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汝が『テバイス』に詩神ムーサの一なるクレィオ(クリオ)の助けを求め且つその徳をほめたゝへし言葉をおもへば汝はその頃未だキリストの教へを信ぜざりしに似たり(ムーアの『ダンテ研究』第一卷二四四頁參照)
六一―六三
【日】天の光即ち神の導
【燭】地の光即ち人の教へ
【漁者】聖ピエートロ(ペテロ)。キリスト十二弟子の一、魚を漁《すなど》りまた人を漁る(マタイ、四・一八以下等)。これに從つて帆を揚ぐるはその信仰にならひてキリスト教徒となるをいふ
六四―六六
七三行とその意同じ
【パルナーゾ】パルナッソス、ポキス(ギリシアの)の山、詩神等の住むところ
七〇―七二
【世改まり】第四牧歌(五―七)にいづ、中古世に行はれし説に從ひ、この歌をもて救世主(新しき族[#「新しき族」に白丸傍点])降臨の豫言と見做せるなり
【人の古】第四牧歌にはサトウルヌスの王國とあり、世再び罪の涙なき黄金時代にかへるをいふ
七三―七五
【彩色】明細にかたること
七六―七八
【眞の信仰】キリスト教の信仰
【永久の國の使者等】天國の使者即ち使徒等
八二―八四
【ドミチアーン】ドミティアヌス。ヴェスパシアヌスの第二子、兄ティトウス(淨、二一・八二)の後を承けて八一年より九六年まで皇帝たり
八八―九〇
【わが詩に】我未だ『テバイス』第九卷を終へざるさきに
【テーべの流れ】『テバイス』第九卷に王アドラストスがギリシア人をみちびいてテバイ附近の二水イスメノスとアソポスに倒れることみゆ
九一―九三
【微温】怠慢の罪
九四―九九
【幸】キリスト教の信仰
【年へし】異本、友
【テレンツィオ】プブリウス・テレンティウス・アルフェル。ラテン詩人にて喜劇の作者なり(前一五九年死)
【チェチリオ】カエキリウス・スタティウス。ラテン詩人(前一六八年頃死)
【プラウト】ティトゥス・マッキウス・プラウトゥス。ラテン詩人(前一八四年死)。カエキリウスと同じく喜劇の作者なり
【ヴァリオ】ヴァルロ。プブリウス・テレンティウス・ヴァッロ・アタキヌス。ラテン詩人(前三七年頃死)
【何の地方】地獄の第何圈
一〇〇―一〇二
【ペルシオ】アウルス・ペルシウス・フラックス。ラテン諷刺詩人(三四―六二年)
【ギリシア人】ホメロス(地、四・八五以下參照)、詩人中の詩人
一〇三―一〇五
【第一の輪】地獄の第一圈即ちリムボ
【乳母等】ムーサ
【山】パルナッソス
一〇六―一〇八
【エウリピデ】エウリピデス。名高きギリシア詩人、悲劇の作者(前四八〇―四〇六年)
【アンティフォンテ】古のギリシア詩人、悲劇の作者(生死の年不詳)
【シモニーデ】シモニデス。ギリシア抒情詩人(前五五六―四六八年頃)
【アガートネ】アガトン、ギリシア悲劇詩人(前四四八―四〇一年頃)
【桂樹】淨、二一・八八―九〇註參照
一〇九―一一一
【アンティゴネ】テバイ王オイディプスとヨカステの間の女
【デイフィレ】アドラストス王の女にしてテュデウス(淨、三二・一三〇)の妻なり
【アルジア】アルゲイア。デイフィレの姉妹にしてポリュネイケスの妻なり
【イスメーネ】アンティゴネの妹、その生涯を不幸の中に終へたるもの
一一二―一一四
【女】ヒュプシピュレ(イシフィレ)(地、一八・九一―三參照)。海賊のためネメア王リュクルゴスに賣られてその婢となりゐたりしときテバイを攻むる諸王にランギア(ランジア)の泉(ネメアの近傍なる)を教ふ(淨、二六・九四以下參照)
【ティレジアの女】マント(地、二〇・五二以下)。但しマントは第八の地獄第四嚢にあり、もし「淨火」のこの部分を「地獄」のかの部分より後の筆とせば、この錯誤は全く不思議といふの外なし
【テーティ】テティス。アキレウスの母、海の女神
【デイダーミア】デイタメイア、アキレウスの戀人(地、二六・六一―三註參照)
一一八―一二〇
時は日出後四時過即ち午前十時過なり
【侍婢】時(淨、一二・七九―八一並びに註參照)
【轅】日の車の。第五の侍女轅の尖を上にむくるは第五時未だその半に達せざるなり
一二一―一二三
【縁】道の外側
一二四―一二六
【魂】スタティウス
一三六―一三八
【方】左方、岩壁に塞がる
一三九―一四一
【汝等は】貪慾の罪を淨むる魂等はかの果實を採ること能はず(淨、二四・一〇三以下參照)
一四二―一四四
節制の第一例。カナの婚筵に抱かれしマリア酒盡きたるを見てキリストに告ぐ(ヨハネ、二・一以下)。淨、一三・二八―三〇にはこれを慈愛の例としてあげたり
【今汝等の】汝等のために罪の赦しを神に乞ふ
一四五―一四七
第二例。昔のローマの婦人は酒を用ゐざりきといふ
第三例。豫言者ダニエルがバビロニア王ネブカデネザルの與ふる食物と酒を拒めること(ダニエル、一・三以下)
一四八―一五〇
第四例。黄金時代の自然生活(『メタモルフォセス』一・八九以下參照)
【ネッタレ】神話の神々の飮料
一五一―一五三
第五例。バプテスマのヨハネ(マタイ、三・四)
一五四
【聖史】マタイ、一一・一一に曰く、女の産みたる者のうち、バプテスマのヨハネより大いなる者は起らざりき


    第二十三曲

詩人等第六圈にて、貪慾の罪を淨むる一群の靈にあふ、その一フォレーゼ・ドナーティ、ダンテをみとめてこれと語り、かつ大いにフィレンツェの婦人を罵る
一―三
聲葉の中よりいでしをあやしみてこれに目をこらせしダンテの姿は恰も鳥を捕ふる者の獲物を求めて木の間をうかがひ見るごとし
四―六
【時】淨火歴程のために定め與へられし時間
一〇―一二
【主よわが唇を】主よわが唇をひらきたまへ、さらばわが口汝の讚美をあらはさむ(詩篇五一・一五)
第五一篇は詩篇中改悔の七篇と稱せらるゝものの一にてウルガータにては Miserere mei(我を憐みたまへ)にはじまる(淨、五・二二―四參照)。こゝにその第十五節をえらべるは昔ロをもて罪を犯せるに因みてなり
【喜びとともに】その信仰をよろこび、その悲哀に同情をよせしなり
一三―一五
【その負債の】その罪を淨むるならむ
一九―二一
【もだし】はや木と水を散れたれば(六七行以下參照)
二五―二七
【エリシトネ】エリュシクトン、神話。テッサリアの人、斧をデメテルの森に入れしためこの神の罰をうけて飽くなきの饑ゑになやまされ遂に己が身を啖ふ(オウィディウスの『メタモルフォセス』八・七三八以下參照)
二八―三〇
【マリア】イエルサレム包圍の際(七〇年)饑餓に迫りて己が子を喰へりといふ女の名
【艮】饑ゑに苦しめるユダヤ人
三一―三三
【OMO】(人)、人の顏に人[#「人」に白丸傍点]の字あらはるとの説をなす者あればなり、この説に從へば眼は左右のOにあたり鼻と眉のあたりは中央のMにあたる、肉痩するに從ひてMいよ/\いちじるし
四〇―四二
【こは】汝をこゝに見るを得るは
四三―四五
その何人なるやは姿を見て知るをえざりしも聲をきゝて知るをえたり
四六―四八
【火花】聲
【フォレーゼ】フォレーゼ・ドナーティ(一二九六年七月死)。フィレンツェの人にてダンテの妻ゼムマの遠縁にあたれり、そのダンテと往復せる短詩(合せて六篇)ムーアの『ダンテ全集』(一七九―八〇頁)にいづ、詩中にビッチ・ノヴェルロとあるは即ち彼の異名なり
六一―六三
【永遠の思量】天意
七三―七五
神の義に從ひ神と和するの願ひあるによりてキリストは我等のためによろこびて十字架にかゝりたまへり、我等もまたこの願ひあればよろこびて木の下を過ぐ
【エリ】エリ、エリ、レマ、サバクタニ(わが神わが神何ぞ我を棄てたまへるや)。十字架上のキリストの叫び(マタイ、二七、四六)にしてその苦しみ最も大なりし時をあらはす
七九―八一
苦し罪を犯す能はざるにいたりて、換言すれば死に臨みて、はじめて悔い改めしならば何ぞ淨火の門外にとゞまらずして
【嫁がしむる】歸らしむる
【善き憂ひ】改悔
八二―八四
【時の時を補ふ】死に臨みて悔ゆる者その世に享けし齡と同じ年數を淨火の門外に過すこと(淨、四・一三〇以下及び一一・一二七以下參照)
八五―八七
わが妻ネルラわがために歎き且つ祈れるによりて我はかく速かにこゝにわが罪を淨むるをえたり
【甘き茵※[#「くさかんむり/陳」、第3水準1−91−23]】うれしき苦しみ
八八―九〇
【山の腰】門外の淨火。魂この處にて門内に入るの時到るを待つ
【他の諸※[#二の字点、1−2−22]の圓】この下の五圈
九四―九六
【バルバジア】サルディニア島の一山地にて中古蠻民住み風紀紊れし處なりといふ
【バルバジアより】トスカーナのバルバジアともいふべきフィレンツェより
九七―九九
【今を昔となさざる】今より遠からざる
一〇〇―一〇二
風紀興振の命寺院より出でしをいふ、されどいづれの時の事を指せるや不明なり
一〇三―一〇五
【サラチーノ】サラセン人、異教徒
【靈または】寺院の禁制または法律上の制裁なきため
一〇六―一〇八
【彼等の爲に備ふるもの】彼等の上にくだす禍ひ。一三〇〇年以後、種々の災害フィレンツェに起れること當時の記録に殘れども特にその中のいづれを指していへるやは知りがたし
一〇九―一一一
【ナンナ】nanna 母や子守等が嬰兒を眠らしめんとて ninna nanna ニンナ、ナソナとうたふ歌
一一二―一一四
【日を】これらの魂皆汝の影を見て生者のこゝにあるをあやしむ
一一五―一一七
【汝の我と我の汝と】ダンテがフォレーゼと共に地上の樂しみを求めしこと
一一八―一二〇
【往日】四月八日。今は十二日なり
【姉妹】日(アポロン)の姉妹なる月(アルテミス)
【圓く】七日の夜の滿月(地二〇・一二七參照)
一二一―一二三
【闌けし夜】地獄の闇(淨、一・四三―五參照)
【まことの死者】肉體を失ひ且つまた神の恩惠を失へる者
一二七―一二九
【いふ】地、一・二二以下參照


    第二十四曲

ダンテなほフォレーゼとかたり、その多くの侶の名とその豫言を聞きて後、二詩人とともに第二の果樹のほとりにいたりて食慾の罪の罰せられし例をきき、さらに進みて第七圈に通ずる階《きざはし》の下に達す
四―六
【再び死にし】死後魂いたく痩せ衰へてあるかなきかのさまなるをいふ
【目の坎】深く窪める眼
七―九
【彼若し】前曲の終りの詞を次ぎていへり。スタティウスもし獨りならばなほ速かに歩むべきも、ウェルギリウスと共に旅せんとて恐らくはその足をおそくするならむ
一〇―一二
【ピッカルダ】フォレーゼの姉妹
一三―一五
【オリムポ】オリュムポス。ギリシアのテッサリアにある山にて神話の神々の住むところ、轉じて天。ピッカルダは月天にあり(天、三・三四以下參照)
一六―一八
【我等の姿】饑ゑてやつれてありし日の面影なければ、みる目に誰と知りがたし
一九―二一
【ボナジユンタ】ボナジユンタ・オリビッチアーニ・デーリ・オヴェラルディ。ルッカの人(十三世紀の後半)にてシケリア派の詩人なり(『デ・ウルガーリ・エーロクェンチアー』一・一三參照)
二二―二四
【寺院を】寺院を抱くは寺院の夫即ち法王(地、一九・五五―七參照)となるをいふ、法王マルティヌス四世を指す、一二八一年選ばれて法王となり一二八五年に死す
【トルソ】パリの西南にある町。マルティヌスはトルソに生れしにあらざれどもこの地の寺院に僧官たりしフランス人なれば斯く
【ボルセーナ】ヴィテルボの北にある湖水。古註曰、マルティヌス四世は極めて口腹の慾を恣にせる人にて就中ボルセーナ産の鰻を好みこれをヴェルナッチャ酒(味醂の類)に醉はしめて後燒きて喰へりと
二八―三〇
【ウバルディーン・デラ・ピーラ】(ムゼルロなるピーラ城の名なとれり)カルディナレ・オッタヴィアーノ(地、一〇・一一八―二〇)の兄弟にしてピサの大僧正ルッジエーリ(地、三三―一三―五)の父なりといふ
【ボニファーチヨ】ボニファチオ・デイ・フィエースキ。一二七四年より同九五年までラヴェンナの大僧正たりし者
三一―三三
【マルケーゼ】フォルリの名族、十三世紀の後半の人
【便宜】フォルリの美酒を指す
三七―三九
【ところ】口の中、即ち饑渇の苦しみを
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