技《みわざ》によりて煮え、岸いたるところこれに塗《まみ》れぬ 一六―一八
我之を見れども、煮られて浮ぶ泡の外には一としてその中に見ゆる物なく、たゞこの脂の一面に膨れいでゝはまた引縮むさまをみるのみ 一九―二一
われ目を凝らして見おろしゐたるに、あれ見よあれ見よといひてわが導者わが立處《たちど》より我をひきよす 二二―二四
しきりに見んことをねがへども、そは逃げて避くべきものにしあれば、俄におそれていきほひ挫《くじ》け 二五―
見るまも足を止めざる人の如く、われ身を返して後方《うしろ》をみしに石橋をわたりてはせきたれる一の黒き鬼ありき ―三〇
あゝその姿猛きこといかばかりぞや、翼ひらかれ足かろきその身の振舞あら/\しきこといかばかりぞや 三一―三三
尖りて高きその肩には、ひとりの罪人《つみびと》の腰を載せ、その足頸《あしくび》をかたく握れり 三四―三六
橋の上よりいふ、あゝマーレブランケよ、見よ聖チタのアンチアンの一人を、汝等彼を沈むべし、我は再びかの邑《まち》に歸らん 三七―
かの處には我よくかゝる者を備へおきたり、さればボンツーロの他《ほか》、汚吏ならぬものなく、否も錢のために然りに
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