欲する事。その源は知識の泉なる神
一〇―一二
【球】(複數)、軸を中心として※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]る球の如くかの聖徒等はベアトリーチェ及びダンテを中心とし多くの輪を造りてめぐれり(天、一〇・七六―八參照)
一三―一五
【初めの輪】最も内部にありて最も小なるもの、その※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]る事最も遲し。而して終りの輪は最も外部にありて最も大に、その※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]ること最も速し
一六―一八
【球】carole 圓形に舞ふ舞のこと、こゝにては舞ひめぐる諸靈の群
【富を量る】舞の遲速によりてその群の幸福の大小を判ず(天、八・一九―二一參照)
一九―二一
【一の火】使徒ペテロ
【福なる】福の大なるは光の強きによりて知らる
【かしこ】かの球
二二―二四
【三度】三は完全數
二五―二七
【劈※[#「ころもへん+責」、第3水準1−91−87]】註釋者曰く。衣裳を畫くに當り、劈※[#「ころもへん+責」、第3水準1−91−87]《ひだ》にぢみなる色を用ゐて他の部分と區別す、はでなる色を用ゐる時は劈※[#「ころもへん+責」、第3水準1−91−87]なることを知り難し、さればひだに適《ふさ》はしき色を所持せぬ畫家の己が技《わざ》をこゝに施しえざる如く、われらの不完全なる想像はかくまで尊くけだかき歌を思ひ浮ぶる能はざるなりと
二八―三〇
ペテロの詞
三四―三六
【われらの主が】地、一九・九一―二參照
【奇しき悦び】天堂。鑰は即ち前曲の末に「榮光の鑰」といへるもの
三七―三九
【海の上を】ペテロがキリストにならひて海上を歩めること(マタイ、四・二二以下)
四〇―四二
【ところ】神(天、一五・六一―三參照)
四三―四五
汝問はざるもよく彼の心を知る、されど信仰は人の救の要素なれば、彼をしてこれが事を語りてその尊さを顯はさしむべし
四六―四八
【學士】baccellier 大學の業を終へ、さらに高き學位の候補者たるを得る者。かゝる學位を得るに當り、中古の例に從ひ、まづ教師の提出する若干の問題を論證す
【決るためならず】提案に對する論證の主意をとりまとめて決論を下すは教師の爲す事なればなり
五二―五四
以下、ペテロ問ひダンテ答ふ
五五―五七
答ふるに當りてまづベアトリーチェの許を得
五八―六〇
【長】primipilo ローマ軍隊の話にて、第一隊の百夫長、戰に臨み最先に槍を揮ふ者。ピエートロは寺院屈指の勇士《ますらを》なればかく
【恩惠】神の
六一―六三
【ローマを正しき】ローマ人をキリストの教へに歸せしめし
【汝の愛する兄爲】パウロ(ペテロ後、三・一五參照)
【録す】ヘブル書(パウロの筆と信ぜられし)に
六四―六六
【信仰とは】ヘブル書一一・一。但しダンテはヴルガータにもとづきかつこれが解釋をトマス・アクイナスの『神學大全』に採れり
七〇―七五
天上にありて今わが明に認むるを得る靈界の事物は、官能によりて知らるゝものにあらざるが故に、地上の人目にてこれを視るをえず、たゞ信仰によりてこれが存在を許容するのみ、人はこの信仰を基礎とし、その在りと信ずるものを親しく視るに至るの望み、換言すれば福祉を得るにいたるの望みをその上に築くがゆゑに信仰は即ち基に當る
七六―七八
また人は靈界の事物をば他の證《あかし》を用ゐず(他の物を見ず[#「他の物を見ず」に傍点])たゞ信仰の證によりて(即ち信仰にもとづく推理によりて)眞《まこと》とすべきものなるがゆゑに信仰は即ち證にあたる
七九―八一
【凡そ教へに】凡そ教訓によりて世人の學ぶ所のもの、汝が信仰を解する如く明確に解せられなば、詭辯者世にその才を施すの餘地なからむ
八二―八四
【この貨幣】信仰
【混合物とその重さ】合金の割合及び重さの如何によりて貨幣の眞僞を判ずる如く手落なく信仰の何たるを檢せりとの意
八五―八七
【己が財布の】己が心の
【そを鑄し樣に】贋造の疑ひなきまで(その眞なるを疑はざるほど)この貨幣(わがいだく信仰)は光りて(純にして)圓し(完し)
八八―九〇
【珠】信仰
九一―九三
【舊新二種の】舊新兩約書に注ぐ聖靈の惠《めぐみ》。即ち聖書に滿つる生産の示現
【皮】書《ふみ》。昔は文字を羊皮に録せり
九七―九九
【命題】Proposizion 三段論法における大小二の前提、こゝにては舊新兩約書、この兩書はダンテの信仰の眞なるを證するものなるが故にその決論に對する前提に等し
一〇〇―一〇二
聖書が神の言なることを證するものはこの言にともなふ奇蹟なり(マタイ、一六・二〇參照)
【自然が】自然の鍛へ上げ作りあげしにあらざる業《わざ》、即ち超自然の美
一〇三―一〇五
【自ら證を求むる者】聖書。聖書にのみ録《しる》さるゝ奇蹟によりて聖書の教への天啓なるを證せんとするは論理の原則に反すればなり
一〇六―一〇八
【奇蹟なきに】キリスト教の世に弘まれるは、とりもなほさず奇蹟の實際に行はれし證左なり、奇蹟なくしてかく弘まれりとせば、そは聖書中のすべての奇蹟を集むとも猶遙に及ばざるほど大いなる一の奇蹟なればなり。但しこの論法は昔より寺院の人の用ゐしもの
一〇九―一一一
最初キリスト教を世に宣傳へし人々が奇蹟の助けによらざればこれを弘めえざる境遇にありしをいへり
【良木の】良木の種を蒔くはキリスト教の信仰を植うるなり
【葡萄】寺院は園の如し(天、一二・八六參照)、その樹昔葡萄にて有徳の實を結びたれど今荊棘に變じて實なし
一一二―一一四
【われら神を】テー・デウム・ラウダームスの歌(淨、九・一三九―四一參照)
【諸※[#二の字点、1−2−22]の球】多くの輪を造れる聖徒達(一一行)
一一五―一一七
【枝より枝】問より問。梢[#「梢」に白丸傍点]はその最後の個條
【長】baron 對建時代における領主の稱號より轉じて君主、偉人の義に用ゐまた聖者達の尊稱として用ゐしことあり
一一八―一二〇
【契る】donnea(婦人と睦びかたらふ義)、神恩と心との緊密なる關係を表はす。汝を愛し汝の心に宿りて汝を助くる神の惠み
一二一―一二三
【出でしもの】汝の答
一二四―一二六
【墓の】キリストの屍その墓に在らずと聞き、ペテロ(ピエートロ)とヨハネ共に馳せて墓に向ふ、ヨハネまづかしこに至る、されど第一にその内に入れる者はペテロなり(ヨハネ、二〇・一以下)
ヨハネ傳に「見て信ぜり」(同上八)とあるによりダンテはペテロの信仰ヨハネにまさりゐたりと解せり
【もの】榮光のキリスト
一三〇―一三二
【愛と願ひと】神を愛するの愛と、神を慕ひ神に近づかんとするの願ひとを與へて。この愛この願ひあるが故に諸天運行す(天、一・七六―七參照)
一三三―一三八
古より行はれし類別に從ひて舊新兩約書を擧ぐ、即ちモーゼの五書、豫言者の諸書及び詩篇は舊約書にて、四福音書及び使徒達の諸書は新約書なり
【燃ゆる靈に】聖靈の助により心に光明をえて後諸書を録せる使徒達
【こゝより】天より地に
一三九―一四一
【ソノといひ】ソノ(sono)は在りの複數形にてエステ(este*)はその單數形なり、三として複數動詞を用ゐるとも一として單數動詞を用ゐるともいづれにてもよしとの意
*esteはラテン語の est をイタリア化したるものにて當時の散文にもその用例ありといふ(フラティチェルリ及びパッセリーニ註參照)
一四二―一四四
【福音の教へ】マタイ傳二八・一九、ヨハネ傳一四・一六、コリント後書一三・一三等
一四五―一四七
【是ぞ源】神の三一を信ずることは即ち信仰の第一義にて、その他の信條皆これより出づ
第二十五曲
聖ヤコブ、ダンテに望みの事を問ふ、その後また聖ヨハネ現はれ己が内體に關するダンテの疑ひを解く
一―六
以下一二行まで、信仰の試問を敍し終れる時ダンテはその信仰の始めを思ひて「聖ジョヴァンニの洗禮所」に及び郷土フィレンツェをしのぶあまり、たゞ一個の詩人としてかしこに歸るの望みあるを陳ぶ
【手を下しゝ】材を供せる。『神曲』は天上の事と地上の事とをともに歌へるものなればなり
【圈】フィレンツェ(天、一六・二五―七參照)
【狼】惡くして強き者(フィレンツェ市民の)
【羔】善くして柔和なる者
【閉め出す】殘忍なる敵の怨みを受けてフィレンツェを逐はれしこと(『コンヴィヴィオ』一、三・二〇以下參照)
【勝つ】この詩によりてかの市民等わが詩才を認め、詩人の譽の爲我を郷土に歸らしむることあらば
七―九
【變れる聲】地上の戀愛を歌はずして壯嚴なる天上の事物を歌ふ聲
【變れる毛】(毛は原語羊毛[#「羊毛」に白丸傍点]とあり、五行の羔に因みてなり)老いて白髮となること
【わが洗禮の盤のほとりに】「聖ジョヴァンニの洗禮所」にて(地、一九・一六―二一註參照)
一〇―一二
【かしこにて】かの洗禮所に洗禮を受けてキリスト教の信仰に入り
【魂を神に】人信仰に由て神に近づく事を表はす
【これが爲に】この信仰の爲に
一三―一五
【初果】聖ペテロはキリストがその最初の代理者として世に殘し給へる者
【球】輪を造れる聖徒の一群(天、二四・一九―二〇)
【一の光】使徒ヤコブ(使徒ヨハネの兄弟)
一六―一八
【長】barone(天、二四・一一五―七註參照)
【ガーリツィア】聖ヤコブはイスパニア、ガーリツィア州なるサンティアーゴ・デ・コムポステルラに葬らるとの傳説により、中古かの地に行きてその宮に詣づるもの甚だ多かりきといふ
二二―一四
【ひとりの】聖ヤコブ
【他の】聖ペテロ
【糧】神恩の糧(天、二四・一以下參照)
二八―三〇
【録しゝ】ヤコブ書(一・五、一七參照)に。ダンテはその頃行はれし説に從ひヤコブ書を聖ヨハネの兄弟なるヤコブの書《ふみ》と思へるなり
三一―三三
【響き渡らす】ダンテと語りて
【己をいとよく】その神人の兩性を最もよく三人に顯はし給ひし
ヤイロの女の蘇生(マルコ、五・二二以下等)、キリストの變容(マタイ、一七・一以下等)、ゲッセマネの園の祈祷(マタイ、二六・三六以下等)の時主と共にありし者はたゞペテロ、ヤコブ、ヨハネの三人のみなりき、ダンテはかゝる場合に主がかれらを教理の三徳即ち信仰(ペテロ)と望み(ヤコブ)と愛(ヨハネ)との象徴たらしめ給へりとの神學説に從へるなり
三四―三六
ヤコブの詞
【人の世界より】人間界より天上に登り來る者の諸官能はわれらの光に慣るゝによりて前よりも強く全きにいたる(熟す)がゆゑに後よくこれに堪ふるを得。
三七―三九
【山】ペテロとヤコブ。即ちさきにその強き光をもてダンテの目を垂れしめし者。山[#「山」に白丸傍点]はその位の高きを表はす
四〇―四二
神はその恩寵により、汝の生きながら登り來りて諸※[#二の字点、1−2−22]の聖徒達と御座近き天堂にて會ふことを許し給ひ
四三―四五
【正しき愛】神を愛するの愛。神に近づくをうるの望みこの愛を促すなり
四六―四八
【汝の心に咲くや】汝いかばかりの望みを心にいだくや
四九―五一
【我より先に】ベアトリーチェ、ダンテに代りて第二問に答ふ、ダンテ自ら己が望みのすぐれて大いなるをいはんは適はしき事ならざればなり
五二―五四
【日輪】凡ての聖徒を照らし給ふ神
【戰鬪に參る寺院】Chiesa militante(戰鬪の寺院)、地上の信徒。天上の聖徒をChiesa trion−fante(凱旋の寺院)といふに對す
五五―五七
是故に彼はその未だ死なざるさきに、人の世より天に來ることを許さる
【エジプト】昔ヘブライ人がエジプトに奴隷たりし事あるに因みて人の世をエジプトといへり(淨、二・四六―八註參照)
【イエルサレムメ】天堂。活神《いくるかみ》の都なる天のイエルサレム(ヘブル、一二・二二)
五八―六〇
【知らんとてならず】神によりて既に知ればなり(天、一七・一〇―一二參照)
【傳へ】世に
六七―六九
第一問の答
【望みとは】ダンテはこゝにペトロス・ロムバルドゥスの教法集(天、一〇・一〇六―八註參照)第三卷に見ゆる望みの定義を譯出せり
【先立つ功徳】人の善まづよく神恩と合する
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