ナも切に感ずるところ
【ゼントゥッカ】四三行以下にいへる女の名
四三―四五
【女】ゼントゥッカの事傳はらず、一三一四年の頃ダンテ、ルッカに赴きしことあればその時この婦人にあひてその特に賞讚すべき者なるを知れるなるべし
【いまだ首※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]を】未だ嫁せず(一三〇〇年には)、嫁したる者※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]をもてその面をおほへばなり
【誹るとも】腐敗せるルッカの町(地、二一・三七―四二參照)も猶かの女ありてダンテの心を慰むるに足る
四九―五一
【新しき詩】十三世紀の後半におけるイタリアの二大詩派即ち(一)シケリア派とてプロヴァンス派を模せるもの及び(二)教訓派とて推理に傾けるものに對していへり
【戀を知る】Donne ch' avete intelletto d' amore『新生』にいづる第一カンツォネの起句
五五―五七
【公の證人】ヤーコポ・ダ・レンティニ。十三世紀の前半の人にてシチーリア派の詩人なり
【グイットネ】グイットネ・デル・ヴィーヴァ(一二九四年死)。アレッツオの人、教訓派の詩人にしてフラーテ・ゴデンティ(地、二三・一〇三參照)たり(淨、二六・一二四―六及び『デ・ウルガーリ・エーロクェンチアー』二・六・八五以下參照)
【節】障礙、即ち彼等をして新しき詩風に到達せしめざる
五八―六〇
【汝等】汝等フィレンツェ新詩派の人々
【口授者】愛。内部にひゞく愛の聲をそのまゝ歌となすをいふ
六一―六三
新舊二派の詩風の相違をこの事以外に求めんとすとも得べからず
六四―六六
【ニーロ】エヂプトのナイル川
【鳥】鶴
六七―六九
【願ひ】罪を淨めんとの
七三―七五
【聖なる群】罪を淨むる魂の群
七六―七八
【いつまで】わがいつまで世に生くるやは我知らず、されど郷土フィレンツェの禍ひを見ることなからんため一日も早く淨火の岸に歸るをねがへば、わが希ふ如く早くは死して世を去る能はざるべし
八二―八四
【罪の最も大いなるもの】フォレーゼ自身の兄弟なるコルソ・ドナーティを指す。コルソは黒黨の首領にしてフィレンツェの禍亂を釀せるもの、一三〇八年反逆の罪に問はれてこの町を逃げ出でしかど馬より落ちて敵に殺さる
【溪】地獄
八五―八七
ダンテの記事に從へばコルソはその乘馬に踏み殺されしなり
八八―九〇
【これらの輪未だ】未だ多くの年過ぎぬまに。輪は天球
九一―九三
【王國】淨火
九七―九九
【軍帥】師
一〇〇―一〇二
【わが目の】我のあきらかにその姿を見る能はざること恰もあきらかにその豫言をさとる能はざるに似たり
一〇三―一〇五
【めぐれる】まがれる路を
一〇六―一一〇
【民】多食の罪を淨むる民
【罪なき】vani(空しき望みにあやさるゝ)
一一五―一一七
【エーヴァのくらへる木】善惡を知るの木(創世記、二・九及び一七)、エヴァ蛇に欺かれてその果を喰へり(同、三・六)
【この上に】淨火の山巓即ち樂園に(淨、三二・三七以下)
【かの樹より】最初の罪最初の罰の記念なる知識の木の芽よりこの木出でてかの木と同じく貪慾をうながしかつ過食の罪の罰を告ぐ
一八〇―一二〇
【岸の邊】木の左即ち岩壁に近きところ
一二一―一二三
罰の第一例、ケンタウロス(チェンタウロ)
【詛の子等】ケンタウロス(地、一二・五五―七註參照)。神話によればイクシオンと雲(ネペレ)との間に生る、嘗てラピチ人の王。ペイリトゥスとヒッポダメイアとの婚筵の席に抱かれしが酒に醉ひて狼藉に及びテセウス及びその他の人々と戰ひて多くこれに死せり(地、一二・七〇―七二註參照)
【二重の】人と馬と(地、一二・八二―四參照)
一二四―一二六
第二例、ギデオン(ゼデオネ)に從ひて勝利の譽をわかつ能はざりしヘブライ人(士師、七・四以下)
【貪り飮みしため】原、飮むにあたりて己の弱きを示せるため。即ち慾を制する能はざるため膝を折り屈みて水を飮めるをいふ(士師、七・六)
一二七―一二九
【縁の一】路の左側
一三〇―一三二
【寛に】木を避けんとて互ひに身を寄せたりしも今は木の下を離れたれば身自由なり
一三三―一三五
【おぢおそるゝ】或ひは休める(或ひは馴れざる)獸のおそるゝ
一三六―一四一
【ひとりの者】天使
【折れよ】左に
一四二―一四四
【あたかも】目にて行手を見る能はざる人、聲をしるべに進むごとく。二詩人と並びて歩みゐたるダンテは天使の光を避けんとて彼等の後よりゆき天使の聲またはこの二詩人の足音をしるべとなせるをいふ
一四八―一五〇
【羽】天使羽をもてダンテを扇ぎてその額の上なるP字の一を削り去ること前の如し
【アムブロージヤ】神々の食料(神話)
一五一―一五四
【福なり】義に饑ゑ渇く者は福なり(マタイ、五・六)といへる聖句の中渇く[#「渇く」に白丸傍点]を第五圈の頌詠とし饑う[#「饑う」に白丸傍点]を第六圈の頌詠とせり、またこゝにては暴食の罪に適合せしめんため此句を自由に敷衍せるなり(淨、二二・四―六註參照)
第二十五曲
階を踏みて登る道すがら、スタティウスはウェルギリウスの請ひに應じてダンテのために生殖の作用、靈肉の結合、及び死後における靈の状態を論じ、かくて相共に第七圈に達すれば色慾の罪を淨むる一群の魂焔に包まれつゝ聖歌をうたひ且つ貞節の例を誦《ず》す
一―三
【日は】白羊宮にある太陽既に傾きて子午線を離れ金牛宮の星これに代る、金牛宮は白羊宮に次ぐ天の十二宮の一なれば時は今午後(四月十二日)二時の頃なりと知るべし
【夜】日と反對の天に於ては天秤宮にある夜(淨、二・四―六註參照)イエルサレムの子午線を離れ天秤に次ぐ天の十二宮の一なる天蠍宮の星これに代る(即ち午前二時の頃)
一三―一五
【消え】詩人等を累はすことを恐るゝため
一九―二一
【滋養を】肉體の榮養をうくる必要なき魂(第六圈の)の痩するをあやしみてかくいへり
二二―二四
【メレアグロ】メレアグロス。カリュドン王オイネウスとアルタイアの間の子、その生れし時運命の三神一木片を火に投じ、生兒の命數この木とともに盡くべしといひて去れり、アルタイア直ちに火を消してかの木片を祕藏せしかどメレアグロス成人の後二人の叔父を殺せしかば再びこれを火に投じてその兄弟のために仇を返せり(オウィディウスの『メタモルフォセス』八―二六〇以下參照)。榮養以外に人身を左右するの力あるをいふ
二五―二七
見ゆる魂は見えざる魂の鏡なるをいふ。硬[#「硬」に白丸傍点]きは解し難きなり軟[#「軟」に白丸傍点]きは解し易きなり
二八―三〇
【望むがまゝに】或ひは、汝の望みに關して
【傷を癒さしむ】疑ひを解かしむ。人の靈性の状態を論ずるは教理に關することなればウェルギリウスはこれをもてキリスト教徒の詩人スタティウスに委ぬるを善しとせり
三一―三三
【常世の状態】la veduta etterna 死後における魂の状態
異本、la vedetta etterna(永遠の刑罰、若くは永遠の存在者即神の刑罰)
三七―三九
【完全】完全なる血は情液となる血をいふ。榮養に必要なる血の如くに血脈を循環せざるもの
四三―四五
【自然の器】子宮。こゝにて女性の血液と合す
四六―四八
【堪ふる】作用《はたらき》を受くる(男の血の)
【行ふ】作用を與ふる(女の血に)。出る處[#「出る處」に白丸傍点]は心臟なり
五二―五四
この一聯及び以下の各聯に於てダンテはトマス・アクィナス(天、一〇・九七―九註參照)の神學大全(Summa Theologica)の説に基づきスタティウスの口を藉りて胎子の植物性(成長)より動物性(感觸)に進みさらに人間性(理智)に到達する次第を陳ぶ
【活動の力】男性の血の中なる
【異なるところ】草木の魂は生育を限度としてそれ以上に進む能はざれども人間の魂はさらに進んで他の性を備ふ、前者は既に發達の彼岸に達し後者はなほその道程にあり
五五―五七
【海の菌】海中の下等動物。動物性の初期に於てはその物未だ各種の官能を具備するにいたらずしてたゞ動き且つ感ずるのみ
五八―六〇
血が心臟内に得たる肢體構成の力は今や既に弘がりて胎兒の各部各機官に及ぶ
六一―六三
【人間】fante(物言ふ者の義)理性を備ふる者
【さとかりし者】註釋者曰、ダンテはこゝにアヴェルロエス(地、四・一四四)を指してかくいへりと
六四―六六
視るに目あり聽くに耳あるごとく理性に特殊の機官あるにあらざるがゆゑに彼此理性を人の魂より分散したり、されど個性を備へずして普遍に存在する理性人の生るゝと共にこれと合ひ人の死するとともにこれと離るゝものなりとせばこれ死後個人の魂の存在するを認めざるに等し
【靜智】possibile intelletto
アリストテレス(アヴェルロエスの註による)の區分せる智に二あり、一を靜智(intelletto passivo)一を動智(intelletto attivo)といふ、人は靜智即ち所謂possibile intellettoによりて外部の印象を受け動智によりて件の印象を理解し諸※[#二の字点、1−2−22]の觀念を構成するにいたる、動智は分離す非情にして不死なり、靜智は死滅す而して動智を缺くを許さず。その言に曰く、眞の智は分散の智なり、この智獨り永久不死なりと。アヴェルロエスこの説によりて謂へらく、動智は分たれず個性なし、その個人と合するは輔助的にして補成的に非ずと、こは實に個人の魂の不滅を否定するに近し、ダンテは誤りてアヴェルロエス靜智を魂より分散せりと思へるに似たり、アヴェルロエスの離合を云々せるはまことは動智のことなるを(ノルトン)
七〇―七二
【發動者】神。植物動物の二性は生殖の自然の作用より成る、ひとり理性は神が直接に人間に賦與したまふ靈なり
七三―七五
新しき靈は既に胎兒の中にはたらきつゝある植物動物の二魂を己と合して一魂となし三性を兼備ふるにいたる
【且つ生き】生は植物性に屬し感は動物性に屬し自覺(自ら己をめぐる[#「自ら己をめぐる」に白丸傍点])は人間性に屬す
七九―八一
【ラケージス】ラケシス、運命を司る三神(モイライ)の一(淨、二一・二五―七註參照)。その絲盡くる時とは人死する時をいふ
【人と神と】人に屬するものは肉體に屬する能力、神に屬するるのは天賦の靈能なり
八二―八四
肉に屬する能力(感觸)は死と共にその機官を失ふが故にひそみて働きをとゞめ、靈に屬する能力は肉の覊絆を脱するがゆゑに却つていよ/\活動す
八五―八七
【岸の一】罰せらるゝ魂はアケロンテの岸に(地、三・七〇以下)、救はるゝ魂はテーヴェレの岸に(淨、二・一〇〇以下)
【路】地獄か淨火か
八八―九〇
【構成の力】魂の中なる構成の力(四〇―四二行)は周圍の空氣にその作用を及ぼしその及ぼす状態並びに程度はあたかも生時肉體の上にその作用を及ばせると同じ、換言すれば魂はその周圍の空氣をもて生時と同樣の形状を構成す
九一―九三
【日の】原、他の者の。日光、雨滴に映じて虹生ずるごとく
一〇〇―一〇二
【これ】空氣より成れる新しき體
【影】ombra 又亡靈の義あればなり
一〇六―一〇八
【あやしとする事】第六圈の魂の痩すること
一〇九―一一一
【最後の曲路】第七圈。但し ultima tortura を最後の苛責と解する人あり
一一二―一一四
左側の岩壁より火焔噴出すれば右側の縁よりは風起りてこの火炎を追返し、縁に沿ひて一條の徑路をひらけり
【そこに一の】或ひは、これ(火焔)に己(縁)を離れ去らしむ
一二一―一二三
【こよなき憐憫の神】Summe Deus clementie 寺院にて土曜日の朝の禮拜にうたふ讚歌の起句にして貞節を祈り求むる詞この歌の中にあり
一二七―一二九
貞節の第一例、聖母
【われ夫を知らず】天使ガブリエルに答へたる處女マリアの詞(ルカ、一・三四)
一三〇―一三二
第二例、ディアーナ(アルテミス)。アルテミスはゼウスとレトの間に生れし獵の處女神なり
【とゞまり】異本、走り
【エリーチェ】カリスト。アルテミスに事へたる女神(ニムフ)の一。ゼウス
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