中にありて汝を愛せる如く今|紲《きづな》を離れて汝を愛す、此故に止まらむ、されど汝の行くは何の爲ぞや。 八八―九〇
我曰ふ。わがカゼルラよ、我のこの羈旅《たびぢ》にあるは再びこゝに歸らんためなり、されど汝何によりてかく多く時を失へるや。 九一―九三
彼我に。時をも人をも心のまゝにえらぶもの、屡※[#二の字点、1−2−22]我を拒みてこゝに渡るを許さゞりしかどこれ我に非をなせるにあらず 九四―九六
その意正しき意より成る、されど彼はこの三月《みつき》の間、乘るを願ふものあれば、うけがひて皆これを載せたり 九七―九九
さればこそしばしさき、我かのテーヴェロの水|潮《うしほ》に變る海の邊《ほとり》にゆきたるに、彼こころよくうけいれしなれ 一〇〇―一〇二
彼今翼をかの河口《くち》に向く、そはアケロンテの方《かた》にくだらざるものかしこに集まる習ひなればなり。 一〇三―一〇五
我。新しき律法《おきて》汝より、わがすべての願ひを鎭むるを常とせし戀歌の記憶またはその技《わざ》を奪はずば 一〇六―一〇八
肉體とともにこゝに來りて疲《つかれ》甚しきわが魂を、ねがはくは少しくこれをもて慰めよ。 一〇九―一
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