二
【處】アルビジョアの勢力最盛なりしトロサ(フランスの南部にあり)地方
一〇三―一〇五
【さま/″\の流れ】種々の分派(プレディカトリ、ヴェルディーニ・モナスチーケ、テルチアーリ)
一〇六―一〇八
【内亂】同宗間の爭ひ、即ち異端
【一の輪】聖ドミニクス
一〇九―一一一
【殘の輪】聖フランチェスコ
【トムマ】聖トマス
一一二―一一四
されどフランチェスコ派の僧侶等その祖師の歩める道を踏み行かず、さきに善ありし所に今惡あり
【良酒】gromma 樽に附着する洒のかたまり。良酒を貯ふればこのかたまり生じ、惡酒を容れおけば黴生ず
一一五―一一七
【家族】フランチェスコ派の僧侶等
【指を踵の】フランチェスコが踵を踏めるところに彼等指を置く、即ち祖師の歩める道を逆行す
一一八―一二〇
【莠は穀倉を】多くの悖れる僧侶は寺院より逐はるべけれはなり。一三〇二年法王ボニファキウス八世が精神派(一二四―六行註參照)を異端視し、彼等をしてフランチェスコ派のみならずまた寺院より分離するにいたらしめしことを指せり
一二一―一二三
フランチェスコ派に屬する者をひとり/″\調べなば、今も昔の如く此派の戒律を正しく守る者あるを見む
一二四―一二六
かく優良なる人々はフランチェスコ派の中の過激派にも緩和派にも屬せじ、この兩派のその宗律に處するや、一(後者)はこれを和げ、他(前者)はこれを嚴くす
【カザール】ピエモンテの町。こゝよりウベルティーノ・ダ・カサーレ(一三三八年死)出づ、過激派(所謂精神派 Spirituali)の首領にて宗規を極度に嚴守せり
【アクアスパルタ】ウムブリアの町。こゝよりマッテオ・ダクアスパルタ(一三〇二年死)出づ、一二八七年フランチェスコ派の長となりて規約の緩和を是認せり
【文書】フランチェスコ派の宗規
一二七―一二九
【ボナヴェントゥラ・ダ・バーニオレジオ】名をジョヴァンニ・フィダンツァといふ、ボナヴェントゥラ(幸運)はその異名なり、一二二一年ボルセーナ湖附近のバーニオレジオ(今バーニオレア)に生れ、一二五六年フランチェスコ派の長となり、一二七四年リオンに死す、神學上の著作多し、また聖フランチェスコの傳を著はす、前曲に見ゆるフランチェスコの物語多くこの傳に據れり
【世の】原文、「左の」。註釋者の引用せる『神學要論』(トマスの)に曰く、知識及びその他の靈的財寶は右に屬し、一時の營養は左に屬すと
一三〇―一三二
【イルルミナートとアウグスティン】ともにフランチェスコの最初の弟子なれば最初の素足の貧者といへり
【紐】この派の僧の帶とせる細紐(地、二七・九一―三註參照)
一三三―一三五
【ウーゴ・ダ・サン・ヴィットレ】ユーグ・ド・サン・ヴィクトル。名高き神秘派の神學者、パリなる「聖ヴィクトル」僧院に入り、一一四一年に死す、著作多し、十曲に見ゆるリシャール(一三一行)及びペトルス・ロムバルドゥス(一〇七行)は彼を師とせりと傳へらる
【ピエートロ・マンジァドレ】ペトルス・コメステル。(マンジァドレ――多食者――は異名なり、書を嗜むによりてこの名ありといふ)フランスの神學者、十二世紀の始めイロワイエに生れ、一一六四年パリ大學に長たり、後、「聖ヴィクトル」僧院に退き一一七九年に死す、著書數卷あり、就中寺院史(Historiascholastica)最もあらはる
【ピエートロ・イスパーノ】ペドロ・ユリアーニといふ、リスボン(ポルトガルの)の人なり、一二七六年ハドリアヌス五世の後を承けて法王となりヨハンネス二十一世と稱す、翌七年ヴィテルポなる法王宮の一部崩潰しペドロ爲に壓死す、その著作に論理綱要十二卷あり
一三六―一三八
【ナタン】王ダヴィデの罪を責めしヘブライの豫言者(サムエル後、一二―一以下)
【クリソストモ】ヨハンネス・クリソストムスといふ、クリソストモ(黄金の口)はその能辯を表はせる異名なり、三四七年の頃アンテオケアに生れ、三九八年コンスタンティノポリスの大僧正となり、後廢せられて流竄の中に死す(四〇七年)
註釋者曰く。クリソストムスが皇帝アルカディウスの罪を責めしことナタンがダヴィデを責めしに似たればこゝにこの兩者を配せるなりと
【アンセルモ】聖アンセルムス。一〇三三年の頃ピエモンテのアオスタに生れ、一〇九三年イギリス王の知遇をえてカンターベリーの大僧正となり、一一〇九年に死す、著作多し
【ドナート】アエリウス・ドナートゥス。ローマの文法學者、四世紀の人にてテレンチオ及びウェルギリウスの註疏の外ローマの文法書を編纂す、この書長く教科書として世に用ゐられきといふ。第一の學術[#「第一の學術」に白丸傍点]とは三文四數(地、四・一〇六――八註參照)の中の第一にあるもの即ち文法の義
一三九―一四一
【ラバーノ】ラバヌス・マウルス・マグネンティウス。ドイツのマインツの人、八四七年この地の大僧正となり、八五六年に死す、神學特に聖書に關する著作多し
【ジョヴァッキーノ】カラブリア州チェリコの人、フローラの僧院(コセンツァの附近にあり)の院主たり、一二〇二年に死す、豫言の靈云々は當時豫言者として知られたればかく言へるなり
一四二―一四四
【フラア・トムマーゾ】トマス・アクイナスが聖列に入れるはダンテの死後(一三二三年)の事なれば、「サン」といはずして「フラア」といへり
【武士を競ひ讚め】ドミニクス派のトマスが聖フランチェスコを激稱せるを聞き、フランチェスコ派の我またこれに劣らず聖ドミニクスを稀讚せんとの念を起し
一四五
【侶を】わが十一の侶を動かしてかつ舞ひかつ歌はしめたり
第十三曲
トマス・アクイナス再び語りいで、ソロモン王の智とアダム及びキリストの智との關係を論ず
一―三
以下一八行まで、讀者もしかの二十四人の聖徒の靈が二個の圓をつくり光を放ちて舞ひめぐるさまを知らんと欲せば、天の諸處に現はるゝ光強き十五の星と大熊星の七星及び小熊星の二星と、合せて二十四個の星が二の圓形の星座を造り大小二重の圓をゑがきつゝ相共にめぐりゆく状《さま》を想像せよとの意
四―六
【勝つ】濃厚なる大氣を貫いてその光を放つをいふ
七―九
【われらの天】北半球の天。その懷をもて足れりとするは常に北半球の天にありて沒せざるなり
【轅をめぐらし】囘轉し
一〇―一二
小熊星における諸星の按排はその状曲れる角の如し、故に角笛[#「角笛」に白丸傍点]といふ。車軸[#「車軸」に白丸傍点]は諸天運行の軸にてその端[#「端」に白丸傍点]は即ち天極なり
【第一の輪】諸天運行の本なるプリーモ・モービレの天
【端より起る】角の尖端極めて北極に近きが故にかく
【口】他の一端、即ち角笛にたとふれば聲の出づるところ。小熊星七個の中の二個の星を指す
一三―一五
以上の二十四星相集りて二個の圓形の星宿となり
【ミノスの女】アリアドネ。テセウス(地、一二・一六――八註參照)に棄てられし後バッカスの憐みをうく、その死するやバッカスこれが冠を天に送り化して星宿(徴號)となす(オウィディウスの『メタモルフォセス』八・一七四以下參照)。
一六―一八
【一は先に】一導き一從ふ、即ち歩調を合せて同じ方向に
一九―二一
【眞の星宿】二十四の靈
二二―二四
前聯の意を承けて、明かに認むる能はざる理をあぐ
【最疾きもの】プリーモ・モービレ
【キアーナ】アレッツオ地方の河。沼澤多き地を過ぐるが故にダンテの時代にてはその水の流るゝこと甚だ遲かりきといふ(地、二九・四六―五一註參照)
但し、舞の早さをいへるに非ず、諸靈の光や美が人の想像以上なるをあらはせるのみ
二五―二七
【バッコに】異教徒がバッカスやアポロンの如き昔の神々を讚美せるに對して
【ペアーナ】アポロン神を稱《たゝ》へし歌
【一となれる】キリストにおいて
二八―三〇
【思ひを移す】歌や舞より心を轉じてダンテの願ひをかなへんとすること
三一―三三
【光】聖フランチェスコの物語をなせるトマス
【聖徒】numi 元來神々の義、神の如き二十四の靈
三四―三六
わが言葉によりて汝の疑ひの一(迷はずば云々についての)は解け、汝よくその理《ことわり》をさとりたれば、我今こゝに他の疑ひ(これと並ぶべき者云々についての)を解くべし
三七―三九
アダムの胸にも
【女】エヴァ。禁斷の果《み》をくらへるため禍ひを全世界に遺せり(淨、二九・二二以下參照)
【肋骨を】神がアダムより取りたる一本の肋骨をもてエヴァを造り給へるをいふ(創世、二・二一―二)
四〇―四二
キリストの胸にも
【槍に刺され】ヨハネ、一九・三四
【あとさきに】あとは槍に刺されし後、換言すればその死によりて、さき[#「さき」に白丸傍点]は刺されざりし先、換言すればその苦しみ多き生涯によりて
四三―四五
【威能】神の
【光】知識の
四六―四八
【さきに】天、一〇・一四二―四
【福】福なるソロモンの靈
【異しむ】アダム、キリストを措き、ひとりソロモンの智をもて古今に絶すとなすをあやしむなり
四九―五一
【わが言】即ちさきに言へること
五二―五四
一切の被造物は皆三一の神より出づる觀念(神の語《ことば》)の顯現なり
五五―五七
【活光】子
【源の光】父
【愛】聖靈
子なるキリストは父なる神及び聖靈とともに萬物を造り給へり
五八―六〇
【自ら永遠に】子の作用《はたらき》わかれて諸の物に及べど、子そのものは永遠に一なり(天、二・一三六――八參照)
【九の物】原文、「九の實在」。九個の天を司る九級の天使
三一の神のはたらき神の語《ことば》より諸天を司る者に及び、さらに諸天を通じて諸種の物質に及び、次第に下るに從つて次第に劣れる物を生ず
六一―六三
【最も劣れる物】ultime potenze(最後の勢能)、potenza は現に在るに非ず、たゞ在りうべき物
【業より業】子の作用《はたらき》上なる物にはじまりて次第に下なる物に移ること
【苟且の物】contingenze 在ることをえ在らざることをうる物即ち滅び失すべき被造物
六四―六六
【種により】動植物等。種によらざるものは礦物の類
六七―六九
かゝる産物の原料と、この原料を用ゐて諸物を形成する諸天の力とはいづれも一定不變ならざるが故に、物として神の光(觀念の光)を受けざるはなけれど、その受けて輝く光に多少あり(天、一・一―三並びに註參照)
七三―七五
材料もし凡ての點において備はり、かつこれに及ぼす天の影響極めて強くば、神の觀念の光皆顯はれむ(その物完全ならむ)
七六―七八
【自然】飼造の機關たる自然(諸天)
【乏しき】神の光を完全に傳ふる能はざるなり
七九―八一
されど三一の神直接にその作用《はたらき》を及ぼし給ふ時は被造物皆完全なるべし
【熱愛】聖靈。とゝのふるは印をうくるに適はしからしむるなり
【第一の力】父
【燦かなる視力】(智)即ち子
註釋者曰く。五二―四行にては父を主とし、五五行以下にては子を主とし、こゝにては聖靈を主として創造の働を言現はせり、是三者の働に過不足なきを示せるなりと
八二―八四
かく直接なる神の働により、土(即ちアダムの肉體となれる)は生物(即ち人)を極めて完全ならしむるに適はしき材となり、また同じ働により處女マリアはキリストを身に宿したり
八五―八七
【如くに】如く完全に
八八―九〇
【かの者】ソロモン
九一―九三
【求めよといはれし】神に(列王上、三・五)。神夢にソロモンに現はれ給ひ、その求むる所を問へるに、ソロモンこれに明君たるの資格をえさせ給へと乞ふ、神は彼が自己一身の爲に長壽富貴を求むることをせず、たゞひたすら父ダヴィデの位を辱めざらんと希ふにより、その願ひを嘉し給へり(同三・五――一二)
九四―九六
【わがいへる】我明らかにソロモンの名をいはざりしかど、猶わが言葉と聖書の記事とを照らし合せて
九七―九九
神學や論理に通ぜん爲にあらず
【動者】諸天の運行を司る天使
【必然と偶然】二前提の中、一必然にして一偶然ならばその結論必然なるを得るや否や
一〇〇―一〇二
哲學や數學に達せん爲にもあらず
【第一の動】他の動より生ぜざる動
一〇三―
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