弟子達(家族[#「家族」に白丸傍点])とを伴ひローマに赴けること
【卑しき紐】フランチェスコ派の僧侶が帶となせる節多き細紐(地、二七・九一―三註參照)
八八―九〇
【ピエートロ・ベルナルドネ】フランチェスコの父にてアッシージの富める商人。フランチェスコはその生れの貴からざるをも、その姿のみすぼらしきをも恥とせず
九一―九三
【嚴しき】フランチェスコ派の規定の峻嚴にして容易に守り難き意を含む
【最初の印】フランチェスコがインノケンティウス三世より假准許を受けしは一二一〇年頃の事なりといふ
九四―九六
【天の榮光の中に】地上の僧達に歌はれん(フランチェスコ派の人々その師の生涯を合唱にて歌ふ習ひありたれば)よりは天にて諸天使諸聖徒にうたはれんかた
但しトマス自ら天にてかの聖者の一生を歌へるものなるがゆゑに異説多し
九七―九九
【永遠の靈】聖靈。神の恩寵ホノリウスを通じて准許をフランチェスコに與へ、その聖なる志を遂げしむ
【オノリオ】法王ホノリウス三世(一二一六年より一二二七年まで法王たり)。フランチェスコが彼より正式の准許を受けしは一二二三年の事なり
【法主】archimandrita 群羊の首《かしら》の義より轉じて僧官の意に用ゐらる、こゝにてはミノリ派(地、二三・一――三)の首僧即ちフランチェスコ
一〇〇―一〇二
年代順よりすれば九三行に續く。一二一九年フランチェスコは十二の高僧と共に十字軍に從つてエジプトに赴き、この地のサルタンを改宗せしめんためその目前にてキリストの教へを宣べたりといふ
【從者等】使徒及びその他の聖者達
一〇三―一〇五
【草の實】宣教の收穫
一〇六―一〇八
【粗き巖】テーヴェルの上流とアルノの上流との間即ちカセンティーノにあるアヴェルノ山。傳へ曰ふ、フランチェスコこゝにて四十日の斷食をなせりと
【最後の印】聖傷《みきず》の痕《あと》(Stimmate)なり、法王インノケンティウス及びホノリウスよりうけし准許の印に對して最後といふ、傳に曰く、一二二四年フランチェスコ、アヴェルノの岩山にてキリストに祈願をさゝげその受難の苦しみをわが身に知らせ給へと念ず、キリスト、セラフィーノの姿にてこれに現はれ、聖者の手足及び脅《あばら》に己が傷痕を印し給ふと
一〇九―一一一
【かゝる幸に】聖傷の痕を身に受くるほどの恩惠を下し給ひし神
一一二―一一四
【女】貧
一一五―一一七
【他の】貧の懷以外の。傳に曰く、死の近づくを知るやフランチェスコはその愛する寺院なるサンタ・マリア・デーリ・アンジェリに移るを願ひ、かしこにて貧に對する最後の愛を表はさんため衣を脱し地上に臥してその生を終ふと
一一八―一二〇
聖フランチェスコの人となりより推して、これとともに寺院指導の任に當れる聖ドメニコの人となりを知るをえむ
【ピエートロの船】寺院。異端邪説迫害殉教等の浪荒き大海を渡りて眞《まこと》の信仰の湊にむかふ
一二一―一二三
【教祖】ドミニクス派の基を起せる聖ドミニクス
【良貨を】ピエートロの船といへるに因みて。高徳の人となりて寶を天上に貯ふること
一二四―一二六
【群】ドミニクス派の僧侶等
【新しき食物】名譽地位ある僧職
【山路】salti 山や林の間の牧地
一二七―一二九
【乳】教への糧
一三〇―一三二
【牧者に近く】教祖の教へに從つてその派の戒律を守るをいふ
一三三―一三五
【微】朧にて解し難きこと
一三六―一三九
【願ひの一部は】疑ひの一は解くべし
【削られし木】わが削り取れる木片(迷はずは云々といへる言葉)の元木(出處即ちドミニクス派の僧の墮落)。但し異説多し
【革紐を纏ふ者】ドミニクス派の僧(この派の僧は革紐を帶とす)即ちわれトマス
異本、「非難」。これに從へば「迷はずばよく肥ゆるところといへる言葉の中の非難をさとるべければなり」
第十二曲
トマス語り終れる時、ダンテとその導者とを圍み繞れる他の一群の靈あり、其一ボナヴェントゥラ・ダ・バーニオレジオ聖ドミニクスの物語をなす
一―三
【焔】トマス・アクイナス
【碾石】ベアトリーチェとダンテとを圍める十二の靈。天、一〇・九二にこれを花圈《はなわ》といへる如く圓く圍み、かつは水平に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]轉するがゆゑに碾石《ひきうす》といへり
七―九
【笛】靈の樂器即ち諸聖徒の聲
【元の輝が】直接に照らす光線が反射する光線よりもつよく輝く如く
【われらのムーゼ】世の詩人。
【われらのシレーネ】世の謳歌者《うたひて》(淨、一九・一九―二一註參照)
一〇――一二
【侍女】イリス。タウマスの女(淨、二一・五〇)、虹の女神にて神話の神々特にヘラの使者たり
【二の弓】二重の虹
一三―一五
【外の弓】二重の虹の中、外の大なる虹は内の小さき虹の反映なりと信ぜられたればかく
【流離の女】ニンファ・エーコ(反響)。空氣と地の間の女、の嫉みによりて言語の自由を失ひ、たゞ人の物言ふを聞きてその最後の言葉を繰返すに過ぎず、このニンファ、ナルキッソス(地、三〇・一二八)を見これを戀ふれども及ばず、形體全く憔悴してたゞ骨と聲のみ殘り、後骨は岩に變じ、聲のみ今に生くといふ(オウィディウスの『メタモルフォセス』三・三三九以下參照)。流離[#「流離」に白丸傍点]はニンフェの常なり、(淨、二九・四―六參照)
外部の虹の、内部の虹より生るゝを、反響の、聲より生るゝにたとへしなり
一六―一八
【契約】ノア(ノエ)の洪水の後、神がノアとその全家及びこれと共にありし鳥獸と契約を立て、世に再びかくの如き洪水あらしめじと言ひ給ひしこと(創世、九・八以下)、虹はその契約の徴《しるし》なり(同九・一三―七)
一九―二一
【薔薇】二重の圓を作れる諸聖徒
【相適ひ】歌をも舞をも合せしをいふ
二二―二四
【祝】諸靈が倶に歌ひ互ひに照らしてその福を表はすこと
二八―三〇
【星を指す針】北極星を指す磁針 磁針は一二一八年既にイタリアの航海者に知られたり、一三〇二年に至りフラーヴィオ・ジョイアこれを完成す(パッセリーニ)
三一―三三
【我】ボナヴェントゥラ(一二七――九行註參照)
【彼の爲に】聖ドミニクスの偉大なるをあらはさんため(天、一一・四〇―四二、一一八―二〇參照)
三四―三六
【一のをる處には】ひとりの事のいはるゝ時には他のひとりの事もいはれ
三七―三九
【軍隊】信徒等。これをアダムの罪より救ひ、これが陣立を新ならしめんとて救世主血を流し給へり
【旗】十字架
【遲く、怖ぢつゝ、疎に】遲きは熱心の足らざるなり、怖るは異端の爲に信仰の動搖するなり、疎なるは數少きなり
四〇―四二
神はかく覺束なき信徒の名をはかり給ひ
四三―四五
【さきに】天、一一・二八以下
【己が新婦】寺院。「神の新婦」(天、一〇・一四〇)
四六―四八【西風】即ち春風
【ところ】イスパニア
四九―五一
【浪打際より】グァスコーニア灣(ビスケー灣)より
【時として】夏至の頃。太陽は南に向ふに從つてかの灣に遠ざかるが故にかくいへり、長く[#「長く」に白丸傍点]は日の長きをいふ
【萬人の】南半球には住む人なければ
五二―五四
【カラロガ】カスティールの町(今のカラホルラ)。聖ドミニクス(ドメニコ)の生地なれば幸多きといへり
【從ひ從ふる獅子】城に從ひ城を從ふる獅子。カスティール王家の紋所は二頭の獅子と二個の城より成る、即ちその半には獅子城の下にあり(從ふ)、半には獅子城の上にあり(從ふる)
五五―五七
【クリストの】キリスト教の熱愛者
【敵につれなき】一〇〇―一〇二行參照
【剛者】イスパニアの高僧聖ドミニクス(一一七〇―一二二一年)
五八―六〇
【豫言者】夢によりてわが兒の常人ならざるべきを判ぜるなり。傳へ曰ふ、ドミニクス未だ胎内にありし時、その母夢に一匹の小犬を生む、これに黒白の斑あり、口には燃ゆる炬火《たいまつ》をくはへゐたりと(黒白の斑はドミニクス派の僧服を表はし、炬火は聖者の熱情をあらはす)
六一―六三
【聖盤】洗禮の水を容るゝ器《うつは》。洗禮によりて信仰と縁を結べるなり
【相互の救ひ】ドミニクスは信仰の有力なる保護者となり、信仰はドミニクスを永遠の福祉に導く
六四―六六
【女】教母。小兒に代りて授洗僧に答へ、儀式を脱《おち》なく濟せる女
【嗣子等】その派の僧達
【眠れる間に】教母は小兒の額の中央に光明燦かなる一の星あるを夢に見たり、これ彼が世の光となり諸民を導いて永遠の救ひに到らしむべき瑞相なりき
六七―六九
名を實に配《そ》はしめん爲、天の靈感父母にくだり、彼をドメニコ(=Dominicus 主のものなる)と名づけしむ
七〇―七二
【その園】寺院
七三―七五
【第一の訓】「汝完からんと思はゞ、往て汝の所有を賣りて貧者に施せ」(マタイ、一九・二一)第一のは主なるの義。トマスも清貧をキリストの訓《さとし》の第一に擧げたり
聖ドミニクスは未だ若かりし時、書籍やその他の所有物《もちもの》を賣りてその得たる價を貧民に施す等慈善の行爲多かりき
七〇行より七五行に亘る二聯にキリストといふ語三たび出づ、これ押韻の際ダンテは他の韻語を決してこれに配せざればなり、天、一四・一〇三以下、同一九の一〇三以下及び同三二・八二以下にもこの例あり
七六―七八
【目を醒し】ドミニクスはその幼兒屡※[#二の字点、1−2−22]臥床をぬけいで、大地に臥しつゝ神に祈りをさゝげたりといふ
【このために】安逸を棄てゝ神に事《つか》へん爲に
七九―八一
【フェリーチェ】Felice の(幸運なる)、かゝる子を生みたる彼の父は誠にその名の如く福なり
【ジョヴァンナ】Giovanna(主の惠の義といふ)
【若しこれに】ヘブライの原語の意義明らかならざればかく曰へり
ダンテはこれらの言葉によりて、天上の聖徒の知識のなほ不完全なるを示せるか(天、四・四九以下參照)、或ひはその自ら言はんと欲する所これらの言葉に現はれしなるか、明らかに知り難し
八二―八四
今の世の人法學または醫學に走りて世の榮達を求むれども、彼は然らず、たゞ靈の糧を求め
【オスティア人】オスティアのカルディナレ及び僧正なりしエンリーコ・ディ・スーザ(一二七一年死)。寺院法に精しくその註疏及びその他の著作あり
【タッデオ】タッデオ・ダルデロット(一二九五年――或曰、一三〇三年――死)。フィレンツェの人にて名醫の聞え。高かりし者、醫學に關する著作多し
【世の爲】世に屬する利慾のため
【まことのマンナ】キリストのまことの教へ。マンナについては淨、一一・一三―五註參照
八五―八七
【葡萄の園】寺院。園をめぐるは寺院を保護するなり
【白まむ】白むは縁の色あせて枯るゝなり、牧者其人をえざれば寺院の敗頽するにたとふ
八八―九〇
【法座】法王を指す。ドミニクスが法王インノケンティウス三世の許をえんとてローマに赴けるは一二〇五年の事なり
【これに坐する】法王の位その物の罪に非ずして法王其人(特に神曲示現當時の法王ボニファキウス八世)の罪なり
九一―九三
【六をえて】不正所得を求むること(即ちその三分一または二分一を善用する條件にて)
【最初に】空《あ》くべき僧職を求めて己まづこれに就かんとすること
【什一】什一を私用に供すること。人々所得の十分一を獻じ、これを貧者の用に供する例あり、モーゼの律法にもとづく(申命、一四・二八以下參照)、これを什一といふ
以上は皆當時の僧侶の貪り求めし物なれば特に記して彼等の非を擧げしなり
九四―九六
【二十四本の草木】二個の輪を作りてダンテとベアトリーチェとを圍める二十四の靈
【種】信仰。聖徒は信仰の善果《よきみ》なり
【迷へる世】眞の信仰を離れて踏迷へる異端の徒、特にフランスのアルビジョンより起れるアルビジョアの異端
九七―九九
【使徒の任務】法王(インノケンティウス三世)の彼に與へし權
ドミニクスは異端者と戰はんため、プレディカトリ派を起しこれが准許を法王インノケンティウス三世に乞ひ辛うじてその口頭の許を得たり(正式の准許を得たるは一二一六年にて、時の法王ホノリウス三世よりなりき)
一〇〇―一〇
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