方《かた》をながむる魂あり、かの者我等にいと近き路を教へむ。 五八―六〇
我等これが許にいたりぬ、あゝロムバルディアの魂よ、汝の姿は軒昂《けだか》くまたいかめしく、汝の目は嚴《おごそか》にまた緩《ゆるや》かに動けるよ 六一―六三
かの魂何事をもいはずして我等を行かしめ、たゞ恰もやすらふ獅子のごとく我等を見たり 六四―六六
されどヴィルジリオこれに近づき、登るにいと易きところを我等に示さむことを請へるに、その問ひに答へず 六七―六九
たゞ我等に我等の國と状態《ありさま》をたづねき、このときうるはしき導者マントヴァ……といひかくれば、己ひとりを世とせし魂 七〇―七二
立ちて彼のかたにむかひてそのゐし處をはなれつゝ、あゝマントヴァ人よ、我は汝の邑《まち》の者ソルデルロなりといひ、かくて二者《ふたり》相抱きぬ 七三―七五
あゝ屈辱のイタリアよ、憂ひの客舍、劇しき嵐の中の水夫《かこ》なき船よ、汝は諸州《くに/″\》の女王にあらずして汚れの家なり 七六―七八
かのたふとき魂は、たゞ己が生れし邑《まち》の麗しき名のよばるゝをきき、かく歡びてこの處に同郷人《ふるさとびと》を迎へしならずや 七九―八一
しかるに今汝の中には生者《しやうじや》敬ひをやむる時なく、一の垣一の濠に圍まるゝもの相互《あひたがひ》に噛むことをなす 八二―八四
幸《さち》なきものよ、岸をめぐりて海の邊《ほとり》の地をたづね、後汝の懷《ふところ》を見よ、汝のうちに一なりとも平和を樂しむ處ありや 八五―八七
かのユスティニアーノ汝のために銜《くつわ》を調《とゝの》へしかど、鞍空しくば何の益あらむ、この銜なかりせば恥は却つて少《すく》なかるべし 八八―九〇
あゝ眞心《まごゝろ》をもて神を崇《あが》めかつチェーザレを鞍に載すべき(汝等もしよく神の言《ことば》をさとりなば)人々よ 九一―九三
汝等手綱をとれるよりこのかた、拍車によりて矯《た》めらるゝことなければ、見よこの獸のいかばかり悍《たけ》くなれるやを 九四―九六
あゝドイツ人《びと》アルベルトよ、汝は鞍に跨るべき者なるに、この荒き御しがたき獸を棄つ 九七―九九
ねがはくは正しき審判《さばき》星より汝の血の上に降り、奇《くす》しく且つ顯著《あらは》にて、汝の後を承《う》くる者恐れをいだくにいたらんことを 一〇〇―一〇二
そは汝も汝の父も貪焚《むさぼり》のためにかの地に抑《と》められ、帝國の園をその荒るゝにまかせたればなり 一〇三―一〇五
來りて見よ、思慮なき人よ、モノテッキとカッペルレッティ、モナルディとフィリッペスキを、彼等既に悲しみ此等はおそる 一〇六―一〇八
來れ、無情の者よ、來りて汝の名門の虐《しひた》げらるゝを見、これをその難より救へ、汝またサンタフィオルのいかに安全《やすらか》なるやをみん 一〇九―一一一
來りて汝のローマを見よ、かれ寡婦《やもめ》となりてひとり殘され、晝も夜も泣き叫びて、わがチェーザレよ汝何ぞ我と倶にゐざるやといふ 一一二―一一四
來りて見よ、斯民《このたみ》の相愛することいかに深きやを、若し我等を憐れむの心汝を動かさずば、汝己が名に恥ぢんために來れ 一一五―一一七
また斯く言はんも畏《かしこ》けれど、あゝいと尊きジョーヴェ、世にて我等の爲に十字架にかゝり給へる者よ、汝正しき目を他《ほか》の處にむけたまふか 一一八―一二〇
はたこは我等の全く悟る能はざる福祉《さいはひ》のためいと深き聖旨《みむね》の奧に汝の設けたまふ備《そなへ》なるか 一二一―一二三
そは專横の君あまねくイタリアの諸邑《まち/\》に滿ち、匹夫朋黨に加はりてみなマルチェルとなればなり 一二四―一二六
わがフィオレンツァよ、汝この他事《あだしこと》をきくともこは汝に干係《かゝはり》なければまことに心安からむ、汝をこゝにいたらしむる汝の民は讚むべきかな 一二七―一二九
義を心に宿す者多し、されど漫りに弓を手にするなからんためその射ること遲きのみ、然るに汝の民はこれを口の端《はし》に置く 一三〇―一三二
公共《おほやけ》の荷を拒むもの多し、然るに汝の民は招かれざるにはやくも身を進めて我自ら負はんとさけぶ 一三三―一三五
いざ喜べ、汝しかするは宜《うべ》なればなり、汝富めり、汝泰平なり、汝|智《さと》し、わがこの言《ことば》の僞りならぬは事實よくこれを證《あかし》す 一三六―一三八
文運かの如く開け、且つ古の律法《おきて》をたてしアテーネもラチェデーモナも、汝に比《くら》ぶればたゞ小《さゝ》やかなる治國の道を示せるのみ 一三九―
汝の律法《おきて》の絲は細《こまや》かなれば、汝が十月に紡《つむ》ぐもの、十一月の半《なかば》まで保たじ ―一四四
げに汝が汝のおぼゆる時の間に律法《おきて》、錢《ぜに》、職務《つとめ》、習俗《ならはし》を變へ民を新
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