、ティスベ月光によりてはるかにこれを見、走りて一洞窟の中に避け獅子はティスベの地に落せし面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]をかみて去れり、後れて來れるピュラモス猛獸の足跡と血の附着せる面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]を見てティスべ既に殺さるとおもひ刀を拔いて自刃す、血高く飛びて桑樹に及びその白色の實深紅に變ず、洞窟より出で來れるティスベこの状を見るやその戀人の刀をとりてまたこれに死す、爾後桑樹常に深紅の實を結ぶにいたれりといふ(『メタモルフォセス』四・五五以下參照)
【目を開きて】洞窟より歸れるティスベ自刃せるピュラモスを見てしきりにその名を呼びまた己が名をこれに告ぐればピュラモス、ティスベの名をきくに及び瀕死の目をひらきてその戀人を見やがて再びこれを閉ぢたり
四三―四五
【一の果實に負くる】一個の果實に誘はれて先に爲さざりし事をも爲さんとする
四六―四八
【わかてる】この時まではウェルギリウス最初にスタティウス中にダンテ最後になりゐたり
四九―五一
【煮え立つ】火に熔けし。地上最も熱《あつ》しとなすものといふともかの火にくらぶれば冷水の如し
五八―六〇
【わが父に】キリストの言(マタイ、二五・三四)
【わが目をまばゆうし】原文、我に勝ち
六四―六六
【我は】日光身に遮られて影その前にあらはれしをいふ
七〇―七二
【一の色と】一面に暗く
【夜】夜の闇あまねく天を蔽はざるまに
或ひは。夜その處(天)をこと/″\く占め終らざるまに
七三―七五
【山の性】この山の特性により、夜登らんと欲するも能はざるをいふ(淨、七・四〇以下參照)
八八―九〇
【星】(複數)、註釋者曰、燦かなるは空清ければなり、大いなるはこの處天に近ければなりと
九一―九三
【我かく倒嚼み】見來りしことどもを囘想するなり
【即ち事を】曉方《あけがた》の夢しば/\未來の出來事を告ぐ(地、二六・七―一二並びに註參照)
九四―九六
明け近き頃を指す
【チテレア】キユテレイア、(アプロディテ、ウェヌス、ヴェネレの異名)即ち明《あけ》の明星
アプロディテ(戀の女神)はイオニア海中の一島キュテラ(今のチエリゴ)に住みしことあるによりてこの罪名を得たるなり
一〇〇―一〇二
【リーア】レア、ラバンの長女(創世記、二九・一六以下)。活動の生を代表す。花圈を造りて身を飾るは善行によりて徳を積むなり
地上の樂園は人生至上の幸福を表示す、しかしてこの幸福は人間各自の徳の活動に外ならず(『デ・モナルキア』三、一六・四三以下參照)
一〇三―一〇五
【鏡】聖徒の魂の鏡なる神
【ラケール】ラケル、ラバンの次女(創世記、二九・一六以下)。默想の生を代表す。人間の生活を實行と冥想の二生に分ちレア及びラケルをこれが象徴となすこと當時の教理に見ゆ
一〇六―一〇八
【美しき目を】己を神の鏡に映《うつ》して神のたへなるみわざを思ひめぐらすなり
一〇九―一一一
遠國の旅果てて歸る人わが森に近づくに從ひ歸思いよ/\切にして夜のあくるを待ちわぶ
【曉の光】splendori antelucani 日出前の光
一一五―一一七
ダンテがこの日地上の樂園にいたるをうるを告ぐ。行く道各※[#二の字点、1−2−22]なれども人皆人生の眞の幸福を求む、汝の願ひ今日成就し汝は地上の樂園に到りてこの幸福をうくるをうべし
一一八―一二〇
【賜】或ひは、しらせ
一二七―一二九
【火】一時の火は淨火の苦しみ、時至れば止む。永久の火は地獄の苦しみ、永劫に亙りて盡くることなし
【わが自から】理性は人を導いて現世の幸福に到達せしむることをうれどもすでにこの境に到達しさらに進んで永遠の幸福を享受せんと欲するものを導くをえず、これ信仰に屬することは天啓によらざれば知る能はざればなり
一三三―一三五
【日】四月十三日の旭日
【おのづから】種を要せずして(淨、二八・六七―九)
一三六―一三八
【目】ベアトリーチェの(地、二.一一五―七參照)
一四二
人罪を離れ、己が好むところに從ひて而して誤ることなく、その思ひその行よく正義に合するにいたれば、既に現世の覊絆を脱して自由自主の境界にあり、かゝる人はもはや理性の導者を要せずたゞその養ひ來れる力を活用し天啓の助けによりて進んで永遠の幸福を求むべきなり
【冠と帽】古、法王が帝王の首に冠と帽とを倶に戴かしめしことあるによりて、ウェルギリウスはダンテにその自主の權を認むることを告げしなり


    第二十八曲

ダンテ樂園に入り、レーテの川のかなたの岸に花を摘む一佳人を見、これとかたりてその教へを聞く
一―三
【林】地上の樂園。昔寺院の説に地球の東最高の山の巓にありとなせるもの、これを淨火の山上に置くはダンテの創意にいづ(ムーアの『ダンテ研究』第三卷一三四頁以下參照)
四―六
【岸】山頂の外側即ち詩人等が階を登り終れるところ
一〇―一二
【方】西方即ち淨火の山がその朝影をうつす方
一六―二一
【エオロ】アイオロス、風の神。鎖をもて諸※[#二の字点、1−2−22]の風を大いなる岩窟の中に繋ぎおき、時に應じてこれを海陸に放つ。『アエネイス
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