の腕《かひな》をもてわが頸をいだき顏にくちづけしていひけるは、憤りの魂よ、汝を孕める女は福《さいはひ》なるかな 四三―四五
かれは世に僭越なりしものにてその記憶を飾る徳なきがゆゑに魂ここにありてなほ猛し 四六―四八
それ地上現に大王の崇《あがめ》をうけしかも記念《かたみ》におそるべき誹りを殘して泥《ひぢ》の中なる豚の如くこゝにとゞまるにいたるものその數いくばくぞ 四九―五一
我、師よ、我等池をいでざる間に、願はくはわれ彼がこの羹《あつもの》のなかに沈むを見るをえんことを 五二―五四
彼我に、岸汝に見えざるさきにこの事あるべし、かゝる願ひの汝を喜ばすはこれ適はしきことなればなり 五五―五七
この後ほどなく我は彼が泥《ひぢ》にまみれし民によりていたく噛み裂かるゝをみぬ、われこれがためいまなほ神を讚め神に謝す 五八―六〇
衆皆叫びてフィリッポ・アルゼンティをといへり、怒れるフィレンツェの魂は齒にておのれを噛めり 六一―六三
こゝにて我等彼を離れぬ、われまた彼の事を語らじ、されど此時|苦患《なやみ》の一聲《ひとこゑ》わが耳を打てり、我は即ち前を見んとて目をみひらけり 六四―六六
善き師曰ひける
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