〇六―一〇八
幹のなほ我等にいふことあらんを思ひて我等心をとめゐたるに、この時さわがしき物音起り、我等の驚かされしこと 一〇九―一一一
さながら野猪《しゝ》と獵犬と己が立處《たちど》にむかふをさとり、獸と枝との高き響きを聞くものの如くなりき 一一二―一一四
見よ、左に裸なる掻き裂かれたるふたりの者あり、あらゆる森のしげみをおしわけ、逃げわしることいとはやし 一一五―一一七
さきの者、いざ疾《と》く、死よ、疾くと叫ぶに、ほかのひとりは己がおそくして及ばざるをおもひ、ラーノ、トッポの試藝《しあひ》に 一一八―
汝の脛《はぎ》はかく輕くはあらざりしをとさけび、呼吸《いき》のせまれる故にやありけむ、その身をとある柴木と一團《ひとつ》になしぬ ―一二三
後《うしろ》の方《かた》には飽くことなく、走ること鏈《くさり》を離れし獵犬にひとしき黒き牝犬林に滿ち 一二四―一二六
かの潛める者に齒をくだしてこれを刻み、後そのいたましき身を持ち行けり 一二七―一二九
この時導者わが手をとりて我をかの柴木のほとりにつれゆけるに、血汐滴たる折際《をれめ》より空しく歎きていひけるは 一三〇―
あゝジャーコモ・ダ・サ
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