一一二―
或ひは直《なほ》く或ひは曲《ゆが》み、或ひは疾く或ひは遲く、たえずその容《かたち》を變へて動くさままたかくの如し ―一一七
また譬《たと》へば多くの絃《いと》にて調子《しらべ》を合せし琵琶《びわ》や琴が、節《ふし》を知らざる者にさへ、鼓音《ひくね》妙《たへ》にきこゆるごとく 一一八―一二〇
かしこに顯《あらは》れし諸※[#二の字点、1−2−22]の光より一のうるはしき音《おと》十字架の上にあつまり、歌を解《げ》しえざりし我もこれに心を奪はれき 一二一―一二三
されど我よくそが尊き讚美なるを知りたり、そは起《た》ちて勝てといふ詞、解せざれどなは聞く人に聞ゆる如く、我に聞えたればなり 一二四―一二六
わが愛これに燃やされしこといかばかりぞや、げに是時にいたるまで、かくうるはしき絆《きづな》をもて我を繋《つな》げるもの一だになし 一二七―一二九
恐らくはわがこの言《ことば》、かの美しき目(これを視ればわが願ひ安んず)の與ふる樂をかろんじ、餘りに輕率《かるはずみ》なりと見えむ 一三〇―一三二
されど人もし一切の美を捺《お》す諸※[#二の字点、1−2−22]の生くる印がその高きに從つて
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