、我は汝のマルチアの貞節《みさを》の目ある獄《ひとや》より來れり 七六―
あゝ聖なる胸よ、汝に妻とおもはれんとの願ひ今なほ彼の姿にあらはる、されば汝彼の愛のために我等を眷顧《かへり》み ―八一
我等に汝の七《なゝつ》の國を過ぐるを許せ、我は汝よりうくる恩惠《めぐみ》を彼に語らむ、汝若し己が事のかなたに傳へらるゝをいとはずば。 八二―八四
この時彼曰ふ。われ世にありし間、マルチアわが目を喜ばしたれば、その我に請へるところ我すべてこれをなせり 八五―八七
今彼禍ひの川のかなたにとゞまるがゆゑに、わがかしこを出でし時立てられし律法《おきて》に從ひ、またわが心を動かすをえず 八八―九〇
されど汝のいふごとく天の淑女の汝を動かし且つ導くあらば汝そがために我に求むれば足るなり、何ぞ諛言《へつらひごと》をいふを須《もち》ゐん 九一―九三
されば行け、汝一|本《もと》の滑かなる藺《ゐ》をこの者の腰に束《つか》ねまたその顏を洗ひて一切の汚穢《けがれ》を除け 九四―九六
霧のために※[#「目+毛」、第3水準1−88−78]《かす》める目をもて天堂の使者《つかひ》の中なる最初の使者の前にいづるはふさはしから
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