え立ちし處にては失せし星なくかつその永く保たぬごとくに 一六―一八
かの十字架の右の桁《けた》より、かしこに輝く星座の中の星一つ馳せ下りて脚《あし》にいたれり 一九―二一
またこの珠《たま》は下るにあたりてその紐を離れず、光の線《すぢ》を傳ひて走り、さながら雪花石《アラバストロ》の後《うしろ》の火の如く見えき 二二―二四
アンキーゼの魂が淨土《エリジオ》にてわが子を見いとやさしく迎へしさまも(われらの最《いと》大いなるムーザに信をおくべくば)かくやありけむ 二五―二七
あゝわが血族《うから》よ、あゝ上より注がれし神の恩惠《めぐみ》よ、汝の外誰の爲にか天《あめ》の戸の二|度《たび》開かれしことやある。 二八―三〇
かの光かく、是に於てか我これに心をとめ、後《のち》目をめぐらしてわが淑女を見れば、わが驚きは二重《ふたへ》となりぬ 三一―三三
そは我をしてわが目にてわが恩惠《めぐみ》わが天堂の底を認むと思はしむるほどの微笑《ほゝゑみ》その目のうちに燃えゐたればなり 三四―三六
かくてかの靈、聲姿ともにゆかしく、その初の音《ことば》に添へて物言へり、されど奧深くしてさとるをえざりき 三七―三九
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