ず 九七―九九
この小さき島のまはりのいと/\低きところ浪打つかなたに、藺ありて軟《やはら》かき泥《ひぢ》の上に生《お》ふ 一〇〇―一〇二
この外には葉を出しまたは硬くなるべき草木《くさき》にてかしこに生を保つものなし、打たれて撓《たわ》まざればなり 一〇三―一〇五
汝等かくして後こなたに歸ることなかれ、今出づる日は汝等に登り易き山路《やまぢ》を示さむ。 一〇六―一〇八
かくいひて見えずなりにき、我は物言はず立ちあがりて身をいと近くわが導者によせ、またわが目を彼にそゝげり 一〇九―一一一
彼曰ふ。子よ、わが歩履《あゆみ》に從へ、この廣野《ひろの》こゝより垂れてその低き端《はし》におよべばいざ我等|後《うしろ》にむかはむ。 一一二―一一四
黎明《あけぼの》朝の時に勝ちてこれをその前より走《わし》らしめ、我ははるかに海の打震ふを認めぬ 一一五―一一七
我等はさびしき野をわけゆけり、そのさま失へる路をたづねて再びこれを得るまでは 一一八―一二〇
たゞ徒《いたづら》に歩むことぞと自ら思ふ人に似たりき
露日と戰ひ、その邊《わたり》の冷かなるためにたやすく消えざるところにいたれば 一二一―一二三

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