rere mei「我を憐みたまへ」に始まる)はダヴィデがウリアとその妻とに對する行爲を悔いて作れるものと信ぜられたればなり
【曾祖母たりし女】ルツ(ルツ、一・四以下)。王ダヴィデの曾祖父なるボアズ(ルツ、四・二一―二)の妻なり
一六―一八
【花のすべての髮】天上の薔薇のすべての花片
【分く】分岐線となるをいふ
天上の薔薇の花片(天、三〇・一一二―四註參照)すべて縱に二等分せらる、その一方の分岐線は最高の花片即ち最大の圓形の列より起りて最低の花片即ち光に接する最小の圓形の列に終り、他方の分岐線はこれと相對す、この二大部の中その一の上半即ち既に空席なきところにはキリスト以前の諸聖徒坐し他の一の上半即ち未だ空席あるところにはキリスト以後の諸聖徒坐す、而して下半は二大部に通じて小兒の席と定めらる、また二の分岐線の中その一即ち聖母より起るものは凡てヘブライ人の女達の席より成り、他の一即ち洗禮者ヨハネより起るものは凡て彼の事業を完うせんとつとめし聖者達の席より成る
一九―二一
【クリストを見し】キリストの出現を豫め信じゐたりし人々と、出現の後これを信ぜる人々とその信ずるさまの異るに從つて聖徒の列をわかつなり
二二―二四
【全き】原、「成熟せる」。座席のすべて塞がれるをいふ
二五―二七
【諸※[#二の字点、1−2−22]の半圓】半圓をゑがく諸※[#二の字点、1−2−22]の列
【目を】信仰の
三一―三三
【ジョヴァンニ】バプテスマのヨハネ
【曠野】、淨、二二・一五二參照。「殉教」、天、一八・一三五參照。「二年」、ヨハネの死よりキリストの死まで約二年の間地獄のリムボにあり
三四―三六
【フランチェスコ】アッシージの聖者(天、一一・四三以下)
【ベネデット】ノルチアの聖者(天、二二・二八以下並びに註參照)聖ベネデクトゥス。
【アウグスティーノ】聖アウグスティヌス。三五四年タガステ(昔のヌミディア)に生れる。ヒッポの僧正となりて四三〇年に死す、ラテン寺院の教父中最大なる者の一、ダンテよくその著作に通じ屡※[#二の字点、1−2−22]これを引用せり(『コンヴィヴィオ』四・九・八三以下『デ・モナルキア』三・四・五一以下等)
三七―三九
【園】即ち天上の薔薇。註釋者曰く、キリスト以前は準備の時代なればその以後の如く多くの受福者を生むべきやうなし、ダンテがかく諸聖徒を均等に二分せる理由は重きをその詩的調和に置けるにありと
四〇―四五
最高の列と最低の列との中間に當りて二の分岐線を横斷する列より下はすべて稚兒の座席なり
【他人の】兩親の(七六―八行)
【或る約束】七六行以下參照
【これらは皆】皆理性の作用《はたらき》を有せざるさきに肉體を離れし靈なれば
四九―五一
【異しみ】己が功徳によらずして福を受くとせば何故にその座席(即ち福の度)に差別ありや、是ダンテの疑ひなり、ベルナルドゥス、ダンテの意中にこの疑ひあるを知り、こは奧妙深遠にして測るべからざる神意にいづと答ふ
【鋭き思ひに】理智より生ずる疑ひを信仰によりて解くなり
五五―五七
【指輪は】凡ての事皆神意と一致す
六四―六六
【樂しき聖顏の】淨、一六・八五―九三並びに註參照
【この事】人の魂には、既にその造らるゝ時に當りて、神より受くる恩惠に多少ある事。この事を知りて足れりとし、何故に神かく爲し給ふやと問ふ勿れ
六七―六九
例をエサウとヤコブの事に取れり(天、八・一三〇―三一參照)、かれらは母の胎内にて爭へる者(創世、二五・二二)
【聖書に】未だ胎内にある時既に神意によりて兄が弟に事ふべきこと定まれるなり(創世、二五・二三、マラキ、一・二―三、ロマ、九・一〇―一三參照)
七〇―七二
小兒等はその生時に安くる神恩の多少によりて福の度を異にす
【髮の色】はじめより神の與へ給ふ恩惠の度。生時に毛色の異なる如く、受くる恩惠の度異なればなり、エサウとヤコブとその色を異にせる(創世、二五・二五)に因みてかく言へり
【いと高き光は】神の聖光《みひかり》は各自の恩惠に適はしき冠となる、即ち生時の恩惠の多少に從つて各自の天上に受くる福異なるにいたる
七三―七五
【最初の】神を視る最初の力の鋭さ。この生得の力は神恩によりて得らるゝものなるが故にその鋭さの異なるは即ち生時に與へらるゝ神恩の異なるなり
七六―七八
【新しき頃】創造以後久しからざる頃、即ちアダムよりアブラハムまでの間。割禮はアブラハムにはじまる(創世、一七・一〇以下參照)
【信仰】救世主の出現に對する信仰
七九―八一
【力】天に登るの
八二―八四
【恩惠の】キリスト降世の後には
【全き洗禮】割禮が不完全なる洗禮なるに對して
【低き處に】地獄のリムボに
以上稚兒の救ひに關する三聯はすべてダンテ時代の教理特にトマス・アクイナスの『神學大全』の所説に據れり
八五―八七
【顏】聖母の。その美その輝きにおいて最もよく聖子に似たり
【その輝のみ】天、三一・九七―九參照
八八―九〇
【聖なる心】天使
【齎らす】神の御許より(天、三一・一六―八參照)
九四―九六
【さきに】第八天にて(天、二三・九四以下)
【愛】首天使ガブリエル
一〇〇―一〇二
【父】ベルナルドゥス。「こゝに下る」は薔薇の最《いと》低き處に下るなり
一〇六―一〇八
【朝の星】明《あけ》の明星。明星が日光を受けて美しくなる如く、ベルナルドゥスは聖母の光を受けて美しくなれるなり
一〇九―一一一
【剛さ】Baldezza 自信ありて物に動ぜぬこと
【われらもまた】聖徒の願ひすべて神意と一致するを表はす
一一二―一一四
【われらの荷】肉體の荷
【棕櫚】聖靈に見ゆ、神が凡ての女の中にて特にマリアを選び給へることを表はす、即ち他の女に對する勝利のしるしなり
一一五―一一七
【高官達】patrici(ローマの高官達)諸聖徒の中の特に勝《すぐ》るゝ者を指す、天堂を帝國[#「帝國」に白丸傍点]といひマリアを皇妃といへるも同じくローマに因みてなり
一一八―一二〇
【ふたり】アダムとペテロ
【二つの根】アダムは降臨すべきキリストを信じゝ第一の人として、ペテロは降臨せるキリストを信じゝ第一の人として
一二一―一二三
【左】スカルタッツィニ曰く。舊約の教への新約に比して劣るを表はすと
【味へる】禁斷の木の實を
一二四―一二六
【花の二の鑰】薔薇(即ち天堂)の二の鑰(地、一九・九一一―二參照)
一二七―一二九
【新婦】寺院。十字架の死によりて主の建て給へるもの
【見し者】使徒ヨハネ(默示録の著者として)。禍ひ多き寺院の歴史を默示によりて豫め見し者
一三〇―一三二
【民】イスラエルの民。神恩を忘れ恒心なく神及び導者に背けるため屡※[#二の字点、1−2−22]神怒りに觸れしこと聖書に見ゆ(申命、三二・一八等)
【マンナ】アラビアの曠野にて食へる(出エジプト、一六・一三以下)
【導者】モーゼ
一三三―一三五
【アンナ】聖母マリアの母堂アンナ。祭司マッタンの女にてヨアキムに嫁しマリアを生めりと傳へらる
一三六―一三八
【家長】全人類の家長アダム
【馳せ下らんとて】低地に(地、一・六一參照)。日を垂るゝは恐れと失望とな表はすなり
【ルーチア】聖ルーチア(地、二・九七並びに註參照)
一三九―一四一
【睡の時】我を忘れて物を見る如くなる時、即ち天堂の事物を知る爲神の與へ給ひし時間
一四二―一四四
【第一の愛】神。ダンテはさきに聖靈を指してかく言へり(地、三・六及び天、六・一一)
一四五―一四七
【己が翼を動かし】己が力のみに信頼して
一四八―一五〇
【淑女】聖母


    第三十三曲

聖ベルナルドゥス、ダンテの爲聖母マリアに祈りをさゝぐ、ダンテこの祈りにより至上の光を仰ぎ望みて三一及び神人兩性の秘奧をさとり、至幸至福の境に達す
一―三
【處女】淨、二五・一二八參照
【わが子】キリスト。神としてはマリアの父、人としてはその子なり
【己を低くし】ルカ傳一・四八參照
【永遠の聖旨の】永遠變らざる神意により豫め選ばれて救世主の母たるべしと定まれるもの
七―九
【愛】神と人との間の愛。この愛の障礙となるものは罪なり、救世主世に降りて罪を贖ひ、愛あらたに燃ゆ
【この花】天上の薔薇
一〇―一二
【亭午の】正午の太陽に因みて光の強きをいふ。聖母は諸聖徒の愛を燃す焔なり
【活泉】盡きせぬ泉
一六―一八
【求めに先んず】淨、一七・五八―六〇註參照
二二―二四
【宇宙のいと低き沼】地獄
二五―二七
【終極の救ひ】神(天、二二・一二四參照)
二八―三〇
【彼の】彼をして終極の救ひを見るをえしめんとのわが願ひはその切なるにおいて、我自らこれを見んと思ふの願ひにかはらじ
三一―三三
【汝の祈りによりて】汝彼の爲神に祈りて
【こよなき悦び】神
三四―三六
【かく見】神を
四〇―四二
【目】マリアの目。父に愛《め》でられ子に尊まる(スカルタッツィニ)
【祈れる者】ベルナルドゥス
【示し】微笑によりて
四三―四五
【光】神。光にむかふは神の許をえんが爲なり
四六―四八
【望みの極】神
【熄む】願ひの必ず成るを信じて靜心《しづこゝろ》にかへれるをいふ
五二―五四
【高き光】神の光。たゞ神の光のみ本來眞なり、萬物の眞はこの光を頒つによりてはじめて存す
五八―六〇
天、二三・四九―五四參照
【他は】夢その物は
六一―六三
【消え】記憶より
六四―六六
事物の記憶より冷えゆくさまをさらに二の譬にて示せり
【シビルラ】キュマエ(ナポリの西の町)の巫女にてアエネアスを冥府に導ける者。その豫言を木の葉に録し秩序を立てゝこれを己が巖窟の内に藏す、風吹來りてこれを散らせば、散るに任せて再び顧ることなしといふ(『アエネイス』三・四四一以下參照)
七三―七五
【勝利】萬物に卓越して大なること
七六―七八
世の強き光は人強ひてこれを視んと力むればその目|眩《くら》みて堪へ難し、神の光はこれと異なり、力めてこれに堪へこれを視る時は視力増し、一たび目を他に轉ずれはまたこれを視るをえず
八二―八四
【視る力の盡くる】わが視力の許すかぎり見るを得るまで
八五―八七
宇宙に散在する諸物諸象は一糸亂れず皆その本源なる神に合す、而してかく合せしむるものは即ち愛なり、この合一ありて諸物諸象存在の意義はじめて全し、これなくは宇宙はたゞ一渾沌のみ
八八―九〇
【實在】Sustanzia 自ら己が存在を保つ物
【偶在】accidenti 實在に附して存在する物
【特性】costume 特殊の作用
【かのものは】原、「わがいふ所のものは」
【單一の光】混るさまの安全なるを表はす
或ひは曰く、これ「微光」なり、即ちその混るさま極めて奧妙にして言語に盡し難ければ、わが言ふ所はわが見し物のたゞ微かなる幻影に過ぎじとの意と
九四―九六
世人が二千五百年の間にかのアルゴナウタイ遠征の事を忘れしにもまさりて我は示現の後僅か一瞬の間にかの光の事を忘れたり
【ネッツーノ】ポセイドン、海の神
【アルゴ】イアソン(地、一八・八五―七並びに註參照)の率ゐし遠征隊の乘れる船。海を渡れる最初の船なれば海神これに驚けるなり
【二千五百年】中古信ぜられし年代に從へばアルゴナウタイ遠征の事ありしはキリスト以前一二二三年なり
【睡】letargo 忘却。但し異説あり
九七―九九
意は九〇行に續く
【熟視】心眼をもて
一〇三―一〇五
【この外にては】萬物の善萬物の福は皆神より出づ、故に善の完きものたゞ神の光の中にあり
一〇六―一〇八
【想起】想ひいづることにつきてさへかくの如し、況んや見し物につきてをや
一〇九―一一一
以下一二六行まで三一の示現を敍す
一一二―一一四
神の姿の一樣ならざる如く見ゆるは姿その者の變るによるにあらずして見る者の目の力のかはるによるをいふ
一一五―一一七
【三の圓】父、子、聖靈の象徴。色異なるは顯現の異なるなり、大きさの同じきはいづれも等しく完きなり
一一八―一二〇
【その一】子。父より出づるがゆゑにその光の反映なりといへり
【イリ】イリス、虹。二重の虹のうち、一が他の反映なるごとく(天、一二・一〇―一五並びに註參照)
前へ 次へ
全49ページ中48ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 丙三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング