たにせること幾度《いくたび》ぞや 一四五―一四七
汝若しよく記憶をたどりかつ光をみなば、汝は自己《おのれ》があたかも病める女の軟毛《わたげ》の上にやすらふ能はず、身を左右にめぐらして 一四八―一五〇
苦痛《いたみ》を防ぐに似たるを見む 一五一―一五三
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第七曲
ふさはしきうれしき會釋《ゑしやく》三度《みたび》と四度《よたび》に及べる後、ソルデルしざりて汝は誰なりやといふ 一―三
登りて神のみもとにいたるを魂等未だこの山にむかはざりしさきに、オッタヴィアーンわが骨を葬りき 四―六
我はヴィルジリオなり、他《ほか》の罪によるにあらずたゞ信仰なきによりてわれ天を失へり。導者この時斯く答ふ 七―九
ふと目の前に物あらはるればその人あやしみて、こは何なり否あらずといひ、信じてしかして疑ふことあり 一〇―一二
かの魂もまたかくのごとくなりき、かくて目を垂れ、再びうや/\しく導者に近づき、僕《しもべ》の抱くところをいだきて 一三―一五
いひけるは。あゝラチオ人《びと》の榮《さかえ》よ――汝によりて我等の言葉その力の極《きはみ》をあらはせり――あゝわが故郷《ふるさと》の永遠《とこしへ》の實よ 一六―一八
我を汝に遭はしめしは抑※[#二の字点、1−2−22]何の功徳何の恩惠《めぐみ》ぞや我若し汝の言《ことば》を聞くの幸《さいはひ》をえば請ふ告げよ汝地獄より來れるかそは何の圍《かこひ》の内よりか。 一九―二一
彼これに答ふらく。我は悲しみの王土の中《うち》なる諸※[#二の字点、1−2−22]の獄《ひとや》をへてこゝに來れり、天の威力《ちから》我を動かしぬ、しかしてわれこれとともに行く 二二―二四
爲すによるにあらず爲さざるによりて我は汝の待望み我の後れて知るにいたれる高き日を見るをえざるなり 二五―二七
下に一の處あり、苛責のために憂きにあらねどたゞ暗く、そこにきこゆる悲しみの聲は歎息《ためいき》にして叫喚《さけび》にあらず 二八―三〇
かしこに我は、人の罪より釋《と》かれざりしさきに死の齒に噛まれし稚兒《をさなご》とともにあり 三一―三三
かしこに我は、三の聖なる徳を着ざれど惡を離れ他《ほか》の諸※[#二の字点、1−2−22]の徳を知りてすべてこれを行へる者とともにあり 三四―三六
されど汝路をしりかつ我等に示すをうべくば、請ふ我等をして淨火のまことの入口にとくいたるをえせしめよ。 三七―三九
答へて曰ふ。我等は定まれる一の場所におかるゝにあらず、上《のぼ》るも※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》るも我これを許さる、われ導者となりて汝と倶に 四〇―
わが行くをうる處までゆくべし、されど見よ日は既に傾きぬ、夜登る能はざれば、我等うるはしき旅宿《やどり》を求めむ ―四五
右の方《かた》なる離れし處に魂の群《むれ》あり、汝|肯《うけが》はば我は汝を彼等の許に導かむ、汝彼等を知るを喜びとせざることあらじ。 四六―四八
答へて曰ふ。いかにしてこの事ありや、夜登らんとおもふ者は他《ほか》の者にさまたげらるゝかさらずば力及ばざるため自ら登る能はざるか。 四九―五一
善きソルデルロ指にて地を擦《す》りていふ。見よ、この線《すぢ》をだに日入りて後は汝越えがたし 五二―五四
されど登《のぼり》の障礙《しやうげ》となるもの夜の闇のほかにはあらず、この闇|能力《ちから》を奪ひて意志をさまたぐ 五五―五七
天涯晝をとぢこむる間は、汝げに闇とともにこゝをくだりまたは迷ひつゝ山の腰をめぐるをうるのみ。 五八―六〇
この時わが主驚くがごとくいひけるは。さらば請ふ我等を導き、汝の我等に喜びてとゞまるをうべしといへる處にいたれ。 六一―六三
我等少しくかしこを離れしとき、我は山の窪みてあたかも世の大溪《おほたに》の窪むに似たるところを見たり 六四―六六
かの魂曰ふ。かなたに山腹のみづから懷《ふところ》をつくるところあり、我等かしこにゆきて新たなる日を待たむ 六七―六九
忽ち嶮《けは》しく忽ち坦《たひらか》なる一條の曲路我等を導いてかの坎《あな》の邊《ほとり》、縁《ふち》半《なかば》より多く失せし處にいたらしむ 七〇―七二
金、純銀、朱、白鉛、光りてあざやかなるインドの木、碎けし眞際《まぎは》の新しき縁の珠も 七三―七五
各※[#二の字点、1−2−22]その色を比ぶれば、かの懷の草と花とに及ばざることなほ小の大に及ばざるごとくなるべし 七六―七八
自然はかしこをいろどれるのみならず、また千の良《よ》き薫《かをり》をもて一の奇しきわけ難き香《にほひ》を作れり 七九―八一
我見しにこゝには溪のため外部《そと》よりみえざりし多くの魂サルウェ・レーギーナを歌ひつゝ縁草《あをくさ》の上また花の上に坐しゐたり 八二―八四
我等をともなへるマントヴァ人《びと
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