j、オデリジ(淨、一一・一三九以下)等の豫言を聞きて眞を知るを求むるの情切なりしなり
【燈】カッチアグイーダ。ダンテを迎へん爲火星の十字架の右の桁より柱脚に馳せ下れること前に出づ(天、一五・一九―二一)
一〇―一二
【増さん爲ならず】神によりて汝の願ひを知るがゆゑに
【渇】願ひ
【飮ます】mesca(注《つ》ぐ。杯に酒を注ぐ類、ヴァーノン『天堂篇解説』第二卷三八頁參照)、願ひを叶はす
一三―一五
【板】piota 芝土の義より轉じて根即ち祖先
【知るごとく】知る如く精確に
一六―一八
【點】神。神は現在の如く過去と未來とを現給ふ
一九―二一
【山】淨火の
【死の世界】地獄
二八―三〇
【光】カッチアグイーダ
三一―三三
【神の羔】キリスト(ヨハネ、一・二九)
【昔】キリスト以前即ち異教時代に
【朧】異教の神々の託宣の如く曖昧ならず
三四―三六
【父の愛】慈愛深きわが祖先
【己が微笑の】光に包まれて見えざれどもその先によりて己が喜びを表はしつゝ
三七―三九
神は汝等の世に起る凡ての事を知り給ふ
【物質の書より外に】事の偶然に生ずるは(即ち人間自由の行動に歸着する種々の出來事あるは)たゞ物質界においてのみ、靈界においては事皆必然の理より生ず(天、三二・五二―四參照)
四〇―四二
【船流れを】船流れを下るが故に人見てこれが下るを知る、されど人目に映ずるが故に船動くに非ず、かくの如く神は全智によりて世の出來事を豫如し給へど、豫知し給ふこと原因となりてその事必ず起るにあらず
四六―四六
【イッポリート】ヒッポリュトス。テセウスの子。その繼母パエドラの讒にあひ、父の怒りに觸れてアテナイを逐はる(『メタモルフォセス』一五・四九三以下參照)
四九―五一
【處】ローマ。僧官、及びその他靈界に屬する物の日々賣買せらるゝところ
【思ひめぐらす者】ダンテを虐げんと思ひ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]らす者、即ち法王ボニファキウス八世とその―味の者
ダンテの追放されしは一三〇二年なれど、一三〇〇年即ちダンテがフィレンツェのプリオレたりし頃、彼は法王の處置畫策に反抗し既にその怨みを買ひゐたるなり
五二―五四
罪の汚名は敗者に被《お》はされむ、是世俗の常なればなり、されど神罰眞に罪ある者に下るに及びて敗者も汚名を雪ぐを得べし
【刑罰】白黨追放(一三〇二年)の後フィレンツェに起れる種々の災害、法王及びその一味の者の不運等を總括していへり
【眞の爲の】正しき刑罰は眞にもとづき、眞に罪ある者に下る、故に「眞」はその宜《よろしき》に從って刑罰を課する者といふをう。罪がかへつて時めく者にあることは刑罰これに臨むによりて明らかなるべし
五五―五七
【愛する物】郷土、家族、親戚、知己等
五八―六〇
郷土を逐はれて他家に寄寓し他人の憐によりてその食卓に就くのつらさを汝經驗して知るにいたらむ
六一―六三
最も大いなる苦痛を汝に感ぜしむる者は汝と倶に追放の憂目を見る白黨の人々なるべし
六四―六六
【汝に背かむ】追放されし白黨はフィレンツェの黒黨に對して屡※[#二の字点、1−2−22]再擧を謀れり、而して一三〇四年ラストラの役ありし以前ダンテは白黨の首領等と交りを絶てりと見ゆ、おもふに彼等ダンテの好意的畫策を惡意に解して彼を怨めるによるならむ(カーシーニ註參照)、されどその時その事情いづれも定かに知り難し
【顏】原語、「顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]」。一三〇四年ラストラ(フィレンツェの北二マイルの村)の戰ひ敗れて血に塗れしをいへるならむ、或ひは曰く、事成らずして恥づる意と
七〇―七二
【第一の】一人一黨となりて後最初の
【ロムバルディア人】バルトロムメオ・デルラ・スカーラ(一三〇四年三月死)。アルベルト・デルラ・スカーラ(淨、一八・一二一―三註參照)の長子にて父の死後ヴェロナ(ロムバルディアの)に君たり、その家紋は金の梯子の上に黒鷲のとまれるもの
七三―七五
【いと遲きもの】爲すこと即ち與ふること。他の人々は乞はれて後に與ふれども、彼は然らず、汝の乞はざるさきに自ら進んで衣食を給せむ
七六―七八
【強き星】火星。この星の影響の下に生るゝ者武勇を好む
【者】カン・グランデ・デルラ・スカーラ。アルベルトの第三子。一二九一年三月に生れ、一三一一年兄アルポイノとともにヴェロナを治めかつ相ともに皇帝ハインリヒ七世の代理者となり、アルポイノの死(翌十二年)後ひとりヴェロナに君たり、一三二九年七月トレヴィーゾに死す。ダンテ及びその當時の人々、皇帝とギベルリニとの權勢の復興者としていたくこれに望みを囑せり
八二―八四
【グアスコニア人】法王クレメンス五世(地、一九・八二―四註參照)。ハインリヒ七世を、友としてイタリアに迎へ、その來るに及びて敵となれり。「欺かざるさき」とは一三一二年(即ちハインリヒがローマに帝冠を戴ける年)以前といふ如し
【銀をも疲れをも】富を求めず戰ひの疲れを厭はざること
九一―九三
【信ずまじき】己が目前に起るを見ん人もなほ信ずまじき異常のことゞも
九四―九六
【聞きたる事】地獄淨火にて聞きたる豫言(四―六行註參照)
【年】原、「囘轉」(太陽の)
九七―九九
【隣人】同郷人。その勝誇るを妬むなり
【汝の生命は】かれらは罪の報を受けて亡び、汝は永く美名に生くべし
一〇〇―一〇二
【織物】物語。これが經《たていと》を張るは問ふなり、緯《よこいと》を入るゝは答ふるなり
一〇六―一〇八
【思慮なき人に】備へず慮らずして命運の打撃を受けなばその、痛いよ/\甚だしからむ
一〇九―一一一
【最愛の地】フィレンツェ
【その他の地】流寓の地(複數)
【わが歌の爲に】我もし忌憚なく歌はゞ、その詩、人の怨みを招きて寄寓すべき處さへなきにいたるの恐れあり
一一二―一一四
【淑女の目】天、一・六四以下參照
一一五―一一七
【光より光】星より星
【辛かるべし】agrume は昔葱、大蒜《にんにく》等の如く舌を刺すに似たる味あるものをいへり
一一八―一二〇
されどまたもし實を語らずば、名を後の世に殘すをえざらむ
一二一―一二三
【寶】カッチアグイーダ
一二四―一二六
【己が罪または】罪己にあるかさらずば己が親戚知友等にありて心その爲にやましき者は
一二七―一二九
【瘡ある處は】汝の言を聞きて苦痛を感ずるだけの弱みある人には苦痛を感ぜしむるがよし
一三三―一三五
山高ければこれを撃つ風いと強し、かくの如く、汝の歌の中なる人はいづれもその名世に聞えまたは現に時めき榮ゆる者のみなればそを叱咤する汝の聲は強かるべし、而してかゝる者をもたゞ眞理に從つて恐れず憚らず攻める事は即ち攻める人の價値をば遺憾なく表はす所以なり
一三九―一四二
【その根知られず】例の出處なる(即ち例として擧げらるゝ)人物が世に知られず
【明らかならざれは】適切なる例を缺く爲、具體的に證明し難きなり
【安まらず】滿足せず
第十八曲
カッチアグイーダの告ぐる所によりてダンテは火星の十字架の中なる多くの靈の名を知りて後、ベアトリーチェと共に第六天(木星)にいたり、正義を地上に行へる者の眞の相連りて種々なる形をその光に現はすを見る
一―三
【鏡】カッチアグイーダ。聖徒は神の光を受けてこれを反映《てりかへ》らしむる鏡なれはかく
【思ひ】verbo(語《ことば》)、こゝにては無聲の語即ち思ひの義
カッチアグイーダ語り終りて默しつゝ天上の祝福を思ふ樂しき思ひに歸ればダンテはまた己が思ひに耽りつゝその美名に關する豫言の喜びをもて追放その他行末の非運に關する豫言の悲しみを和げゐたるなり
四―六
【一切の虐を】正義に從つて賞罰を行ひ給ふ神(ロマ、一二―一九參照)
七―九
【慰藉】ベアトリーチェ
一〇―一二
【導く者なくば】神恩特に下るにあらざれば
一三―一五
【わが情は】天上の愛ベアトリーチェの目に輝きてダンテの心の中なる一切の雜念を逐ひ拂へるなり
一六―一八
【永遠の喜び】聖徒の永遠の喜びなる神の光
【第二の姿】反映せる光。ダンテは神の光を直接に見しに爲らず、ベアトリーチェの目によりて見しなれば
一九―二一
【身を轉して】カッチアグイーダを見てその言を聽け
二八―三〇
【木】天堂。世にある木は根によりて生き、期《とき》いたりて初めて實を結び年毎にその葉を失へどもこの木は然らず、頂によりて生き(至高の天にいます神よりその生を安くるが故に)、たえず實を結び(新なる聖徒をえ)、永久に葉を失はじ(その美その福祉永遠に亘る)
【第五座】第五天
三一―三三
【ムーザ】詩人。いかなる大詩人にも良き材料を供給するほど
三四―三六
【今】異本、今[#「今」に白丸傍点]の字なし
【その疾き火】雲の火即ち電光
三七―三九
【ヨスエ】ヨシュア。モーゼに次いでイスラエル民族を導ける舊約の偉人、その事蹟ヨシェア記に委し
【言と爲と】名のいはるゝと動くと
四〇―四二
【マッカベオ】ユダス・マッカベウス。ヘブライ人の自由の爲にシリアの暴君と爭へるもの(『マカベ』前第三章以下)
【獨樂】paleo 棒の先に糸をつけ、それにて打ちてまはす獨樂。糸の爲に獨樂の※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]る如く、喜びの爲にかの光めぐるなり
四三―四五
【カルロ・マーニョとオルランド】キリスト教の信仰の爲、異教徒と戰へる勇者として(地、三一・一六―八註參照)
【目】鷹匠の
四六―四八
【グイリエルモ、レノアルド】フランス中古の物語に名高きオレンジ伯ウイリアム及びこれに從ひてサラセン人と戰へりといふリノアルド(ルヌアール)
【ゴッティフレーディ】ゴットフレード・ド・ブイヨン(一一〇〇年死)。第一十字軍の指揮者として名高し
【ルベルト・グイスカールド】(一〇八五年死)、プーリア及びカーラブリアの君となりてサラセン人を逐へる者(地、二八・一三―八註參照)
四九―五一
【我に示せり】カッチアグイーダはこの時他の諸靈に加はりて歌ひいでたればなり
五二―五四
【言または】ベアトリーチェがその言葉または身振によりて、わが爲すべき事を我に示すならむと思ひて
五五―五七
【最終の時】七行以下にいへる
六一―六三
ベアトリーチェの美を増すを見て我等がさらに高き天に達せることを知り得たり
昇れるを昇ることによりて知るならずその結果として淑女の美の増すによりて知る、なほ徳の進むを進むことによりて知るならずその結果として喜びの増すによりて知るごとし
【天とともに】諸天は皆たえず※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉す、故にダンテはその一にとゞまる間、これとともに※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《めぐ》るなり
【弧】天は高きに從つて大なり、故に木星天は火星天よりもそのゑがく弧大なり
六四―六六
羞恥の爲赤くなりたる女の顏が、その念消ゆるとともに元の白色に返るごとく
六七―六九
【わが見るもの】火星の赤色より木星の白色に移りたれば
【温和なる】火星の熱さと土星の寒さとを、この二星の間にありて和らぐるが故にかく言へり(『コンヴィヴィオ』二・一四・一九四以下參照)
七〇―七二
【ジョーヴェの燈火】木星
【愛の煌】愛の光を放つ諸聖徒
【われらの言語】我等の用ゐる文字
七三―七五
【己が食物を】岸より立てる群鳥が、食物あるを見て、互に祝しあふごとく歌ひつゝ、相連りて
七六―七八
【忽ちD】九一―三行參照
八二―八四
【ペガーゼア】ムーサ。但し一をもて凡ての詩神を代表せしめしものなるか或ひは特にその一(多くの註釋者はカルリオペを指せりとす)を指していへるか明ならず
ペガソスといへる馬ムーサイに屬し、かつヒッポクレネの泉(ムーサの山エリコナにあり)はこの馬の蹄の跡なりとの傳説に因みてムーサをペガーゼーと呼ぶにいたれり
【その生命を長うす】これに不朽の名をえしむ
【才が】才は汝の助けにより諸國諸邑の事を歌ひてかれらの名を永く後の世に傳ふ
八五―八七
【彼等の象】諸※[#二の字点、1−2−22]の聖徒の相連りて造れる象《かたち》
【短き】句數に限りあれば
八八―九〇
【一部一
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