三
子の慈愛《いつくしみ》、老いたる父の敬ひ、またはペネローペを喜ばしうべかりし夫婦《めをと》の愛すら 九四―九六
世の状態《さま》人の善惡を味はひしらんとのわがつよきねがひにかちがたく 九七―九九
我はたゞ一艘の船をえて我を棄てざりし僅かの侶《とも》と深き濶き海に浮びぬ 一〇〇―一〇二
スパニア、モロッコにいたるまで彼岸をも此岸をも見、またサールディニア島及び四方この海に洗はるゝほかの島々をもみたり 一〇三―一〇五
人の越ゆるなからんためエルクレが標《しるし》をたてしせまき口にいたれるころには 一〇六―
我も侶等もはや年老いておそかりき、右にはわれシビリアをはなれ左には既にセッタをはなれき ―一一一
我曰ふ、あゝ千萬《ちよろづ》の危難《あやふき》を經て西にきたれる兄弟|等《たち》よ、なんぢら日を追ひ 一一二―
殘るみじかき五官の覺醒《めざめ》に人なき世界をしらしめよ、汝等|起原《もと》をおもはずや
汝等は獸のごとく生くるため造られしものにあらず、徳と知識を求めんためなり ―一二〇
わがこの短き言《ことば》をきゝて侶は皆いさみて路に進むをねがひ、今はたとひとゞむとも及び難しとみえたりき
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