て諸天にそれ/″\その運動の力を頒つものなれば、諸天運行の測定の本は第九天にあり、されど他の諸天の運行は各※[#二の字点、1−2−22]異なるがゆゑに其一によりてその源なる第九天の運行を測定し難し
【十の】五を二倍し二を五倍して十なる數をうる如し。但しこは單に完全なる測定の可能なるを示せるに過ぎざるならむ
一一八―一二〇
時なるものは諸天體日毎の運行にもとづきて定めらる、第九天は運行の本なり、故にまた時の本(根[#「根」に白丸傍点])なり
【鉢】第九天。その運行目に見えず知り難し、根のかくれて知れざる如し
【他の諸※[#二の字点、1−2−22]の鉢】他の諸天。人その運行によりて時を測るを得、葉の顯れて知らるゝ如し
一二一―一二三
以下一四一行まで、ベアトリーチェはダンテの地球遠望に因み一轉して人間の私慾を難ず
一二四―一二六
人に善心の花は咲けども、惡の誘ひに惑はされて、善行の實は結はじ
【惡しき實】bozzacchioni 李が花より實に變る頃長雨の爲發育宜しきを失ひ蟲に冒されて食ふべからざるに至るをいふ
一三〇―一三二
人生長すれば幼時の順良を失ひ、寺院の法《のり》をも守らざるにいたる
【いかなる月の頃】いかなる時、即ち斷食を守るべき時にも然らざる時にも。特に月といへるは滿月より數へて斷食の日を定むるの例あればなり
一三六―一三八
人間の性情が前記の如く善より惡に變ずるさまはあたかもその肌が年とともに幼時の美しき色を失ふに似たり。但しこの一聯異説多し
【殘しゆくもの】太陽
【美しき女】人間。天、二二・一一六に太陽を「一切の滅ぶる生命の父」といひ、また『デ・モナルキア』(一・九・六―七)にはアリストテレスの言を引用して「人は人と太陽とより生る」といへり
一三九―一四一
【治むる者なき】法王ありてその座空しく(二二―四行參照)、皇帝ありてその實なし(淨、六・七六以下參照)
一四二―一四四
以下偉人出現の豫言
【百分一の】ユーリウス・カエサルの改正暦に從へば一年は三百六十五日と六時間にて、これを實際の年に比すれば一年に約十二分即ち一日の約百分一の差あり、この差積りて百餘年に一日となる、されは幾千年の後には暦日實際の日を超えて遠く離れ第一月は冬ならずして春なるに至らむ(ムーアの『ダンテ研究』第三卷九五頁以下參照)
ユーリウス暦は一五八二年法王グレゴリウス十三世によりて改められき、ダンテの時代に暦日と實際の日との間に、八九日の差ありしもこの誤りによりてなり
但しこゝの文意は單に「久しからずして」といふごとし
一四五―一四七
【艫を】嵐が船の方向を變ずる如く偉人は人を惡より善にむかはしめ
【千船】人類
一四八
【眞の實】一二四―六行參照
第二十八曲
ダンテ第九天にて、九級の天使より成る九個の輪を見、ベアトリーチェの教へを受く
一―三
【天堂に置かしむる】imparadisa(わが心を高めて)天堂の事を思はしむる
但し、(わが心に)天堂の悦を與ふる意に解する人あり
四―六
以下二一行まで、ダンテがベアトリーチェの目に光鋭き一點の映ずるを見、その物の何なるやを知らんとて身を轉らしゝさまを敍す
【燈火】doppiero 大蝋燭の一種
【鏡】己が前なる
七―一二
【此と彼と】眞と玻※[#「王+黎」、第3水準1−88−35]と(實物と映れる影と)
一三―一五
【めぐるを視る】わが今視る如く。ダンテは既に超人の視力を有す。「かの天」は第九天
【現はるゝもの】次聯に出づ
一六―一八
【一點】神。分つ可からず量るべからざる「點」をもて、形體の觀念を容れざる神性を表はす
一九―二一
【並ぶごとく】並びて天に現はるゝ如く
二二―二四
【水氣のいと濃き】かゝる時は暈《かさ》特に日月に近し
【これを彩る光】暈に色彩を與ふる日月
二五―二七
【一の火の輪】輪形を成せるセラフィーニ(天、四・二八―三〇並びに註參照)の一團
【運行】第九天の
二八―三〇
【第二の】第二の輪はケルビーニの一團。以下第九まですべて九個の輪によりて九級の天使を表はせり(九七行以下參照)
三一―三三
【今や】第七の輪にいたればもはや虹もその圓内にこれを容《い》るゝ能はじと見ゆる程大なり
【ユーノの使者】虹の女神イリーデ(天、一二・一〇―一二並びに註參照)
【完全】虹がたとひ完全なる圓をゑがきて現はるとも
三四―三六
【然り】次第に大きさを増して前の輪を卷くをいふ。
【その數が】第二第三と數のますに從つての義にて、一[#「一」に白丸傍点]は「一點」を指すにあらず
三七―三九
【清き火衣】「一點」
【これが眞に與かる】di lei s'invera(その眞の中に入る)神性の何たるやを會得すること
四〇―四二
【天も】諸天及びそが下方に及ぼす影響は皆神に歸す。萬物は皆神の定め給ふ法《のり》に從つてはたらく。アリストテレスの「第一原因」を「一點」にあてはめしもの
四三―四五
【愛】神を慕ひ神に近づかんとてめぐるなり
四六―五一
諸天は宇宙の中心なる地球より遠ざかるに從つて※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]ること愈※[#二の字点、1−2−22]早く、これらの輪はかの一點より遠ざかるに從つてめぐること愈※[#二の字点、1−2−22]おそし、故にダンテは物質界の法則とこれらの輪の法則と相異なるをあやしめり
【わが前に】我は汝の言葉を聞きて滿足せるならむ。前に置[#「前に置」に白丸傍点]くは食を調へて人に進むるに譬へしなり
【諸※[#二の字点、1−2−22]の囘轉】諸天
【聖なる】完全なる。神の力を安くること多きがゆゑに※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]ることまた早し
五二―五四
【神殿】第九天
【愛と光とを】天、二七・一一二參照
【我願】第九天に生じゝ
五五―五七
【模寫と樣式】官能界と天使の輪(四六―五一行參照)
五八―六〇
【試みられざるによりて】何人も解かんとせしことなきによりて
六四―六六
物質界にありては力と大小と比例するをいへり
【諸※[#二の字点、1−2−22]の球體】九個の天
【力】上より受けて下に與ふる力
六七―六九
力大なればその與ふる福(善き影響)もまた大に、體大なればその受けて有する福もまた大なり
七〇―七二
是故にこの最大の球、即ち他の八天を※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉せしむる第九天は、その力また最大なるにより、かの最小の輪、即ち神に最《いと》近くして愛も智も最勝るゝセラフィーニの群に相當す
七三―七五
是故に諸天使の輪を量《はか》るに當りその標準を形の大小に(官能界の時の如く)置かずして力の大小に置かんには
七六―七八
諸天にありては體の最大なるもの最も勝れ、天使の諸群にありては神に最も近きもの最もすぐる、而して勝るゝが故に疾く※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]る、是においてか第九天は第一輪(セラフィーニ)に相應し第八天は第二輪(ケルビーニ)に相應す、以下の諸天皆亦かくの如く各※[#二の字点、1−2−22]これを司りこれに※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉を與ふる天使に相應す
【大いなるは優れると】大なる天はまされる天使と
七九―八一
【ボーレア】北風
【頬】註釋者曰く。人の顏をもて風位を示す事より來れり、ボーレア口を直くして吹けば北風となり、歪《ゆが》めて右の頬より吹けば北西の風となり左の頬より吹けば北東の風となると
叉曰く。北東の風は北西の風よりも温和にて、よく空の霧を拂ふと(ヴァーノン『天堂篇解説』第二卷三八一―二頁參照)
【半球の空】即ち見渡すかぎりの室
八二―八四
【霧】roffa 空を曇らす雲霧の類
【その隨處】ogni sua parroffa 最後の語については異説ありてその義定かならず、今一古註により Parte(部分)の意とせり
九一―九三
【火花は】火花即ち諸天使はその悦を表はさん爲こゝかしこより舞ひ立ちしかど、なほ各※[#二の字点、1−2−22]己が屬する輪に附隨してめぐり、輪形をも※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉をも損ひ亂すことなかりき
【將棊を倍する】數の多きを形容していへり。傳説に曰く、將棊の發明者ペルシア王に謁す、王、將棊を見て喜び何にても望むものを與へんといふ、發明者即ち麥の一粒を將棊盤の目の數に從ひ順次に倍して(第一目に一粒、二目に二粒、次に四粒次に八粒、十六粒、三十二粒と次々に倍して最後の第六十四目にいたる)與へよと請ふ、王その望みの小なるを笑ふ、されど侍臣をしてこれを計らしむるに及び數の莫大(二十桁)にして、約を果す能はざるを知れりと
九四―九六
【處に】即ち天使注が各※[#二の字点、1−2−22]神の定め給ひたる地位を保ちて永遠にその恩寵を受くるをいふ
【オザンナ】天、七・一參照
九七―九九
【疑ひ】天使の階級に關する疑ひ、諸聖父の説一ならざれはなり
(一)セラフィーニ以下の名稱は皆聖書より出づ(各條註參照)、寺院の聖父等この名稱により天使を種々の階級に別てり、即ちすべて三の組とし組毎に三級の天使を配す、但しその排列の法聖父によりて異同あり
(二)こゝに掲ぐる分類はすべて「諸天使階級論」に據る、こはディオニュシオスの作として(天、一〇・一一五―七註參照)中古世に行はれし書なり
(三)『コンヴィヴィオ』(二・六・四三以下)に出づる分類はこの分類と同一ならず、思ふにこれダンテがかの書以後その説を改めたるによるならむ
【セラフィニ】セラフィーニ。イザヤ書六・二等。プリーモ・モービレを司る天使
【ケルビ】ケルビーニ、ケルビム詩篇八〇・一等。恒星天を司る天使
一〇〇―一〇二
【絆】かれらを神と結び合はす愛の絆。これに從ふは愛に動かされて※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》るなり
【視る】高き近き處より神を視るがゆゑにその高さ近さに應じて神に似るの度他にまさるなり
一〇三―一〇五
【愛】天使
【神の聖前の】直接に神の光を受けて之を諸聖徒に傳ふるがゆゑに(天、九・六一―三參照)かく
【寶座】コロサイ書一・一六等。土星天を司る天使
【第一の三の】されど何故にこれが爲「資産」と呼ばるゝや明かならず、恐らくは一〇五行の 〔Perche`〕 を Perche と讀み「是故に第一の三の組かれらに終る」と譯す方正しからむ(スカルタッツィニ一册本註參照)
一〇六―一〇八
【眞】神。一切の智に休安を與ふ(天、四・一二四以下參照)
一〇九―一一一
まづ神を見、神を知りて而して後神を愛す、故に見ることは愛することに先んず(天、一四・四〇―四二參照)トマス・アクイナスの神學説によれり
一一二―一一四
神を見るの如何は功徳即ち善行の多少に準じ、功徳は神恩とこれを迎ふる善心とより生ず
【次序を】神恩善心相結ばりて功徳に進み、功徳知に進み、知愛に進む
一一五―一一七
【永劫の春】天堂の
【夜の白羊宮も】秋期の凋落を知らざる。秋分にいたれば日は天秤宮に入るがゆゑに夜はその反對面の天宮即ち白羊宮にあり
一一八―一二〇
【歌ひ】sverna(冬を出づ)冬去り春來る時、鳥の喜びて歌ふことよりこの義生る
【喜悦の位】即ち天使の位
一二一―一二三
【神】地、七・八七參照
【統治】コロサイ書一・一六等。木星天を司る天使
【懿徳】エペソ書一・二一(能力)、火星天を司る天使
【威能】エペソ書一・二一等。太陽天を司る天使
一二四―一二六
【主權】コロサイ書一・一六等。金星天を司る天使
【首天便】テサロニケ前書四・一六等。水星天を司る天使
【天使】月天を司る天使
一二七―一二九
【上方を】かの一點即ち神を
【引かれしかして】自ら神の方に引かれつゝ、その下なるものを神の方に引く。たとへばセラフィーニが神に引かれつゝケルビーニを引き、ケルビーニがセラフィーニに引かれつゝツローニを引くごとし
一三三―一三五
【グレゴーリオ】法王グレゴリウス一世(淨、一〇・七三―五參照)
【彼を離れ】天使の分類においてディオニュシオスと異なる所あるをいふ
一三六―一三九
【人たる者】ディオニュシオスの如く
【見し者
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